新たなロックシーンがここから加速する ガラクタ×ちゃくら×berry meet、切磋琢磨の対バンツアーを振り返る

『GOOD BOPS TOUR 2024』を振り返る

 2024年5月、ガラクタ・ちゃくら・berry meetの3組によるツアー『GOOD BOPS TOUR 2024』が全国7カ所のライブハウスで開催された。今回のツアーは、かねてより交流があった3組による対バンツアーであり、文字通り「対決」としての色合いが非常に濃いものとなった。お互いへの深いリスペクトと強いライバル心を持ちながら、切磋琢磨し続けてきた3組の長きにわたる旅は、5月31日の東京・WWW X公演をもってファイナルを迎えた。今回は、同公演の模様をレポートしていく。

 本題に入る前に、まずは札幌・Sound lab moleで5月11日に開催されたツアー初日公演の印象的だったシーンをいくつか振り返っておきたい。

 初日公演のトップバッターは、ちゃくら(なお、今回のツアーの出演順は、毎回じゃんけんによって決められたという)。サクラ(Vo/Gt)はMCで、このツアーについて楽しみだったのと同じくらい不安な気持ちもあったことを明かしていた。彼女いわく、ガラクタのようにInstagramのリールが回っているわけではないし、berry meetのようにYouTubeの再生回数が伸びているわけでもない。サクラは胸の内の想いをありのまま語った後、そうした不安や焦りを全てエネルギーに転化するようにして、「何もないけれど、もうこれしかない!」「音楽にかけるこの気持ちだけは、うちらは誰にも負けない!」と力強く叫び、そのまま怒涛の勢いで一気に駆け抜けるように楽曲を披露していった。

 2番手は、ガラクタ。はる(Vo/Gt)も同じように、同世代の2組と比べられてしまうことへの不安があると明かした上で、だからこそ「負けたくない」とまっすぐに語った。最終的には、持ち前のエンターテイナー精神で自分たち以外のファンを含めた観客全員を巻き込みながら圧巻のステージを展開してみせた。

 初日のトリは、berry meet。前の2組がライバル心を剥き出しにしていたからこそ、トリとしてステージに立つ上では一定のプレッシャーがあったはずだが、このツアーのために用意した新曲「溺愛」を披露するという特別な展開を含め、堂々たるパフォーマンスで初日の公演を鮮やかに締め括ってみせた。

 この記事の冒頭で、今回のツアーについて文字通り「対決」としての色合いが非常に濃いものとなったと書いたが、筆者は初日公演で同ツアーにかける3組の並々ならぬ気合いに触れ、思わず圧倒されてしまった。だからこそ、それぞれ切磋琢磨しながら成長を重ねてきた3組が、ツアーファイナルのステージでどのような姿を見せてくれるのかがとても楽しみだった。

 前置きが長くなってしまったが、ここからツアーファイナル公演の模様を振り返っていく。トップバッターは、ガラクタ。ファイナルの舞台となったWWW Xは、彼らにとって最大キャパシティの会場であったという。しかし、ステージに颯爽と現れた4人の佇まいは自信に満ちたものだった。こた(Gt)、ひろと(Ba)、ちゅうじょう(Dr)が打ち鳴らすダイナミックに躍動するバンドサウンド、まるで天井を突き抜けるように伸びやかに響くはるの歌声は、ツアー初日に明かした不安を一切感じさせないほどに眩い輝きを放っていた。

ガラクタ
ガラクタ

ガラクタ

 はるは、今回のツアーの楽しい思い出を振り返りつつも、「最初から最後まで、ガラクタが一番いいライブをする気は変わりませんので」と改めて2組への闘志を燃やし、そのまま凛とした歌心を丁寧に届けるパートへ。「タカラモノ」「相変わらず、愛変わらず」という渾身のバラードに続いて届けられたのは、ライブの前々日にリリースされたばかりの新曲「愛してるだけ」。美麗なストリングスがバンドサウンドのスケールを押し広げていき、その壮大さの中ではるはまるですぐ隣で優しく語りかけるような親密な歌声で〈愛してるだけ 伝えたい〉という深い想いを送り届けていく。

ガラクタ

ガラクタ

 終盤は一転して、フロア全体を巻き込みながら激しいロックナンバーを次々とドロップ。特に、ライブアンセム「アイラブユーが足りないの」で生まれた会場全体の一体感は感動的で、曲の終盤でははるの呼びかけを受け観客がシンガロングで応える一幕も。ラストは、はるの「もっと! もっと! もっと!」「最後までみんなで楽しもうね!」という熱いアジテーションを経て、「貴方依存症」へ。大団円を迎えたと思いきや、残された僅かな時間を使ってこの日2度目の「1分1秒」を超高速で歌い届けた。集まった観客を誰一人置き去りにすることなく、徹底的にエンターテインしてみせた最高のロックショーだった。

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