(夜と)SAMPOがメジャーデビュー 元ハンブレ 吉野エクスプロージョン、会社員とバンド兼業の生き方

(夜と)SAMPO、兼業バンドの人生

 2023年11月にメジャーデビューをした(夜と)SAMPO。メンバー全員が会社員を兼業しながら活動、首謀者である吉野エクスプロージョン(Gt)は元ハンブレッダーズのメンバーであるなど、紆余曲折を経てできたバンドであり、それが音楽の魅力にもつながっている。

 より具体的にその魅力を伝えるのならば、人間の生き様をそのまま歌にしている。彼・彼女らの音楽は理想と現実との葛藤にもがく様子を丁寧に描きながら、憧れへと突き進む自身の在り方について肯定をしていく。最新シングル「変身」はまさに(夜と)SAMPOのイズムがよく表れたナンバーだ。

 今回はバンドのキーパーソンである吉野エクスプロージョンにインタビュー。会社員との二足の草鞋を履く理由や、そのメリット。さらにこの1年間のバンド活動の振り返りや、シングル「変身」について話を聞いた。(マーガレット安井)

会社員でありながらバンド活動をするメリットは?

ーーハンブレッダーズのメンバーであった吉野さんですが「自分も出来る限り音楽×仕事、どちらもチャレンジしていきたい!」というのを理由にサポートへ降格することを選択。今は会社員でありながら、(夜と)SAMPOとして二足の草鞋を履きながら活動されていますよね。以前インタビュー(※1)をした際に、仕事をするとバンド活動ができなくなるので就職活動が前向きに行えなかった、と語っていました。その後、吉野さんはどういう変遷をたどり、仕事もバンドもどちらも重要というマインドを手にしたのでしょうか?

吉野エクスプロージョン(以下、吉野):仕事が面白いと感じたのは、入社してから2、3年目ぐらいだったと思います。ある程度仕事にも慣れてきて、週末にライブとかをやっていると、「バンドがあるから、仕事で大変なことがあっても乗り越えられる」と割り切って行動ができた。あと仮にバンド活動がうまくいっていない時でも「仕事は頑張れているから大丈夫」というようにもう一方が精神的な支柱になることも多かった。それに仕事で学んだことが、音楽活動を行ううえでメリットになったこともありました。例えばスケジューリングとかは、仕事で学んだことの一つです(笑)。

ーー吉野さんは以前、(夜と)SAMPOは趣味的な活動ではないという旨の発言をされていました。趣味としてのバンド活動と、(夜と)SAMPOの大きな違いって何でしょうか?

吉野:はっきりとは言えないですが、妥協せずに音源を制作しているところかな。やはり、いい作品ができることで自分自身の欲求が満たされる部分はかなりあります。

ーーライブに関してはどうですか?

吉野:自分でも悩んでいる部分です。本来ならライブでお金をいただくなら、それに見合った、またはそれ以上のライブをしないといけないと思います。もちろん、それは大事ですし意識もしているのですが、ではそれが一番大切か? と言われたら僕個人としては必ずしもそうではないのかも。最も大事なことは「自分の中にあるものをホンネで表現する」ということだと思うんです。まずは自分の中にあるものを表現したいという感情が先に来る。だから今までライブで“魅せていく”ことをあまり考えてなくて。そもそもギターソロで前に出るのも、本当は苦手で。

ーーえ、そうなのですか? あんなに激しいギターソロを弾いていらっしゃるのに。

吉野:以前にダメ出しされたこともあって(笑)。正直、苦手ではあるのですが、それが必要とされることもあると思いますし、今では「前に出なあかんな」と思いながら頑張っています。

基礎を見つめ直し、メンバー全員で話し合った1年

ーー仕事と音楽活動でいうと、(夜と)SAMPOはライブの本数がかなり少ない印象です。特に2022年の2ndミニアルバム『はだかの世界』のリリースツアーが終わってから今に至るまで、ライブ数は10本程度。それは単純に仕事が忙しいからでしょうか?

吉野:いや、必ずしもそれだけではなくて。リリースして、いろんなメディアで取り上げていただいたこと、あと精神面でも表題曲である「はだかの世界」のようにあるがままを肯定できたことなど自分にとってプラスになったこともあって、バンド活動をもっともっとやっていきたいという思いはありました。でも、ボーカルのいくみちゃんから「もっと何の為にライブをするのかとか、一本一本のライブについてもっと深く考えていったほうがいいんじゃないか」「バンド活動についても色々と考え直したい」という申し出もあって、そこで改めてハッとさせられて。それ故に、この1年間は「(夜と)SAMPOというバンドが、どうありたいのか」みたいなのを、メンバー全員でずっと話していました。

 あと、少ないライブ本数だったんですが、初歩的なことを再確認しながら毎回やっていました。例えば演奏する時にお互いの目をちゃんと見ようとか、この曲はライブでならこういう表現をしようとか。

ーーみなさんバンド経験が豊富じゃないですか。寺岡純二さん(Dr)は「フィッシュライフ」、いくみさんは「加速するラブズ」、吉野さんは「ハンブレッダーズ」をやっていた。だからライブに関しては、器用に何でもできてしまうのかなと思ってしまうのですが、そうではなかったんですね。

吉野:そこは逆に、(夜と)SAMPOの弱みであったと感じてます。曲に関していえば、クオリティもある程度上げていけるとは思うんです。メンバー全員、演奏技術もあるし、フレーズのセンスも上がってきていると思う。だけどライブは別モノで。音楽的には負けるつもりは1㎜もないんですが、「すごいなー」「負けるなー」というライブをしているバンドって、 “共同体”としてメンバー全員が同じ景色を見ていて、“本気で”思っていることを表現していると思うんです。そういう「本気で何かをする」という部分はお客さんにも伝わるし、(夜と)SAMPOにとってはまだまだ足りていない部分でもある。そんなことをいくみちゃんにも言われて。だから、もう一度基本的な部分からライブパフォーマンスを見直そうとなりました。

ーー先ほど吉野さんが「ライブで観客に“魅せる”ことは必ずしも一番ではない」と話してたじゃないですか。今の話ってそれに当てはまりますよね。

吉野:そうかもしれない。以前なら、プレイヤーとして曲のことを理解してギターを弾いたらなんとかできたと思うんですよ。でも、(夜と)SAMPOだと自分が作った曲をいくみちゃんに歌ってもらう。そしてそれをお客さんに広げてもらう。それは自分一人ではどうにかできる問題でもないので。だからこの1年で、「いいバンドって、コミュニケーションを重ねてできる人間模様からくるものなんだな」と感じました。

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