fhána、メジャーデビュー10周年記念インタビュー コロナ禍、メンバー脱退、事務所独立を経て迎える新しい旅路

fhána、10周年記念インタビュー

 fhánaが2023年にメジャーデビュー10周年を迎え、10月7日にはLINE CUBE SHIBUYAにて『fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”』を開催する。

 結成から現在に至るまで数多くのアニメ作品のタイアップ曲を手掛け、バンドとしての地位を確固たるものにしてきたfhána。2023年に入ってからはバンドに様々な環境の変化が訪れるなど、全てが順風満帆というわけではなかった。そんな苦境を幾度も乗り越えてきたfhánaにとっての新しい旅路の始まりが、今回の10周年ライブになるという。

 本稿では、10周年ライブの入場者に配布されるパンフレットの一部を掲載。ここからもメンバーの10年間の歩み、ふぁなみりー(fhánaファン)への愛情、10周年ライブへの覚悟の一端が感じられるだろう。なお、パンフレットの完全版には、ベストアルバム『There Is The Light』に新録された「True End(feat.towana)」の制作秘話、メンバーが思う歴代ベストライブ、ふぁなみりーへの濃密な愛のメッセージなど、1万字に及ぶテキストを掲載。ぜひ当日に会場へ足を運んで、メンバーからの言葉を全て受け取ってほしい。(編集部)

「灯を絶やさぬように何とか頑張ってきた」(佐藤)

2023.10.07(Sat) fhana 10th Anniversary SPECIAL LIVE "There Is The Light" Teaser

ーーfhánaは8月でメジャーデビューから10周年を迎えました。様々なことがあった10年間だと思いますが、まずはfhánaというバンド・共同体がこの10年でどのように変わったのかを聞きたいです。

佐藤純一(以下、佐藤):5周年の時に受けたインタビューでは「実存をめぐる戦い」なんて言っていましたが、10周年の今は内面よりもなるべく全体を俯瞰して考えたり、見るようになってきたと思います。よくよく考えれば、5年前の2018〜2019年の時点では、まだ世界は平和だったから、そういう考えでいられたのかもしれない。その後の2020年に新型コロナウイルスが世界的に流行して、ロシア・ウクライナ戦争があって、一気に現実が牙を剥いてきたし、そこに合わせて僕の考えも実存がどうこうではなく、生き残ることを考える方向にシフトしていった気がします。

towana:私は……デビュー当時って、自分が何もしなくてもすべてが自動的に進んでいくような感覚だったんです。1クールごとにタイアップをいただいて、シングルを出しまくって、アルバムを出したらツアーをやって、またその間にもシングルを作って……ということをしばらく必死にやっていましたから。今はそことは少し違う感覚なんです。たとえば、結婚する人たちは最初から離婚することなんて考えないじゃないですか。でも、現実は結構な割合で離婚したりするわけで。結婚ですらそうなんだから、バンドのような共同体だってどうなるかわからない。10年活動しているなかでレコード会社が変わって、事務所からも独立して。なにも変わらずこのままやっていけると思っていたけど、そんなことは一つとしてなかったと実感したことがすごく大きくて。今はこの3人で続けていくためにどういう活動をすべきか、どういう風に見せていくべきかを能動的に考えるようになりました。

kevin mitsunaga(以下、kevin):僕はメジャーデビュー当時と今を比べると、見た目もパフォーマンスも全然違うんですよね(笑)。色んな人のアドバイスで内面も外見も変わることができて、今ではライブで踊ったりラップをするようになったりして。様々な表現方法を獲得するなかで「fhánaのライブがすごく楽しい」と言ってもらえるなんて、最初のころからすれば想像もつかなかったです。元々は変化を嫌うタイプなんですけど、良いメンバーと良い関係者に恵まれて、今となっては変化した自分がすごく好きになっています。それに自分自身でビックリしているのが、この10年間の大きな変化ですね。

ーーこうして話を聞いていても思うのですが、10年でガラリとみなさんの価値観が変わりましたね。

towana:10年前は今よりも世間知らずで、すごくお子様だったなと。私はどうしても歌を歌いたくて、ただ有名になりたくてデビューしたわけではなくて、なんとなく出会った人に誘われるがまま歌っていたらメジャーデビューできたという、すごく幸運な流れで活動を始められたタイプですから。コロナ禍を経験したことで、自分がどれだけラッキーだったのかをますます実感したわけです。

佐藤:初期の話をすると、僕はレコーディングでスタジオに入るたびに「これが最後かもしれないな」と毎回思っていました。なんとか次があった、意外とまた次もあった、という感じで続いていった最初の5年があって。タイアップが短い間隔でどんどん続いて、作らなきゃいけないみたいな時期が落ち着いた2018〜2019年くらいに「どうやったら恒久的に活動を続けていけるか」を考えるようになって、そこから「タイアップありきのアニソンアーティスト」という活動サイクルをどうにかしなきゃいけないと思い始めたんですよね。

ーー3rdアルバム『World Atlas』(2018年)あたりのインタビューでそういった話を聞くことも多かった記憶があります。

佐藤:だから『Sound Of Scene』という自主イベントを始めてみたり、タイアップ以外の楽曲もリリースしていこうとシフトし始めたんですが、そこにコロナが直撃してしまった。そんな辛い環境下でも、その灯を絶やさぬように何とか頑張ってきた、という感じですね。ほかのインタビューでも話したような気がするんですが、飛行機はたとえ低空飛行になっても着陸しないで飛び続けていれば何かの拍子に新しい風を受けてふわりと高く上がれることもある。ただ、一旦休憩しようと地上に着陸してしまったら、もう一度飛び立つのは相当難しい。だからこそ、そうならないように踏ん張ってきたんです。

ーー今回のメジャーデビュー10周年ベストアルバム『There Is The Light』は「ライブのセットリストを組むように選曲した」そうですが、それは10月7日にLINE CUBE SHIBUYAで開催するライブ『fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE "There Is The Light"』を見越してのことですか?

佐藤:完全になぞるわけではないですが、この作品がベースにはなると思います。10周年ライブありきというよりは、メジャーデビュー5周年ベストアルバムの『STORIES』が時系列順のトラックリストだったので、そこと対比してコンセプトを決めたというのが正しいですね。収録曲はCDの収録時間の限界ギリギリに挑戦していて、Disc1・2の振り分けもそのあたりを踏まえて選曲して、流れもしっかり整えたうえでぎっしり詰まった2枚組になっています。

ーー10周年記念ライブを開催するLINE CUBE SHIBUYAは、キャパシティ的にもfhánaとしてはひとつの大きな決断だということを、佐藤さんのX(旧Twitter)で拝見しました。

佐藤:安定しているときにチャレンジするのではなくて、メンバー卒業、レーベル移籍、事務所独立という過渡期に大きい会場でやるというのは、結構怖いことでもあるんですよね。しかも自分の会社がメインで開催する以上、チケットの売れ行きが芳しくなかったときの経済的ダメージはダイレクトにくるので、必ず成功させなければならない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる