UNISON SQUARE GARDEN、極まる3ピースアンサンブル　充実感に満ちた『Ninth Peel』ツアー“2周目”

　ライブの折り返し地点では、アルバムからバラード「もう君に会えない」が披露された。冒頭は斎藤のアカペラで、やがて田淵と鈴木も加わるアレンジ。限りなくシンプルな照明演出が、斎藤の剥き出しの歌、3人だけで鳴らすバンドサウンドの孤独感を際立たせた。ユニゾンには珍しく直接的な描写とともに喪失感を歌った曲が、重厚な余韻を残す。

　コーラスワークも美しい「夏影テールライト」を経て、いよいよライブのクライマックスへ。アッパーチューンで駆け抜けた本編最終ブロックの白眉は、「フレーズボトル・バイバイ」→「スペースシャトル・ララバイ」→「Invisible Sensation」というラスト3曲だろう。アルバム『Ninth Peel』に対する解釈は聴いた人の数だけあると思うが、個人的には、人生や生死がテーマのアルバムだと思っている。また、過去曲も多かったセットリストが証左となっていたように、それは、ユニゾンが歌い続けてきたテーマの一つであり、3人がバンド活動を通じて向き合ってきたテーマでもあるんじゃないかと思う。その上で、ライブを通じて“忘れられない”景色を重ねたあと、〈忘れられない今日になった！〉と歌う「フレーズボトル・バイバイ」から、〈忘れたくても忘れない 今を繋いでいく 僕たちのスピードで〉と歌う「スペースシャトル・ララバイ」へ。アルバムの終わりと始まりを一繋ぎにしたのち、〈生きてほしい！〉と歌う「Invisible Sensation」へ向かう流れは非常にドラマティックだった。

　現実は容赦ないが、その上でどう生きていくか。挫けそうになっても、どうにか腐らずに、小さな希望を繋ぎながらやっていけないか。人生というステージを七色に輝かせられるのは、他でもない、自分自身のみ。「Invisible Sensation」はそんなUNISON SQUARE GARDENの人生哲学を地で行く曲であり、音源とは違い、最初から3人で鳴らすライブアレンジも相まって、フィナーレにふさわしい感動を呼んだ。バンドのアンサンブルは相変わらず速くて複雑で緻密だが、XIIXの活動などを経てさらに進化した今の斎藤のボーカルによって、歌詞の一言一言がまっすぐに、すごい速さで届いてくる。星が星座を作るように、ある歌詞と別の歌詞が聴く人の心の中で結びつき、その人だけの文脈が構築される。UNISON SQUARE GARDENはリスナーに寄り添わない。「この曲からこんなメッセージを受け取ってほしい」とか「あなた自身のこんな経験を思い出しながら、この曲を聴いてほしい」というようなことを言わない。答え合わせみたいなこともしない。だからこそ、この音楽の前でならば、心から泣いたり笑ったりできるのだという人が今彼らを支持しているのだろう。

　全19本中18本目、つまりツアーの終盤だったZepp Haneda公演。アンコールの「mix juiceのいうとおり」に入る前にニコニコしながら手を振っていた田淵、全曲終了後、頭上のクレーンカメラに向かってポーズを決めた斎藤、ステージから去る前に胸の前でハートマークを作ってみせた鈴木と、メンバーのご機嫌な姿からは、ツアーに対する満足感や現在のバンド活動に対する充実感が窺えた。来年は結成20周年。バンドとして完全に極まった状態で迎えるアニバーサリーは、楽しくなるに違いない。

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■セットリスト
1. スカースデイル
2. 天国と地獄
3. 恋する惑星
4. BUSTER DICE MISERY
5. 23:25
6. kaleido proud fiesta
7. ここで会ったがけもの道
8. アンチ・トレンディ・クラブ
9. きみのもとへ
10. いけないfool logic
11. カオスが極まる
12. もう君に会えない
13. 夏影テールライト
14. ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
15. 世界はファンシー
16. フレーズボトル・バイバイ
17. スペースシャトル・ララバイ
18. Invisible Sensation

En1. ライドオンタイム
En2. mix juiceのいうとおり