L'Arc~en~Ciel、2年ぶりの再会果たしたレア曲ツアー 『ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND』徹底レポ

ラルク『UNDERGROUND』徹底レポ

 2024年2月8日に幕を開けたL'Arc~en~Cielの全国ツアー『ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND』は、これまでライヴで披露される機会が少なかった楽曲にスポットを当てるというコンセプトで開催された。さらにメンバー4人がステージ上に揃うのは、2022年5月に開催された東京ドーム公演『30th L'Anniversary LIVE』以来でもあり、約2年ぶりのラルクとの再会の機会となった同ツアーは、往年のファンにとってもより特別な体験となったに違いない。国立代々木競技場 第一体育館公演、さいたまスーパーアリーナ公演2Daysのレポートを通して、『UNDERGROUND』を徹底的に振り返る。

絶えず進化を重ねていくラルク 可能性に満ちた眩い未来

 3月7日、国立代々木競技場 第一体育館公演。約2年ぶりのラルクとの再会の機会であると同時に、かつての自由なライヴ環境を数年ぶりに取り戻すことができた時間、空間であったとも言える。ライヴで披露される機会が少なかった楽曲にスポットを当てるというコンセプトも相まって、特別な時間が約束されたツアーに臨むにあたって、これまでのライヴとは似て非なる期待や高揚感を抱いていた人も多かったはずだ。

 開演時間を少し過ぎた頃、場内が暗転し、一人ひとりの観客が持つ「L'ライト」によって、会場全体が虹色に照らし出される。そして、第1部の幕開けを飾るオープニング映像へ。冷たい雨が降りしきる闇夜。一羽の黒い鳥が、月の光に照らされた巨大な城の中へと舞い込んでゆき、漆黒の衣を纏ったメンバー4人が一人ずつ登場する。一音ずつ鳴らされる鍵盤の音に合わせて、会場の中央に設置されたセンターステージが白色と赤色に何度も激しく明滅し、会場の高揚感が際限なく高まった瞬間、オープニングナンバー「THE BLACK ROSE」が披露される。この時点では、センターステージの四方が紗幕で覆われていて、客席から見えるのは4人の影のみ。yukihiro(Dr)による激しく轟くドラミング、熱く昂るken(Gt)のギター、獰猛にエッジを攻め続けていくtetsuya(Ba)のベース、艶やかで美麗なhyde(Vo)の歌声によって、瞬く間にダークで深淵な世界が立ち上がっていき、続く「EXISTENCE」のイントロで紗幕が落ちると、ついに観客の前に4人が姿を現した。

hyde

 一気に凄まじい歓声が巻き起こり、サビでは、4人の歌と演奏に観客の〈Take away〉という声が重なる。その一体感に満ちた光景は、一人ひとりの観客が長年にわたってこの曲を大切に聴き込み続けてきたであろうことを感じさせるものだった。「THE NEPENTHES」では大量のスモークに加え、熾烈な炎がステージを熱く彩り、アリーナの広さを活かしたダイナミックな演出に圧倒される。何より、4人のライヴパフォーマンスは、そうした演出に負けない華や気迫、爆発力を放っていた。決して、過去の音源の再現ではない。全編に通じることではあるのだが、いつまでも色褪せない輝きを誇る楽曲と、絶え間ない進化を重ね続けてきた今の4人の最新型のライヴパフォーマンスの対比が感動的で、これこそが今回のツアーの肝であることに気づく。第1部は2000年代の楽曲を軸に構成されていたが、そのラストを飾ったのは、1993年リリースのアルバム『DUNE』収録曲「Taste of love」であった。ken、tetsuya、yukihiroの3人のプレイが容赦なくぶつかり合うことで生まれるスリルとドライヴ感が凄まじく、その上に響くhydeの熾烈な咆哮が深く胸を穿つ。まるで、同曲に込められた初期衝動を、バンドとしての表現を研ぎ澄ませてきた今の彼らが、約30年の歳月を経て再び爆発させてみせるような圧巻のパフォーマンスだった。

