SUGARLUNG、2人体制ならではの柔軟さがバンドの強みに 2ndミニアルバム『Desert or Ocean』やライブへの思いを語る

SUGARLUNG、2人体制ならではの強み

 エザキマサタカ(Vo/Ba)、イシカワケンスケ(Gt/Cho)によるSUGARLUNG。2017年に結成され、翌年『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』に出演。コロナ禍においても精力的に活動を継続し、今年3月に初めてのワンマンライブを成功させたロックユニットだ。スタジアム級のスケールを感じさせる楽曲、広い音域と豊かな表現力を兼ね備えたボーカル、多彩なフレーズと爆発的ダイナミズムを共存させたギター。SUGARLUNGの魅力は、2ndミニアルバム『Desert or Ocean』にも強く反映されている。結成の経緯、これまでの活動、『Desert or Ocean』の制作などについて、エザキとイシカワに聞いた。(森朋之)

2人体制で柔軟になったバンドに対する考え方

SUGARLUNG インタビュー写真(写真=梁瀬玉実)

——SUGARLUNGは2017年に活動スタート。エザキさん、イシカワさんが出会ったきっかけは?

エザキ:僕は広島出身なんですけど、10代の頃から地元でバンド活動をしていて。上京してからは作曲がメインで、バンドをやってなかったんですね。イシカワは前身バンドが解散して、ボーカルをTwitterで募集してたんですよ。僕はそのことを知らなかったんだけど、なぜか知人が僕の資料を送っていて。で、僕のほうに連絡がきて、下北沢で会ったのが最初ですね。

イシカワ:そのときは僕と前のバンドのドラムと一緒に会いました。ボーカルとベースを募集してたんだけど、(エザキは)ベースが弾けたから、とりあえずスタジオに入ろうということになって。最初から結構しっくり来たんですよね。

エザキ:僕はピンボーカルのつもりだったから、「え、ベースボーカル?」って感じでしたけど(笑)、「これでいいじゃん」って言われて。

——作曲家として活動しつつも、どこかに“歌いたい”という気持ちがあった?

エザキ:そうですね。SNSで弾き語りカバー動画を上げたりしていたし、自分のなかで歌いたいという気持ちは強かったと思います。(イシカワとの出会いは)巡り会いというか、「この機会を逃したら、次はいつだろう?」と思ったし、バンドをしたいという気持ちもあったので。自分の思いとタイミングが重なった瞬間でしたね。

——イシカワさんも、エザキさんとの出会いは「この人だ」みたいな感じだったんですか?

イシカワ:そうですね。送ってもらった資料には、広島でやっていたラウドっぽいバンド時代の映像から弾き語りまで入っていて。振り幅がすごく広いし、めちゃくちゃ面白いなと思いましたね。

エザキ:好きなジャンルも結構似てたんですよ。ロックサウンドもそうだし、イシカワも歌が魅力的なバンドが好きで。

イシカワ:最初のスタジオではNirvanaのカバーもやりましたね。

エザキ:イシカワがいきなり「Smells Like Teen Spirit」のリフを弾き始めて。

SUGARLUNG エザキマサタカ インタビュー写真(写真=梁瀬玉実)
エザキマサタカ

——お二人の音楽的なルーツはどんな感じなんですか?

エザキ:母がジャニーズ好きで、家や車でずっとKinKi Kidsの曲が流れてたんですよ。小さい頃から堂本剛さんの歌にすごく惹かれていて、カッコいいなと思ってましたね。歌うことに興味を持ったのは、広島の街で観た路上ミュージシャンがきっかけでした。ずっと立ち止まって聴いていたら、「おいでよ。歌いなよ」と言われて、ゆずやコブクロを一緒に歌ったんです。止まってくれる人もいて、「歌って楽しいな」と。すぐにアコギを買って、路上ライブを始めました。バンドへの興味は、漫画の『BECK』の影響が大きいです。兄が全巻持ってて、たまたま読んでみたら「音がないのに、どうしてこんなに伝わってくるんだろう?」と思って。漫画をきっかけに知ったRage Against the Machineをずっと聴いてましたね。

イシカワ:僕は父がThe Beatlesのコピーバンドのベースをやってて。物心ついたときからずっとThe Beatlesがかかっている家庭だったんですよ。自分もベースをやりたいと思っていたんですけど、父に「まだ早い。アコギからやれ」って言われて(笑)、ギターを弾き始めました。

——ヘビィなロックも聴いていた?

イシカワ:そうですね。サバプロ(Survive Said The Prophet)とか、海外だとBring Me the Horizonとか。

エザキ:よく聴いてたね。

——結成当初の活動はどんな感じだったんですか?

