浪漫革命、HOME、細井徳太郎、SUKEROQUE、レトロリロン……注目インディーズアーティストによる夏を彩る新曲たち

 夏フェスシーズン真っ只中。多くの音楽ファンがフェス会場に足を運んでいる季節だが、その裏で、夏を彩る新曲たちが毎週続々とリリースされている。今回は、8月にリリースされたものの中から、飛躍に期待したいインディーズアーティスト5組の新曲を紹介。気になる楽曲があれば、ぜひアーティストのこれからの動向もチェックしてみてほしい。(編集部)

浪漫革命「うわついた気持ち feat. 鎮座DOPENESS」

 京都出身の5人組バンド 浪漫革命。ソウルやファンクを下地に、歌謡曲やロックのエッセンスも交えつつ、感情の移ろいをそのまま楽曲展開に投影したような秀逸なポップスは、いつも最高である。これまでは代表曲「あんなつぁ」のように、ストレートに夏の情景を描くことの多かった浪漫革命だが、最新曲「うわついた気持ち」では、どこか後悔やわだかまりの残ってしまった、夏の終わりの夕暮れを歌う。展開も持ち前のドラマティックさを抑えて“平熱”であることを感じさせるが、それゆえに生活の中に滲むやるせなさもワクワクも、素直に伝えているのが新鮮なところ。後半にかけて、鎮座DOPENESSのフロウがポジティブなエネルギーを芽生えさせているのも心地いい。時には全員で歌ったりラップしたりもする浪漫革命の自由な感性が、いよいよ“浪漫革命という枠”すらも飛び越え始めた。単にグッドミュージックの一言では片づけられない豊かさと切実さを鳴らす、素晴らしい1曲だ。

浪漫革命『うわついた気持ち feat.鎮座DOPENESS』Official MV

HOME「Lucy」

 DYGLをはじめ、8月中旬現在で1000万回以上も再生されているSugLawd Familiar, CHICO CARLITO, Awich「LONGINESS REMIX」のMVなどを手がけるKohei Yonaha (South Nerd Film)が監督したHOME「Lucy」のMVを観て、鮮烈な衝撃を受けた。HOMEは2020年に沖縄で結成された3人組バンド。The CureやThe Smithsといった80年代UKのゴス、ニューウェーブ的な煌めく音像とポップなメロディを聴かせる一方、sei.(Vo)の滑らかでスウィートな歌声と、スキンヘッドのビジュアルのギャップにまで驚かされた。それこそDYGLメンバーが以前活動していたYkiki Beatを彷彿とさせつつ、ライブ映像を観る限りでは、ヒップホップやブレイクビーツ的な楽曲にも期待できそう。The 1975が約10年前、当時の主流ではなかった80’s的な音像で一気にメインストリームを駆け上がっていったが、ブルーな日常をポップネスで疾走していくニューウェーブは今の時代にこそ強く刺さるかもしれない。

HOME - Lucy (Official Music Video)

細井徳太郎「定刻が過ぎて」

 SMTKのメンバーであり、ジャズを出自としながらジャンルレスなフィールドで活躍するギタリスト 細井徳太郎。「定刻が過ぎて」は、石若駿や君島大空、マーティ・ホロベックらも参加している10月リリースの1stアルバム『魚_ 魚』から先行配信された1曲で、約1分近くあるレイドバックしたイントロを過ぎると、展開の軸を担うのはメロウな歌である。ところどころに垣間見えるジャズ的な音使いやフレーズが音楽的造詣の深さを浮き彫りにしているものの、“ギタリストのソロ作”という肩書きとは真逆のポップナンバーに仕上がっていることが肝。まるで“時間”というキャンバスの上に、生活のリアルを落としていくような筆のタッチで、様々なことが見え過ぎる現実と、ちっぽけな自分の生活の狭間に立っているような葛藤も感じられる。〈さらざらのノイズが聞こえたら、歌えばいいんだよ〉という核心を突くようなフレーズも含め、味わい深い詩情こそ、この曲の魅力だろう。

細井徳太郎「定刻が過ぎて」

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