新たなロックシーンがここから加速する　ガラクタ×ちゃくら×berry meet、切磋琢磨の対バンツアーを振り返る

　ガラクタからのバトンを受け取り2番手としてステージに立ったのは、berry meet。幕開けは、「純情」「煌めき」の2連打。しなやかでありながら、時おり容赦ない轟きを放つバンドサウンド。その上を軽やかに、時に情熱的に響くたく（Vo/Gt）の歌によって、フロア一面に熱気が伝わっていく。ツアー初日を観た時にも驚いたが、3人のライブバンドとしての気概が滲む全身全霊のパフォーマンスは、今回のツアーを通してさらに何段階も洗練されているように感じた。MCパートでたなかり（Ba）は、2組との切磋琢磨の日々を通して多くの刺激をもらったと本ツアーを振り返り、いこたん（Dr）は長い旅を通してガラクタのちゅうじょうとドラムのチューニングキーを交換する仲になったと語った。そして、たくは楽しかったことや悔しかったことでいっぱいのツアーの旅路を思い起こしつつ、「その時の全力を出すだけ」とステージに立つ上での意気込みを力強く告げた。

　その後に披露されたのは、壮大なバラード「月が綺麗だって」「ねぇ、私」の2曲。たくは、ドラマチックに展開するサウンドの中で、切実な歌心を丁寧に送り届けていく。その大きなスケール感と温かな包容力に満ちた歌の力に改めて驚かされつつ、3人のソロ回し＆セッションを経て、再びギアを上げて後半戦へ。終盤のハイライトを飾ったのは、ツアー初日にライブ初披露された「溺愛」だ。曲に入る前に観客がコール＆レスポンスを練習するための時間が設けられたが、ライブの前々日に音源がリリースされていたためか、ほとんど練習の必要がないほどばっちり合いの手が決まっていて、そのまま曲へ突入。3人の演奏と歌が観客による〈大丈夫〉〈誓います〉の歌声によって彩られ、会場全体の一体感がさらに高まる。ラストは「図星」で熱狂のピークをさらに更新してみせた。一人ひとりの観客と共につくりあげた、温かさと熱さの両方が滲むステージだった。

　この日の公演および、今回のツアーの締め括りという大役を担ったのは、ちゃくら。現在、葉弥（Dr）がジストニアの治療に専念するため一時的に活動を休止しており、名古屋公演以降はサポートドラマーを迎えた体制でのステージングとなった。沈黙の中に響いたサクラの深いブレスの音、そしてアカペラによる「あいつ」の歌い出しによって、前の2組のアクトによって熱し切っていたステージの雰囲気が一瞬にして変わった。瞬く間に観客を惹き込んでみせた彼女たちは、その後も「もういいよ、おやすみ」をはじめとした代表曲を次々と披露していく。

　何度もステージの縁の台の上に上がり、豪快なプレイでフロアを沸かしていくまお（Gt）とワキタルル（Ba）。彼女たちが鳴らすバンドサウンドとサクラの煌びやかな歌はこの日も凄まじい気迫を放っていたが、初日と比べると、目の前の観客一人ひとりとしっかり呼吸を合わせながら共にバンドアンサンブルを紡いでいくような温かな一体感も感じられた。とはいえ、やはり葉弥の不在がもたらす3人の心の空白は大きい。サクラは「4人で音楽をやりたい」と本心をありのまま語り、そして彼女がいつ帰ってきてもいいように温かくキラキラとしたこの場所を守り続けると宣言した。

　ここから、怒涛のクライマックスへ。特に印象的だったのは、ラストナンバー「まるで駄目な女子高生はバンドマンになった」だ。サクラは、この歌を歌う前に、「まるで駄目な“女子高生たち”はバンドマンになった」と叫んだ。その“女子高生たち”とは、他でもないメンバー4人のことである。彼女たちのバンド史を振り返るような言葉たちが、アンセミックな歌のメロディと重なって響き、次第にフロアからたくさんの拳が高く突き上がっていく。そしてラストのコーラスパートでは、サクラが観客に歌声を求め、さらなる一体感と高揚感が会場全体を満たした。なんて熱く、美しい光景なのだろう。葉弥を含めた4人の想い、ちゃくらというバンドの生き様を、観る者の心に深々と刻み付けるステージだった。

　ラストには、この日誕生日を迎えたワキタを3バンド全員で祝うシーンも。その後、観客を含めた記念写真を撮影し、今回のツアーは幕を閉じた。ツアーは終わったけれど、3組はこれからもお互いに切磋琢磨し合いながら、共に走り続けていくはず。そして、ロックシーンの可能性を果敢に切り開き、新しいムーブメントを巻き起こしてくれるはずだ。3組の、そしてロックシーンの未来への期待が膨らむ、素晴らしいツアーだった。

『GOOD BOPS TOUR 2024』写真を見る