SEKAI NO OWARI、RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN……スタジアム規模のバンドがなぜライブハウスツアー?
おそらく、RADWIMPSが綴った「ライブ体験」という言葉は、こうしたライブハウスだからこそのスタンディングを指差したものであるように思う。
大規模会場とライブハウスを比較すると、演者と観客間の物理的距離が変わることの意味合いも大きい。特に、2023年は、ライブシーンにおける変化のひとつとして、多くのバンドが「声出し」を解禁した。そうなると、ライブの演出も声出しを踏まえたものになるわけだが、ライブハウスは演者と観客の距離が近いので、そのコミュニケーションがよりダイレクトなものになる。
用意したものをとにかくかっこく魅せる、という点では演出なども豪華にできる大規模ライブに分があるが、双方のコミュニケーションを大切にする、という点であれば、音ズレも少なく、モニターなしでも姿を視認できるライブハウスに分があるわけだ。特にBUMP OF CHICKEN、SEKAI NO OWARI、RADWIMPSは、それぞれ何万もの観客を相手にライブを行なってきた。そんな立ち位置のバンドだからこそ、コロナ禍が緩和された今、ファンのひとり一人とのコミュニケーションの”濃度”を優先したようにも感じる。
加えて、ライブハウスシーンを活性化させたい、という視点もあったように感じる。RADWIMPSの言葉を借りれば、ライブハウスでのライブは「音楽の原体験の場」であるとのことだった。これは、言葉にしている/していないに問わず、どのバンドも感じていることだと思う。ライブハウスでの音楽の楽しみ方を提示し、音楽カルチャーの一端を活性化させるという効果も、少なからず今回のようなライブハウスツアーに盛り込まれているように思うのだ。
きっと、いくつかの意図を含みながら、どのバンドもライブハウスツアーを組んだのだと思う。そういう点でも、今回のライブはより尊いものになるのではないか。そんなことを思うのである。
※1 https://radwimps.jp/backtothelivehouse/
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