Wienners、オーディエンスと共に到達した喜怒哀楽の向こう側 KOZO脱退による現体制ラストライブを観て
8月3日にWiennersのワンマンライブ『CULT POP WORLD』がZepp Shinjuku (TOKYO)で開催された。この公演は特別な意味を持っている。なぜならドラマーのKOZOが今回のライブで脱退するからだ。しかしライブの内容からは切なさも悲しさも感じなかった。良い意味でいつも通り、楽しさで溢れたものだった。
いつも以上にド派手な演出のライブを披露したWienners。ステージ後方の大型ビジョンにオープニング映像として地球や宇宙の壮大な映像が流れ、メンバーが登場すると代表曲「蒼天ディライト」からライブはスタートした。1曲目からうねるように盛り上がるフロアを見て、玉屋2060%(Vo/Gt)は「超絶景!」と嬉しそうに叫ぶ。「GOD SAVE THE MUSIC」ではアニメ映像が流れる中でパフォーマンスをして、会場の熱気を上昇させる。演奏と演出の相乗効果で、観客も興奮しているように見えた。
ライブの盛り上がりを作り出す一番の要因はバンドが持つ熱量だ。「俺たちだけじゃない! お前も主役だぜ!」という玉屋の煽りから「Cult pop suicide」へとなだれ込むと、ダイブやモッシュが発生するほどの盛り上がりに。「ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ」ではレーザー照明が飛び交い、フロア天井のミラーボールが回ったりと、映像以外の演出でも魅せる。「おおるないとじゃっぷせっしょん」「恋のバングラビート」とダンスナンバーが続くと、今度はそこがクラブであるかのように観客は踊った。Wiennersは様々な音楽で観客の心を掴むのだ。そんな会場を見て「Wienners、めちゃくちゃZepp Shinjukuが似合ってない?」と自画自賛する玉屋。しかしすぐに「味方だけの場所でしか強気なことを言えない。アウェイなフェスにも来て助けて」と言って笑わせる。
メンバーのMCによって和やかな空気が流れたが、盛大な手拍子が鳴り響いた「Justice 4」で演奏を再開し、玉屋とアサミサエ(Vo/Key)がハンドマイクになった「ASTRO BOY (Black Hole ver.)」が続くと、フロアは再び熱気に満ちていく。玉屋はフロアに飛び込み観客の上で歌い、メンバーのテンションも最高潮に。しかし玉屋の弾き語りから始まった「午前6時」で、会場の空気が変わった。優しく語りかけるような歌声と繊細な演奏を、観客は静かに聴き入る。彼らの音楽には、熱量だけでなく優しさも込められているのだ。コロナ禍初期、メンバーがリモートで作曲する様子をTwitter(現:X)にてリアルタイムで発信したことがあった。ファンからリプライでアイデアを募って作曲された「カフノリカ」と「Yahman」は、当時のツイートのやり取りをスクリーンに映し出しながら演奏した。まだコロナ禍が終わったわけではない。しかし、ライブで声出しができるという事実は存在する。この2曲の演奏は、少しずつだが確実にコロナ禍以前の状況に回復しつつあることを実感できた瞬間だった。