MY FIRST STORY Hiro、ONE OK ROCK Takaと叶えた約束の東京ドーム コラボも果たした熱狂の夜
兄弟とは永遠のライバルであり、絶対的な絆で繋がった味方でもある。そんな兄弟関係がもつ両面性をとてつもない規模で見せてくれたのが、2023年11月14日に東京ドームで開催されたONE OK ROCKとMY FIRST STORYによるツーマンライブ『VS』だ。
日本ロックシーン最大規模になったこの対バンライブは、MY FIRST STORYにとっては初めての東京ドームの舞台。このライブが開催されるきっかけは、約1年9カ月前にさかのぼる。MY FIRST STORYが2022年2月10日に開催した日本武道館公演の中で、ボーカルのHiroがステージ上から、客席で観覧していたONE OK ROCKのボーカルで実兄のTakaに向け、2023年に東京ドームでライブ共演することを申し入れたのだ。これまでHiroは「2021年に東京ドームに立つ」と宣言し、ONE OK ROCKを超えるという目標を掲げていた。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり、その夢を叶えられなかったことを切々と語り、兄に対して「弟の夢に付き合ってくれませんか？」と問いかけたのだった。Takaは、この呼びかけにサムズアップで答えたわけだが、その約束が1年越しで今回実現した。
平日にもかかわらずスタンドの最上階までびっしり埋まったオーディエンス。1日限りのスペシャルライブということもあり、どこか緊張感にも似た独特の雰囲気が立ち込めるなか、開演時間になると客電が落ちた。熱気をはらんだオーディエンスの歓声が東京ドーム特有の半球体の屋根に反射する。ステージの特大スクリーンにライブタイトル『VS』のロゴが映し出されるとともに会場が湧き上がった。
オープニングSEのシリアスな雰囲気を打ち破るように「The Beginning」から先攻、ONE OK ROCKのライブがキックオフ。スタートしたばかりにもかかわらず、バンドの演奏をバックアップするように自然とオーディエンスのクラップとシングアロングが巻き起こる。序盤からオーディエンスを味方につけたONE OK ROCKは、続けざまにアッパーチューン「Never Let This Go」で完全に東京ドームを掌握してみせた。「格の違いを見せつけにやってきたぞ」「史上最大規模の兄弟喧嘩をしかと見届けてくれ」とTakaが宣言し「Nothing Helps」「Make It Out Alive」を披露。ステージ所狭しと縦横無尽に走り回る姿からは手加減のかけらも見当たらない。
「ONE OK ROCKである前に兄として、あいつらに伝えたいことをセットリストに詰め込んできたつもりです」と熱いメッセージに乗せて演奏されたのが「C.h.a.o.s.m.y.t.h.」。それぞれバンドマンとして生きる道を選び、夢を追い続けているふたりの姿が〈気付けば大人になってって／それと共に夢もデカくなっていって／それぞれが選んだ道へ〉といった歌詞にリンクする。そんな心揺さぶられる雰囲気のなかスポットライトを浴びセンターステージに登場したTakaは、ロックバラード「Wherever you are」を熱唱。オーディエンスが掲げるスマホのライトが徐々に広がり、気づくと東京ドームが一体となって幻想的な空間をつくり上げた。
そしてここからは、オーバーキルにも近いラストスパートが待っている。ヘビーなサウンドのジャムセッションから「Deeper Deeper」の印象的なベースフレーズがきこえてくるとオーディエンスのボルテージは再沸騰。極彩色の照明とステージ両翼に伸びる巨大スクリーンの映像、そしてそれをも圧倒するメンバーの力強い演奏に度肝を抜かされながらも「Deeper Deeper」「Right by your side」「未完成交響曲」の3曲を駆け抜ける。とりわけ往年のファンをわかせたのは、2017年のライブツアーで販売された会場限定CDのみに収録されている「Right by your side」。Takaが「この機会を逃したら一生やらないと思う」と吐露した弟のHiroに向けた楽曲だ。スクリーンに和訳された歌詞が映し出され、Hiroへの兄としての温かく包み込むような想いが伝わってくる。
つづく「We are」では、ONE OK ROCKのライブでは定番になりつつあるオーディエンスの大合唱が今回も会場に響き渡り、その壮大なスケール感にあらためて胸を打たれる。ここでライブは大団円のクライマックスのように思われたが、最後の最後まで攻撃の手を緩めないのがONE OK ROCKである。ダメ押しで彼らを代表するアンセム「完全感覚Dreamer」を叩きつけ、それでもまだ足りず最後に「キミシダイ列車」を歌い上げた。「あいつらは飛び級でここまできちゃったから、また成長して戻ってこなきゃいけないんだよ」「また（MY FIRST STORYが）自分たちの力でこのステージに立てるように応援してやってください」とMY FIRST STORYとオーディエンスに呼びかけると、弟へバトンをつないだ。
