赤西仁、ジャニーズ退所から10年で切り開いた独自の道 「GOOD TIME」から変わらない創作スタンスを読み解く
7月1、2日に渡って開催した赤西仁の10周年ライブ『JIN AKANISHI 10th Anniversary Live 2023』の熱気をそのままに、7月4日にはZeep Divercity (TOKYO)にて『JIN AKANISHI "JINDEPENDENCEDAY" 2023』を開催、そして8月31日からは全国ツアーが予定されているなど、独立から10周年を迎え、さらにギアをあげるようにして精力的にライブ活動を続ける赤西仁。本稿では現在YouTubeに公開されているMVをもとに、赤西が手がけてきた音楽に注目してみたい。
ジャニーズ事務所を退所し、再始動を発表した2014年。9月17日に配信されたのが「Good Time」。2023年7月24日現在までに動画再生数265万回を突破している。見晴らしの良い高層オフィスで、スーツ姿の赤西。次々と差し出される書類にひたすらスタンプを押していく。時々あくびをしながら何かを企んでいる様子。洋服やハット、腕時計などを選び、クールに着こなしたスーツを惜しげもなく脱ぎ、ストライプシャツをさらりと羽織ってオフィスを抜け出す。赤のオープンカーで向かった先は海が見える街。ビル群と海、どこまでも続く海岸線ーー視聴者を開放感溢れる世界に連れ出してくれる。ラストにはハッとさせられるエッセンスを盛り込んだ遊び心も楽しい。
遊び心といえば2016年9月9日に山田孝之とのユニット・JINTAKA名義でMVが公開された「Choo Choo SHITAIN」。映像が独創的かつおしゃれで、大真面目に遊びながら楽曲を作るような、彼らのノリやユニークさが感じられる。一度耳にしただけでもクセになる中毒性があり、両者の強い個性と赤西の俳優としてのキャリアがあったからこそ実現できたコラボと言えるだろう。
赤西の手がける楽曲にはアッパーチューンの印象が強いかもしれないが、愛をテーマにした楽曲も多い。幼い子どもの笑い声から始まる「Let Me Talk To U」(2015年)。MVは思いのほかシンプルで、深い愛情を感じて心が潤っていくように、多数の花を敷き詰めて作られた花の仮面がモノクロから少しずつ色づいていく。英語と日本語をミックスした歌詞に綴られているのはストレートな愛。〈つまずいてもすぐ 手をつかめるように 両手はからっぽにしておくよ〉と、大切な人に向けた愛に溢れるメッセージと、甘さを含んだ歌声に胸をつかまれる。
「Fill Me Up」は 2017年12月リリースのアルバム『Blessèd』収録曲。MVは色鮮やかかつトリッキーで、視聴者の目を釘付けにする独特の世界観だ。歌声のバリエーションの多さに驚かされる。そして、軽快なリズムとクラップから始まる「THANK YOU」もまた、豊かな声色にはっとさせられる。本楽曲は2019年5月8日にMVが公開され、同年5月にリリースのアルバム『THANK YOU』の表題曲だ。MVでは、東京・渋谷の街中でひとりの男性が新聞を広げながらゆるくリズムを取る。少しずつ加速するようにして、子どもから大人まで、スーパーマーケットや厨房、コインランドリーと場面が変わり、リズミカルに歌い、踊る。中盤からはストーリー性が増し、銭湯で踊っていた屈強な男性が番頭に叱られ、逃げるようにして走る。途中から赤西が登場し、メガホンを持って応援しながら伴走。コミカルな映像作品ではあるものの、驚かされたのが赤西の歌声だ。これまでのボーカルにはない、少々ざらりとした渋さが混じった歌声を響かせる。音の高低もブレずに、抑揚のある軽快な歌唱が気持ちいい。