Ado、YOASOBI、米津玄師らワールドツアーの規模から考えるJ-POPの現在地 本格化する“海外進出”
ビヨンセやケンドリック・ラマーらアフリカ系アメリカ人の悲願の躍進が取り沙汰された『第67回グラミー賞授賞式』。運営団体となるザ・レコーディング・アカデミーは毎年年初にその年の世界的な音楽トレンドの予想発信も行っているが、2025年はその中のひとつに「J-POPの世界的ブーム」が挙げられたことも、特に邦楽シーンの動向を窺う人々にとってはすでに周知の事実だろう(※1)。
ここ数年、特に世界共通の音楽視聴フォーマットともなる配信ストリーミングサービスや動画サイト・YouTubeでは、確かに目に見えて一部の邦楽アーティストや彼らによる楽曲群に世界的な注目が集まっていた。2023年は前年から続く藤井 風「死ぬのがいいわ」、YOASOBI「アイドル」や米津玄師「KICK BACK」のヒット。そして昨年2024年はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」やKing Gnu「SPECIALZ」のヒットに加え、アメリカで開催された世界最大級の音楽フェス『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』に新しい学校のリーダーズやAwich、Number_i、YOASOBI、初音ミク、LE SSERAFIMらが出演。小さなアジアの島国で生まれた音楽は、年々着実に熱烈な人気を世界の各地で獲得しつつある。
冒頭に述べた「J-POPの世界的ブーム」は、上記のようなミュージシャンらの近年の躍進あってこそ発信された予想トレンドだろう。そんな日本の音楽への期待に応えるように、2025年も数々の邦楽アーティストによる海外公演スケジュールが解禁となっている。だが彼らによる海外ツアー・公演自体は昨年も散見されており、今年に限定して特筆すべき事項ではない。その中でもむしろ注目すべきは、昨年盛んだった“アジア圏の公演”から“欧米圏の公演”へと規模を拡大したライブが多数予定されている点。それこそが2025年における邦楽アーティストの海外進出において、特に重視すべきトピックスとも言える。とはいえ、何を持って“海外進出”とするかは注意しなければならない。“ワールドツアー”と言っても会場の規模は様々であり、それによって“海外進出”という言葉の捉え方も変わってくるのではないだろうか。
タイムリーな話題のひとつとなるのは、現在開催中の米津玄師の海外ツアー『KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK』だろう。年始早々から怒涛の新曲リリースに加え全国津々浦々を駆け巡った彼だが、国内ツアー終了後には息つく間もなく同公演のワールドツアーを開幕。中国・上海を皮切りにロンドンやパリ、ロサンゼルスといった自身初の欧米公演を組み込んだ、史上最大規模のツアーとなっている。
ワールドツアーは、MERCEDES-BENZ ARENA(上海)、TAIPEI ARENA(台北)、INSPIRE ARENA(ソウル)と1.5〜1.8万人前後の規模の会場で2DAYS開催。欧米・北米エリアではEVENTIM APOLLO(ロンドン)、ZENITH PARIS(パリ、RADIO CITY MUSIC HALL(ニューヨーク)、YOUTUBE THEATER(ロサンゼルス)と5~6,000人規模の公演となった。アジア圏は流石の人気でアリーナ規模を2DAYS、今後は欧州・北米エリアの規模を拡大することが、米津の挑戦になってくるのではないか。
2024年12月から2025年2月にかけて日本人アーティスト史上最大規模のアジアアリーナツアーを開催したYOASOBIも、昨年に引き続き世界躍進が期待できるアーティストだ。今年はアメリカで開催される日本音楽にフォーカスを当てた初のグローバルショーケース『matsuri '25: Japanese Music Experience LOS ANGELES』への出演や、初夏には自身初のイギリス・ロンドンでのヨーロッパ単独公演も決定。一方で夏から秋にかけては日本国内で、地方都市を中心に巡る全国14道県40公演のホールツアーを開催する予定となる。彼らの2025年はこれまで以上に多くの人々へ、直接自身の音楽を届けに行くことに注力する年となりそうだ。
アジアツアーでは、INSPIRE ARENA (ソウル)、AsiaWorld–Arena(香港)、BITEC LIVE(バンコク)、TAIPEI ARENA(台北)、MERCEDES-BENZ ARENA(上海)、Singapore Indoor Stadium(シンガポール)、Istora Senayan(ジャカルタ)と1〜1.8万人規模を2DAYSずつ巡った。ロンドン公演は、約12,500人収容のWembley Arena。当初は1日を予定していたが、即完につき同会場で追加公演が決まり、最大2.5万人規模の公演になる予定だ。イギリスまでYOASOBIの音楽が届き、そこでしっかりとファンを獲得している証左とも言えるだろう。