UNISON SQUARE GARDENのバンドアンサンブルにあるみずみずしさ 高揚感がそのまま音になった東京ガーデンシアター公演

USG、東京ガーデンシアターレポ

 私たちが憧れるUNISON SQUARE GARDENのバンドアンサンブルにあるみずみずしさとは何なのか、考えながらこの原稿を書き始めようとしている。

 これまで制作された楽曲群、バンド活動において大切にしてきた哲学を中心点として置き、斎藤宏介(Vo/Gt)、田淵智也(Ba)、鈴木貴雄(Dr)が構成する三角形。誠意を持ってメロディに向き合うボーカリストでありながら凄腕のギタリストでもあり、時に愛器から刺激的なフレーズ&音色を繰り出す斎藤。全身を使ってノリながら、歌うようにベースラインを奏でる田淵。手数の多い華やかなプレイが特徴的だが、たった一音の説得力で空気を引き締めることもある鈴木。

 ライブスタートとともに“よーいんどん”で走り出す3人は、それぞれ別の方向に向かっているように見えるが、三辺の糸の張り具合、演奏中のテンションがズレることはない。例えばタイトな「箱庭ロック・ショー」の縦の揃い具合。メロディが入り組んでいるが意外と余白の多い「世界はファンシー」でふと訪れる、ぞっとするような静寂。精度の高い演奏、ノールックパスを連続でキメるようなアンサンブルには、互いのプライドを信頼し、背を預け合う3人の信頼関係が表れている。

 まずは自分たちの誇りをかけて美しい三角形を作り上げる。一方、あえて形を崩すこともいとわない。気持ちが高ぶってメロディやリズムがやや走ったり、強調したい言葉やフレーズを少しためて歌ったり、何となくそういう気分だからいつもより音を長めに伸ばしたり、人間らしい歪さを有しながら彼らのライブは進んでいく。他人同士がバンドという一つの体を作っている時点で物事はメトロノーム通りには進まないのだから、決まった“完成形”などそもそも目指さず、心が求める方へ、面白そうな方へと転がっていく3ピースサウンド。人は予定外のことが起こると当事者も周囲の人も多少ひやっとするものだが、ライブ中の彼らはむしろそういったものを楽しんでいるようにすら見える。テンポや音の長さが変わるとグリッド線からは当然ズレるが、なぜだろう、最終的に辻褄が合っている。何がどうなったのか、客席から観ていてもいまいち分からない。それでもこの3人にしか分からない何かで以って解決が行われている。17年の仲だから自然とそうなっていく、という種類のものなのだろう。今のユニゾンには“隙がない”とはまた違う、何があっても「それ超ウケる」と笑いながら、面白がり、結局どうにかできてしまうような強さがある。

UNISON SQUARE GARDEN

 バンドでデカい音を鳴らすこと自体がどうしたって面白くて楽しいと理解しているから、ステージの外側に熱狂の理由を託す必要がそもそもなく、ゆえに観客の盛り上がりや一体感を煽るようなことはほぼない。セットリストや演出にはメンバーの気分や何らかの意図がもちろん反映されているだろうが、自分たちからそれを説明することはない。“こういった想いで今日のライブを作りました”、“こんなメッセージを受け取ってほしいです”と語ることもない(そもそも今回のツアーはMCがない)。UNISON SQUARE GARDENはライブの解釈の大部分を観る人それぞれに委ねている。この記事では観客としての特権を活かして、17thシングル『kaleido proud fiesta』を携えた『TOUR 2022「kaleido proud fiesta」』、ツアーファイナルの東京ガーデンシアター公演を振り返りたい。

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