“櫻坂46らしさ”を模索する旅で出したひとつの答え 『3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』の意義

櫻坂46マリンスタジアムレポ

 コロナ禍まっただ中の2020年12月9日に1stシングル『Nobody's fault』をリリースした櫻坂46にとって、有観客におけるライブの作り方、見せ方はひとつ大きな課題だったと言える。前身グループ・欅坂46の存在や、そこで積み重ねた経験があったとはいえ、再びゼロからグループを作り上げるうえでスタート時点から無観客ライブが強いられたことは、オリジナリティを確立させる点において困難を強いられたことだろう。

 そんな彼女たちがライブにおいて“櫻坂46らしさ”を確立し始めたのは、一期生・渡邉理佐の卒業公演となった2022年5月21、22日に国立代々木競技場第一体育館で開催の『櫻坂46 渡邉理佐 卒業コンサート』だったと筆者は感じている。ミディアムテンポのじっくり聴かせる楽曲が複数用意された4thシングル『五月雨よ』が生まれたことにより、ライブにおける見せ方、緩急のつけ方にも幅広さが生じ始めたことは、グループの多様性に大いに役立ったのではないだろうか。その後、同年8月に櫻坂46は初のフルアルバム『As you know?』を発表し、結成時からの武器であったダンサブルな側面をより深化させつつ、その音楽性の幅をさらに広げ続けた。そのひとつの集大成が、同年9月からスタートし、初代キャプテン・菅井友香の卒業セレモニーを含むグループ初の東京ドーム公演で幕を下ろした『2nd TOUR 2022 “As you know?”』だったことは、間違いない事実だ。

 そして、2023年の櫻坂46は変化を恐れることなく、“常に前進あるのみ”と新たな挑戦と向き合い続けた。1月には新たな仲間・三期生11名が加入することが発表され、2月には守屋麗奈を初めてセンターに迎えた約1年ぶりのシングル『桜月』で新規軸を打ち出す。さらに、この新作を携え、三期生とともに初めて挑んだ三度目の全国ツアー『櫻坂46 3rd TOUR 2023』ではグループカラーを確かなものとしつつ、三期生加入による変化がさらなる進化をもたらしていることも伝わった。そんな中でリリースされた6thシングル『Start over!』では、当時のグループが内包していたエネルギーを一気に放出させることにより、櫻坂46の存在感をより強いものへと昇華。夏には『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2023』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023』といったロックフェスで戦い、さらに『Japan Expo Paris 2023』『Japan Expo Malaysia 2023』を通してグループ初の海外公演も実現させた。そんな波に乗った状況下でリリースされた、ダメ押しの一発となる7thシングル『承認欲求』では初の選抜制度を導入し、三期生を交えた新たな編成で前線へと飛び込んでいった。グループ第二章の幕開けとしては申し分のない流れだったのではないだろうか。

 その第二章における最初の区切りとなったのが、11月25、26日に千葉・ZOZOマリンスタジアムで開催された『3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』だった。12月9日のデビュー日より少々早めに行われたこの周年記念公演は、グループにとって初の単独野外スタジアムライブであり、しかも11月末という真冬の野外ライブという特殊な環境下にも関わらず、会場にはZOZOマリンスタジアム史上最高となる2日間で約7万2000人を動員。会場で客席を目にして驚いたのだが、ステージを正面から見ることができない見切れ席のみならず、完全にステージの裏側となってしまうステージバック席までBuddies(櫻坂46ファン)で埋め尽くされたその光景は圧巻であり、今年の櫻坂46の勢いを象徴するような景色だと実感した。本稿では26日公演の模様を中心に触れていく。

 筆者は今回の『3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』を2公演とも会場で観覧したが、その観客動員と同じくらいに驚かされたのが2日間のセットリストだった。一期生・土生瑞穂の卒業セレモニーを含む25日の初日公演では欅坂46時代の楽曲を含む全24曲、春より活動休止中だった遠藤光莉が復帰するサプライズも用意された26日の最終公演では全25曲が披露されたのだが、2日間の公演では10曲前後が差し替えられており、2日とも披露した楽曲でも日によってはメンバー構成が異なるものもあった。例えば、「条件反射で泣けて来る」は初日にオリジナルメンバーに近い構成、2日目はBACKSメンバーでパフォーマンス。「BAN」も初日はオリジナルに準拠した構成だったが、2日目は三期生を含む全メンバ―で披露となった。さらに、初日で土生が卒業したことにより、2日目は土生のポジションに新たなメンバーが入る楽曲も存在。最新曲「承認欲求」の土生パートには、井上梨名が加わっていた。ともに3時間近いボリュームで、覚えることもたくさんあっただろうし、極寒の野外ライブという普段とは異なる環境も決してプラスに作用したとは思えない。だが、そんなマイナス要素をまったく感じさせないほど、この2日間に目にした櫻坂46のパフォーマンスは過去最高と言えるもので、今年経験した新たなチャレンジがすべて糧となり、良い方向に作用していることが伝わってきた。

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