堂本剛、スガ シカオから米津玄師、Vaundyまで……ファンクを受け継ぐJ-POPアーティスト 邦楽シーンに根づいた過程も辿る

 5月13日の夜のこと。一つの興味深いニュースが、SNSを通じて拡散された。その日、埼玉県秩父市で開催された『Love Supreme Jazz Festival 2023』で演奏したジョージ・クリントン & Parliament Funkadelicのステージに登場した堂本剛がギターソロを披露し、大喝采を浴びたというニュースだ。予告なしのため、彼目当てで訪れたファンはいなかったはずだが、それを目撃したジョージ・クリントンのファンやジャズファンなどがこぞって賛辞を寄せ、温かいコメントでSNSのタイムラインが賑わった。ジャンルレスな音楽の包容力と連帯感を感じさせる、とてもピースフルなニュースだった。

 そんな出来事を受け、リアルサウンド編集部からのオファーで“Pファンクを受け継ぐJ-POPアーティスト”という視点で書いてみようと思う。そもそもPファンクとは、御年81歳であるファンク界のレジェンド、ジョージ・クリントンが率いる音楽集団もしくは音楽そのもので、2つのグループ、ParliamentとFunkadelicの名前を合わせたもの(諸説あり)。そしてファンクは1960年代にジェームス・ブラウンが生み出した、大まかに言えば全楽器がリズムのような統率的で強靭な16ビートのサウンドが特徴の、アフリカン・アメリカンのリズム感覚に根差した音楽。数年遅れてジョージ・クリントンとSly & The Family Stoneがそれを発展させ、ニューオーリンズファンクという別の水脈もありつつ、ディスコへの流用を経て1980年代にはプリンスが登場。ヒップホップの最重要サンプリングソースとなる一方で、ミクスチャーロックへも多大な影響を与えた1990年代を経て、今やファンクはEDMやR&Bやポップスの中へと自然に溶け込んでいる。

Parliament「Flash Light」

 なかでもジョージ・クリントンが生み出したPファンクは、他のファンクと比べてずば抜けてコンセプチュアルかつ衒学的で、宇宙船に乗ってファンクを布教しにきたエイリアンを演じてみたり、やることなすことエンターテインメント性が過剰。そこだけにスポットを当てた“Pファンクを受け継ぐJ-POPアーティスト”は過去も現在も正直少ない気がするので、“ファンクに影響を受けたJ-POPアーティスト”へと視野を広げてみる。ファンクは現代のさまざまな音楽に溶け込んでいるからこそ、ミュージシャンやリスナーが意識せずとも、“Pファンクを受け継ぐJ-POPアーティスト”は直接的/間接的に多数存在するはずだ。

 1970年代まで遡ると、ファンクの音楽性を研究分析した細野晴臣や大瀧詠一らの優れた仕事がまず思い浮かぶ。それはおそらく同時多発的に発生したもので、のちにシティポップと呼ばれるサウンドの中にも影響を聴き取ることができる。続く1980年代にファンクをオーバーグラウンドで積極的にアピールした存在としては、久保田利伸や角松敏生らの名前が上がる。ファンクを標榜しつつ、ポップスの衣をまぶしたヒット曲を生んだパイオニアたちだ。初期の米米CLUBもその一つで、Pファンクのエンターテインメント性を受け継ぐという意味では、もしかすると昔も今も唯一の存在かもしれない。一方、アンダーグラウンドにはJAGATARAを始め、ファンクのエネルギーを取り込んだバンドがいた。話を一気に現代へ進めよう。

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