HKT48 劇場公演にも導入 橋本環奈から=LOVEまで、女性アイドルにおけるカメコ文化の今

女性アイドルシーンにおけるカメコ文化の今

 HKT48の劇場公演において、カメラ席が試験的に導入されることがファンの間で話題となっている。ここ数年、AKB48グループのコンサートにおいてはカメラ席のチケットが販売されるケースがあったが、劇場公演への適用は初めてのこと。カメラ席では「カメコ」と呼ばれるカメラ好きのファンが、プロ並みの写真を撮影することで知られている。そこで今回は、そんな女性アイドルをめぐるカメコの歴史と現状について考察してみたい。

 そもそも「カメコ」とは「カメラ小僧」の略称で、特にアイドルシーンに限って使われる言葉ではなかった。アイドル現場においては1980年代に全盛期を迎えたものの、トラブルの原因となったこともありライブの現場においては撮影禁止が浸透。比較的規制が緩い小規模なイベント、あるいはグラビアアイドルやコスプレイヤーなどの現場でその文化は続いていった。

 流れが変わってきたのは「アイドル戦国時代」と言われた2010年以降だろう。大手事務所所属のアイドルのライブでは依然として撮影禁止となることが大半だったが、この頃にはいわゆる地下アイドルが急増。シーンの盛り上がりとともにアイドル現場の母数が飛躍的に増えたことで、カメコが活動する場も増えていった。また同時期にスマートフォンの普及により誰でも高画質の写真を撮影し、SNSで発信できるようになったのは大きい。その一方で専門的な機材を駆使して撮影するカメコが減ったわけではなく、スマホでは撮れないクオリティの写真を撮ることがカメコの腕の見せどころでもあった。

 あくまでもプロのカメラマンではないわけだが、カメコによって人生が大きく変わった人物もいる。それは、当時福岡を拠点に活動していたアイドルグループ・Rev. from DVLのメンバーだった橋本環奈である。2013年、イベント出演時にファンによって撮影された写真が「奇跡の1枚」として話題になり、「1000年に1人の逸材」と称された彼女は一気に全国区の知名度を得た。今や2年連続で『NHK紅白歌合戦』の司会に抜擢されるほどの活躍ぶりだが、その飛躍のきっかけはカメコだったのである。

 一方で、かつては規制されることがほとんどだったメジャーアイドルでも徐々にカメコを容認する動きが見られるようになった。そのきっかけの1つとして「会いに行くアイドル」をコンセプトに掲げて2014年に始動したAKB48 チーム8が挙げられる。彼女たちは当初からチーム単独で活動する機会が多く、47都道府県から1人ずつメンバーが選抜されているという特色から地方の比較的小規模なイベントに出演することもしばしばあった。そこでは撮影が可能なケースも多かったため、カメコの活動の場にもなっていったのだ。また東京都代表メンバーだった小栗有以は、2015年のイベント出演時に撮影された写真が反響を呼び「2万年に1人の美少女」の異名で話題となった。今ではグループきってのエースとして知られているが、当初のブレイクの影にはカメコの存在があったのである。

 2017年結成の=LOVEは、活動初期からカメコを歓迎した。SNSにアップされた写真はメンバーやプロデューサーの指原莉乃がチェックし、自身のアカウントに掲載することも。「ようこそ!イコラブ沼」という楽曲には〈カメコのみんなも声を出して!〉といったフレーズまで登場する。オフィシャルファンクラブの6周年記念企画ではカメコ写真によるフォトギャラリーが作られるなど、ファンが撮影したものが公式にピックアップされるという新たな潮流を生み出した。この施策は、いい写真を撮りたい、メンバーに見てもらいたい、現場に行きたいといったファンのモチベーションにも繋がっている。またこういった写真は見る側も「プロではなくファンが撮った」というストーリー込みで楽しんでいるように思う。前述の橋本環奈のブレイクについても、この点が大きかったはずだ。

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