エザキ:自分が作っていたなかで使える曲は3曲くらいだったので、まずはそれを3人で合わせて。初ライブが2017年7月だったんですけど、先輩のバンドのオープニングアクトで3曲だけやらせてもらいました。

イシカワ:自分たち的には手ごたえがありましたね(笑)。

エザキ:楽しかったよね(笑)。イシカワの前身バンドのお客さんから「次はこういう感じなんだね」という反応があったり。

イシカワ:前のバンドはエレクトロの要素が入っているギターロックだったんですよ。

エザキ:すごく楽しかったんだけど、それだけじゃダメだなって徐々に思ってきて。

イシカワ:特に大変だったのは、最初のドラマーが抜けてからですね。

エザキ:うん。ドラマーが抜けたのは2019年なんですけど、2人になってから、これから自分たちはどういう活動をしていくのか、どんな音楽性を示していくのかをじっくり考えて。悩んだ時期でもあったんですけど、2人でずっと話し合うなかで、少しずつ考え方が柔軟になったんですよね。「ロックバンドはこうじゃないといけない」というところから抜け出すきっかけになったというか。

SUGARLUNG イシカワケンスケ インタビュー写真(写真=梁瀬玉実)
イシカワケンスケ

イシカワ:うん。以前は考え方が狭かったというか、「ロックバンドはこうあるべき」という感じだったんですよ。2人で活動するようになって、そういう縛りがなくなって。極論「バンドサウンドじゃなくてもいいよね」というくらい、音楽的にもいろんなことを試しました。アコースティックな曲だったり、ピアノと歌だけの曲だったり。

エザキ:いろんなことを試したからこそ、「この形態が一番しっくりくる」ということに気づけたので。「ベースボーカルとギタリストの2人組ロックバンド」という形を全面に押し出せたことも大きかったですね。

——楽曲の制作方法にも変化があった?

エザキ:そうですね。前はスタジオに入ってセッションみたいな形で作ってたんですよ。2018年にリリースした『whatever(  )』というアルバムは、ほとんどの曲をセッションしながらアレンジを決めていて。

イシカワ:プリプロもほぼやってないですね。

エザキ:そうやって衝動で作るのも好きなんだけど、2人体制になってからは(データをやり取りしながら)それぞれの家でじっくり考えながら制作するようになったんですよね。アレンジやサウンドを冷静に確認して、「この部分はこうしたらいいんじゃないか?」ということにも時間をかけるようになって。

——当然、音楽性の幅も広がるし、クオリティも上がりますよね。

エザキ:そうですね。あと、ちゃんと考えて活動しないと、生き残れないと思うようになって。コロナ禍になって、いろんなバンドが解散したり、メンバーが脱退することが続くなかで、「自分たちは絶対に続けていこう」と強く思っていて。そのためにはどうしたらいいのかも、ずっと考えながら活動してました。たとえばTikTokをがんばったのもそう。実際、TikTokで知ってくれた人がバンドを応援してくれている現状もあるので。ピンチはチャンスじゃないですけど、何事もプラスに捉えるのは大事だなと。

——ライブに関して言えば、2022年の春に『JAPAN JAM 2022』に出演。SUGARLUNGにとっては、コロナ後、最初の対面ライブになりました。

エザキ:2018年に『RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』で優勝して、結成1年足らずで『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出させてもらって。2度目のフェスが去年の『JAPAN JAM』だったんですけど、ステージで歌うこと自体が久しぶりだったし、緊張感もありました。出番が終わった後、すぐにエゴサしたんですけど(笑)、「今のバンド、何?!」みたいな声がけっこうあって。ロック好きの人たちに届いたことがめちゃくちゃ嬉しかったし、自分たちがやってきたことは間違いじゃなかったと再確認できましたね。

——そして今年3月には、初のワンマンライブを開催。“ようやく”という感じですか?

エザキ:そうですね。今までの歩みもそうだし、いろんな葛藤を含め、すべてを凝縮したようなライブになったかなと。ワンマンライブを予定していた頃にコロナが来て、ライブがまったくできなくなって。さっき言ったように活動のやり方も変わって……3月のワンマンはすごく楽しかったし、こみ上げてくるものもありました。あと、課題もたくさん見つかったんですよ。歌のことで言うと、2時間以上のステージは初めての経験でした。2時間以上、自分のボーカルを継続させるためには歌い方を変えないといけないな、と。イヤモニを使ってみたり、今もいろいろ試しているんですよ。まったく満足してない状態があるのが幸せだなって思います。

イシカワ:ワンマンはバンドとして一つの目標だったし、これまでの積み重ねの集大成の場所だったのかなと。「やってきてよかった」「諦めなくてよかった」と思ったし、自分たちの居場所を大事に守ってくれたお客さんたちと対面できて、本当に感動しました。忘れられない1日になりましたね。

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