ken

 一度メンバーが退場した後、第2部の幕開けを告げる映像へ。第1部のゴシックな世界観とは異なり、今回はサイバー空間を描いたSF風の映像だ。ポリゴンで表現された4人が映し出された後、鮮やかな煌めきを放つギターリフが光る「Voice」へ突入する。重厚でシリアスなムードが貫かれていた第1部から一転して、ここからは、爽快さ、晴れやかさに満ちた楽曲が続く。「Vivid Colors」では、「叫べ、東京!」「Singing!」というhydeの呼びかけを受けて会場全体から歌声が響きわたる。そのコール&レスポンスの力が相まってか、まるでリリースされたばかりの新曲のような瑞々しい輝きを放っているように感じられた。また、ラストのサビでは、hydeがマイクを丸々フロアに託す一幕があり、彼らが観客へ寄せる深い信頼を感じさせた。一際大きな歓声が巻き起こった「flower」では、hydeとtetsuyaがセンターステージから十字に伸びた花道を歩みながら、観客と熱く豊かなコミュニケーションを重ねていく。その後のMCでhydeは、「声、出せるようになってよかったね」「グッとくるね」と語り、こうした自由な環境がいかにかけがえのないものであるかを再確認する。そして、「今日は、あの頃(コロナ禍)の分も取り戻そうぜ」という呼びかけから、「It's the end」へ。モードを変え、熱烈でアグレッシブなロックナンバーが次々と鳴らされていく。1990年代の楽曲を軸に構成された第2部の中でも、ロックバンドの野性を容赦なく解き放ってみせた「Cureless」は特に圧巻だった。また、そうした初期ナンバーと、壮大で荘厳な響きを放つ「叙情詩」(2005年リリース)のコントラストも見事で、改めて4人が長い何月をかけて深め続けてきた豊かな表現力、そしてその幅広さと多彩さに驚かされた。

tetsuya

 バンドにまつわるさまざまな3択クイズが出題される「THE L’ArQuiz」を経て、最終章にあたる第3部へ。第1部の映像で降っていた雨が止み、巨大な城が瑞々しい草や花によって覆われ、黒い鳥が白へと姿を変える。そして、晴れ渡った青空に虹がかかり、会場からこの日一番の歓声が沸き起こる。熱狂の中、第3部の幕開けを担う「GOOD LUCK MY WAY」へ。hyde、ken、tetsuyaが花道の先端まで繰り出し、観客と至近距離でコミュニケーションをとっていく。2000年代、2010年代の楽曲を軸に構成された第3部は、まさにハイライトの連続とも言うべき怒涛の展開が続く。yukihiroの激烈なドラミングを合図に大量の炎が放出された「Killing Me」、hydeが右手を大きく上げながら熱唱した「NEXUS 4」と、来たるべきクライマックスへ向けて会場全体の一体感をさらに高めていく。

yukihiro

 また、「ミライ」では、ミラーボールの光が会場を彩り、さらに七色に光るレーザー&「L'ライト」によって会場が虹色に輝く中、〈oh, glory day our hearts forevermore〉のシンガロングが高らかに響きわたった。 ミラーテープの放出から幕を開けた「Link」では、hydeの呼びかけを受け、観客が何度もジャンプを繰り返す。MCでhydeはかつてと比べて成長した今の自分たちが過去曲を披露する今回のツアーを振り返りながら、「何年経っても、まだまだ進化することができる」という深い確信を力強く語った。その言葉を受けて会場から温かな拍手が送られる感動的なムードの中、kenによる深いサスティンが効いたドリーミーなギタープレイから、ラストナンバー「MY HEART DRAWS A DREAM」へ。観客が歌う〈夢を描くよ〉と、hydeが美麗なファルセットを交えて歌う〈our hearts draw a dream〉が交差し合い、銀の紙吹雪が舞う中で至高の大団円に至った。

 この日のライヴから改めて感じたのは、これからも絶えず進化を重ねていくであろうL'Arc~en~Cielの、可能性に満ちた眩い未来。35周年、40周年、さらにその先の未来への期待が際限なく高まるような一夜だった。(松本侃士)

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