Kアリーナ横浜は“唯一無二”の会場に? 開業から1年、初年度の成功と課題の両面から総括

 ここ数年で関東圏を中心に新しいアリーナ規模の会場が続々と開業している。特に神奈川県横浜市に作られたKアリーナ横浜の存在は大きい。音楽専門のアリーナ会場として設計され、そのキャパは約2万人を誇る。この規模の集客をする音楽専門のアリーナ会場は、日本屈指だ。さらには駅からも近くアクセスも良好だと、開業前は言われていた。

 個人的には、ずっと真夜中でいいのに。のライブを観るため、今年Kアリーナ横浜へ足を運んだ。とても素晴らしいライブで心の底から感動したのだが、そう思った起因は歌や演奏の良さだけではなく、会場がKアリーナ横浜だからこその理由もあった。それは、会場の音響が格段に良かったからだ。すべての楽器の音がきれいに響いていたし、音が無駄に反響することもない。アリーナ会場の場合はホールやライブハウスとは違い、ある程度は音の悪さも許容して参加することが多いのだが、そんな必要もないほどに素晴らしい音響。オーケストラがコンサートを行うような、音響の良さを売りにしたホールと比べても引けを取らないほどに優れていた。この集客規模の会場では、日本屈指の音響の良さではないだろうか。ずっと真夜中でいいのに。のライブに自分は何度も行っているし、国立代々木競技場 第一体育館やさいたまスーパーアリーナなどのアリーナ会場でもライブを観たことがあるが、Kアリーナ横浜でのライブが最も音響が良いと感じた。大会場で良質な音を作ることは難しいはずなのに、だ。

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 そんなKアリーナ横浜だが、何もかもが優れた会場というわけではなさそうだ。来場者から最も不満が出ている部分は、“導線”だろう。通常ならば横浜駅まで徒歩10分弱でたどり着く場所なのだが、周辺の道路が狭かったり住宅地を避けて歩かせるように警備されているため、終演後はかなり混雑してしまう。駅までの距離は短いとしても、混雑時間ならば徒歩で30分ほどはかかるかもしれない。さらには会場内の導線も狭く限られており、規模のわりには出口も少ないため、会場の外に出るまでにも時間がかかってしまう。運営側が規制退場のアナウンスを流しても協力せずに我先にと帰ろうとする人がいたり、空いている出口へスタッフが誘導するものの集客が多いゆえか上手くオペレーションできなかったりと、そういったことも退場に時間がかかってしまう理由だろう。

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 ライブの観覧においても不満を感じる人もいるようだ。Kアリーナ横浜は、スタンド席はロアースタンド、ミドルスタンド、アッパースタンドと3段構造になっている。他のアリーナ会場と比べても、アリーナ席が少なく、スタンド席の割合が多いのだ。だが、客席が扇形になっているため、メインステージはどのスタンド座席からも観やすい。流石に後方だと演者の表情を肉眼で確認することは不可能だとは思うが、それでもアリーナ会場としてはステージが近く感じられる構造になっているはずだ。一方で、アリーナ席が少ないことにはデメリットもある。アリーナが狭いがゆえに、外周に花道を設置したりトロッコを走らせたとしても、客席が扇形なのでスタンド後方席の観客にとっては、他のアリーナ会場と比べると物理的な距離は遠いままなのだ。しかも、アリーナ後方にサブステージなどが用意されると、スタンド席からは死角となり得ることもある。特にアイドルやダンスボーカルグループなど、演者の動きや派手な演出で魅せるエンタメ要素の高いアーティストの場合は痛手になることもあるだろう。

 もちろんそれらの演出が不可能なわけではない。昨年行われたKing & Princeのライブでは、アリーナ外周に花道が設置されたという。だが、階層が多くスタンド席が中心の会場なので、アリーナ席に花道を設置しても前述の通り死角が生まれ、花道にいるメンバーが観づらい座席も出てしまったようだ。同じく横浜にあるアリーナ会場の横浜アリーナは縦長の会場、ぴあアリーナMMはほぼ正方形で階層は多いが列数が少ないからか、このような死角はおおよそ生まれない。

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