DISH//、2023年締め括った“HAPPY”で色とりどりなワンマン 意欲的なセットリストで笑顔に

DISH//、2023年を締め括ったワンマン

 DISH//のワンマンライブ『DISH// ARENA LIVE 2023「HAPPY?」』が12月2・3日、ぴあアリーナMMで開催された。2023年8月にリリースされたEP『HAPPY』をフィーチャーしたアリーナ2デイズ公演だ。毎年12月に1年を締め括る大規模ワンマンを開催しているDISH//。「僕たち自身がワクワクするものを手に取っていく1年にしたい」と語られた(※1)2023年が、『HAPPY?』というタイトルのライブで締めくくられるのは納得感がある。そして彼らは、自分たちのみならず、ファンをはじめとしたDISH//を囲むみんなを笑顔にさせるライブを繰り広げた。

DISH// ライブ写真(撮影=Ray Otabe)

 なぜそのようなライブが実現したのか。おそらく、2023年の集大成という意義を越えて、DISH//のこれまでの歩みがここに総括されたような感慨、喜びをメンバーとファンが共有し合えるライブだったからではないだろうか。

 本稿では12月3日公演を振り返る。この日DISH//は、メンバー作の曲のみで構成されたEP『HAPPY』から全5曲を演奏したほか、「Dreamer Drivers」「いつだってHIGH!」といった新曲をライブ初披露。さらに初期曲も網羅したセットリストを観客に届けた。DISH//にとって今年最後のワンマン。「ほら、こんな楽しいことできるの、今年最後だぞ!」と観客を煽りつつ、楽器を掻き鳴らし、初っ端から全力ダッシュをキメる北村匠海(Vo/Gt)、矢部昌暉(Cho/Gt)、橘柊生(DJ/Key)、泉大智(Dr)は笑顔だ。当初は楽器未経験だった4人だが、今では、楽器から鳴らされる音と彼ら自身の心が繋がっているように感じられる。自らの手で歌い鳴らす“バンド”という表現形態を彼らが選び、追い求めるに至った理由が音楽になって伝わってくる。

DISH// ライブ写真(撮影=Ray Otabe)

 ライブのメッセージの芯を担ったのは、EP『HAPPY』の収録曲だ。EPのタイトルが『HAPPY』なのにライブのタイトルが『HAPPY?』と疑問形なのは、北村曰く「今年1年どうだった? 幸せでした?」とみんなに聞きたくて開催したライブだから。「HAPPY」で始まり「HAPPY」で終わるセットリストから読み取れたのは、やがて日常に戻る観客一人ひとりの目線が少しでも上向きになるように、といった願い。「今日に至るまでに、みなさんがどんな日々を過ごしてきたのかは知らないけど、この曲でちょっとでも笑顔に、ちょっとでも気が楽になってくれたら」という言葉を添えた「everyday life.」、「友人の幸せをそばで感じて、なんか俺も幸せだなって思った。ちょうど同じタイミングに大智がそう思って作った曲を、歌わせてください」という言葉を添えた「ウェディングソング」では、DISH//を続けながら歳を重ねた4人の等身大の気持ちを届けるとともに、客席にいる一人ひとりの人生にも想いを馳せ、寄り添った。

DISH// ライブ写真(撮影=Ray Otabe)
北村匠海(Vo/Gt)

 そして観客へ感謝を伝えたあと、北村のアカペラから始まった「沈丁花」を経て、本編ラストは「エンドロールは悲しくない」。「あなたとのこの時間ってやっぱり今しかないし、今日は終わってしまうかもしれない。でも悲しくないし、またみんなに絶対に会える。そんな“絶対”を僕も信じたいし、みんなにも信じてほしい」と温かいメッセージを手渡した。

 開幕はアッパーチューンに任せ、中盤にミドルナンバーやバラードを配置、再びのアッパーチューンで盛り上がったあと、観客の手元に残したいメッセージを歌った曲を最後に届ける――というここ数年の経験から編み出した鉄板のライブ構成を踏襲しつつも、バンドのアプローチはより自由に、大胆になっていた。「ビリビリ☆ルールブック」「Seagull」のように、全員歌えるバンドならではの4人でマイクリレーする曲もあれば、「Vamping」「KICK-START」「万々歳」のように、北村、矢部、橘が踊りながら楽器を演奏するダンスロック曲もある。一方、どこか舞台的なブロックもあった。部屋の電気を消す時のように、北村が紐を引っ張るようなしぐさをしたあと、曲が終わり、照明が落ちる演出が粋だった「everyday life.」。リズミカルなサウンドにメンバー全員ノリながら演奏、北村特有のステップにも視線が集まった「QQ」。そんな2曲を経て、「Shout it out」の冒頭。バンドがキメを鳴らし、緊迫した空気を生み出す中、北村が一人静かに花道を歩いていく。北村がグッと手を握ると、そこに視線が一斉に集まるが、観客の集中力を引き出すことは容易ではないだろう。役者としても活躍する北村の佇まいとバンドのサウンドで魅せたこのブロックは、つい声を抑えて“鑑賞”してしまう感じがあり、“力強く盛り上がる”とも“心で静かに聴く”とも異なる、新しいライブパフォーマンスを観た感触があった。

 さらに、ライブのクライマックスにはホーンカルテット&パーカッションの特別部隊が登場し、「Vamping」から「沈丁花」までの6曲をスペシャルアレンジで披露。サポートメンバーのうち、パーカッションの桑迫陽一は泉のドラムの師匠で、泉の加入までDISH//のサポートドラマーを務めていた人物。トランペットの真砂陽地は、2018年の日比谷公園大音楽堂公演のライブサポートや「沈丁花」のレコーディングに参加した人物と、縁と繋がりを感じさせる人選だったのも注目すべきポイントだ。「I Can Hear」演奏時にはメンバーがバンドで初めて生演奏した2013年のZepp Tokyo公演を回顧していたが、ライブタイトルにちなんだ選曲と思われる「GRAND HAPPY」では、同曲が恒例となっていた元日の武道館公演を思い出した人もいたかもしれない。“あの頃”を懐かしめるほど、DISH//の歴史にも厚みが出てきた。

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