草彅剛が持ち続ける“子ども心”とは? 高倉健への憧れ、主演映画『碁盤斬り』……変わることへの意識
主演映画『碁盤斬り』の全国公開を控える草彅剛が5月12日、同作の監督を務めた白石和彌、共演の斎藤工とトーク番組『ボクらの時代』(フジテレビ系)に出演した。
『碁盤斬り』は古典落語として親しまれてきた「柳田格之進」をベースとした時代劇で、身に覚えのない罪をきせられたうえに妻を喪い、さらに娘とも引き裂かれた男・柳田格之進の復讐を描いている。『孤狼の血』シリーズなどで知られる白石監督にとって初時代劇映画で、草彅が浪人の格之進、斎藤は格之進と因縁を持つ武士・柴田兵庫を演じている。ちなみに草彅にとっては、2009年公開の映画『BALLAD 名もなき恋のうた』以来の時代劇への出演となる。
同作の撮影時のエピソードを含めながらトークが展開された『ボクらの時代』で印象的だったのが、草彅の「(作品を)自分で観て、初めて大人を感じました」「大人として演じられた、俺」というコメントだ。そのうえで、草彅は自分の本質について「幼稚」と語っていた。
草彅は寡黙な格之進を演じるにあたり、2014年に亡くなった高倉健の演技や佇まいを意識したのだという。草彅と高倉は2012年公開の映画『あなたへ』で共演。高倉は、亡くなった妻の遺言の真意を探るために旅へ出る刑務所指導員・倉島英二役、草彅は妻の不倫の事実を知ることを恐れて出張に出続ける田宮裕司役を務めた。草彅は「健さん歩いてたなあとか、撮影所の外に出た時に健さんを思い出して」と撮影当時を思い返していた。高倉が醸し出していた当時の雰囲気は、草彅にとって“憧れの大人像”だったに違いない。
さらに草彅は、「将来は“ブルースギターマン”になろうって」と、この先なりたいものについても言及。ミュージシャンの斉藤和義、奥田民生の名前を挙げながら、「ギター一本で表現ができること」「音で人の心を動かすこと」のかっこよさについて熱弁。さらに、2018年に亡くなった大杉漣との思い出も懐古。草彅は「大杉漣さんにギターを教えてもらって、そういう憧れがあって。漣さんも、亡くなる直前『アナザースカイ』(日本テレビ系)という番組でハーモニカとギター一本で弾き語りをして、そういう影響もあって、いつか60歳くらいでいいブルースを奏でてるみたいな、そういうおじさんになりたい。かっこよくないですか?」と、白石監督、斎藤に尋ねた。番組は、草彅の「こういう大人になりたい」という話で終始盛り上がった。
草彅は、“子ども心を持ち続けている大人”である。いや、もしかすると子どもよりも子どもらしいかもしれない。それくらい、好きな物事に対して純粋に向き合っている。
草彅と言えば、ヴィンテージのジーンズ、ギター、アンティークなどの愛好家で知られている。自著『クサナギロン』(2008年/集英社)でも、「僕はアンティークとか骨董品が好きだし。ジーパンだって150年以上も形が変わらないからこそ、魅力的だと思うし」と、“長年そのままの状態”であるものに心が惹くかれると記していた。さらに、番組内では「最近、インスタ(Instagram)とかで世界中のモノが見えるからね。で、常に誰かに買われるから。もっと早くいっておけばよかったって」と、とにかく毎日ほしいものがあって仕方がないと話していた。まさに子どものようなピュアな発想である(もちろん、いい意味で)。
白石監督も、草彅が「京都(の撮影へ)行ってる時も、ヴィンテージものの店に行って、服の襟に付いているホコリが『確実に1930年のホコリだから、すごくない? かっこいいでしょ?』って」と喜ぶ様子と、それを聞いてポカンとしていた周囲の反応のエピソードを明かして笑わせた。話を聞いているだけで、草彅の無邪気な様子が目に浮かぶ。
象徴的だったのが、小さい頃からリンゴやスイカが好きで、それが今でも変わっていないという話。草彅が「(リンゴは)どこでも食べれるし、潰れないですし、食べたらゴミを放るくらいしかないし、すごいリスペクトしてる」「リンゴは持ち運べるんで。バナナやミカンは潰れやすいけど、リンゴはそうならないからすごい。リンゴほど優れた食べものはない」という持論を口にした時、斎藤の「一貫してますね」という言葉は言い得て妙だった。そう、つまり草彅は子ども時代に感じたこと、好きな物事、憧れを“一貫”して持ち続けているのだ。ヴィンテージという“モノの状態”もそうだし、長年ずっと付いていたであろう襟のホコリ然り、“そのままでいること”“そのままであり続けること”が草彅剛という人物を形成しているのだ。