坂本龍一はラップとどのように向き合ってきたか 荏開津広氏に聞く“音楽”とは異なる捉え方

 では坂本はラップとどのように向き合ってきたのだろうか。荏開津氏は「僕は音楽を社会や政治のメッセージの道具にしたくない」といった坂本の言葉に触れながら、「坂本さんはラップを明確に政治的、かつグローバルなものだと考えていたのではないか、だからいわゆる音楽とは少し違って捉えていたのではないか」と話す。

「例えば『Steppin' Into Asia』はタイ語のラップで、“アジアの中に踏み込む”というタイトルです。また、極めて政治的と言える反原発プロジェクト・STOP ROKKASHOではラッパーのShing02さんをフィーチャーしたり、韓国のラッパー・MC Sniperをフィーチャーした韓国語詞の反戦歌『undercooled』などもあります。アメリカでのヒップホップ/ラップも元々公民権運動などといった、政治と切り離せないものです。一方、サウンド面ではヒップホップ的な音楽のあり方は意識していたと思いますが、常にそうした要素を取り入れていたわけではありません。坂本さんはその初期ではテクノロジーを使って表現していくことに重きをおいた時期があり、そのなかでもポップだったのはYMOですよね。日本ではラッパーのZeebraさんが追悼のツイートをしており、私が彼に取材した際にはYMOについて『テクノロジーを使った音楽とルックスが子供心にかっこよく見えていた』と話していました。テクノロジーで自分の未来を変えていくーーそうした考え方は極めてヒップホップ的だと思います」

 坂本はラップを歌以外で言葉を伝える手法として様々な楽曲の中で効果的に用いていたと言える。様々な名曲が連日メディアで取り上げられているが、ラップをフィーチャーした楽曲にも一度耳を傾けてほしい。

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