三浦徳子が手掛けるアイドル楽曲ならではの作詞スタイル ハロプロ、Sexy Zoneら作品から振り返る
11月6日、45年にわたって圧倒的な数のヒット曲を生み出してきた作詞家の三浦徳子が、肺炎のため亡くなった。
三浦が手がけたアーティストを振り返ってみると、松田聖子や杏里、堀ちえみ、工藤静香、郷ひろみ、TUBE、沢田研二、Sexy Zone、モーニング娘。、Juice=Juiceなど、著名アーティストや人気グループの名前がズラリと並んでいることに驚く。
アーティストの人柄や声の特徴を的確に捉え、音楽にピッタリとハマりつつ、そのアーティストにふさわしい言葉を紡ぐ才能に溢れていた三浦。一度聴けば忘れられない歌詞を作る天才だったと言っても、過言ではないように思う。
本稿では特に晩年に手がけた作品を紹介しながら、三浦の功績に思いを馳せたい。
三浦は1978年に作詞家としてデビューを果たすと、1980年代を中心に数多くのヒット曲で作詞を手がけてきた。その実績は記事内ですべてに触れることができないほど、本当に膨大な数があるのだが、例えば代表曲としては、松田聖子「青い珊瑚礁」や杏里「CAT'S EYE」、郷ひろみ「お嫁サンバ」、八神純子「みずいろの雨」などが挙げられるだろう。
三浦は晩年になると、ハロー!プロジェクトに所属するアーティストや、男性アイドルの作詞を手がけることが多かった。
中でも、モーニング娘。OGの佐藤優樹が今年の3月にリリースしたメジャーデビューシングル『Ding Dong / ロマンティックなんてガラじゃない』の通常盤Cに収録された「プラスティック・ジェネレーション」は、三浦の最晩年に手がけた楽曲。シティポップ感のあるサウンドの中で、〈1000%できそうもないことがしたいよ〉〈欲しいものなんて 無いの〉と、ソロアーティストとしてデビューしたばかりの佐藤の瑞々しい輝きをギュッと閉じ込めつつ、それでいて歳を重ねて歌っても違った味わいを見せてくれそうな歌詞を生み出し、「このアーティストが歌うなら、たしかにこの言葉しかない」と思わせる作詞が得意だった三浦ならではの作品となっていたように思う。
他にも、ハロー!プロジェクトというくくりで見れば、さまざまなグループやアーティストに、多彩な歌詞を提供してきた。
例えば、2019年、梁川奈々美の卒業タイミングでのリリースとなったJuice=Juice「Good bye & Good luck!」は、キラキラと跳ねるようなサウンドの中で、リスナーやメンバーの背中を押すような、やわらかくあたたかな言葉が並んだアンセムソングに。
一方でBuono!が2009年にリリースした「MY BOY」では、ロックなサウンドにふさわしい、強気で芯のある主人公を描いた歌詞を生み出してファンを惹きつけ、2011年リリースのミニアルバム『partenza』に収録された「キアオラ・グラシャス・ありがと」では、メインで歌う嗣永桃子の歌声が映える独特な言葉遣いが並んだ歌詞でファンを驚かせた。特に後者の楽曲は、ラジオ番組で「『意外性もあり』じゃないと、聴いている人はつまらないですよね」「私、意味よりも音が大事です」と語っていた三浦ならではの作詞スタイルが垣間見える楽曲の一つだと言えるだろう。