BAND-MAIDはいかにして世界で戦えるバンド像を確立したのか 2枚のベストアルバムで触れる10年の進化と洗練の過程
月日の流れはあらゆるものを変えていく。今年、BAND-MAIDは結成10周年を迎えている。彼女たちが現在と同じ5人編成で初めてステージに立ったのは、2013年8月のことだった。メイド服風の衣装に身を包み、ライブを「お給仕」、ファンを「ご主人様」「お嬢様」と呼ぶこのガールズバンドと出会った当初、おそらくは多くの人たちが、コンセプト先行型の企画モノ的な存在として受け止めたことだろう。誤解を恐れずに言えば、短命に終わることを想定していた向きも少なくなかったはずだ。しかし2023年の現在、彼女たちは音楽的にもたしかな進化を続けながら、その名を世界に広めている。
2014年初頭に登場した最初の作品は『MAID IN JAPAN』と題されていたが、このタイトルが日本製であることを意味する“Made in Japan”とリンクするものであることは疑う余地もない。そして実際、BAND-MAIDはメイド喫茶やアイドル歌謡といった日本ならではの文化を下地としながら誕生したといえる。ただ、そこで音楽性にキュートなビジュアルとのギャップを求めようとした結果、のちに「Thrill」という楽曲との出会いを契機としながらハードでアグレッシヴな方向へと進むようになったことで、BAND-MAIDとしての独自性が築かれていくことになった。つまり、結成から今日までの10年間は、このバンドのアイデンティティが確立され、それが洗練されていく過程だったと言える。
また、彼女たちはごく早い段階から海外での活動にも積極的に取り組み、2016年3月の初渡米を皮切りに、欧米各国をはじめとするさまざまな国や地域での活動をコンスタントに重ねてきた。2018年2月には『WORLD DOMINATION』、2019年末には「CONQUEROR」と銘打たれたアルバムが発表されているが、そうした各作品の表題が示す通り、まさに世界支配を目指し、さまざまなテリトリーを征服していくかのようなその動きは、時間経過と正比例の関係でエスカレートし続けてきた。