HOWL BE QUIET、13年間のバンド活動に幕 たくさんの愛に包まれた幸福なラストライブ

HOWL BE QUIETラストライブレポ

 HOWL BE QUIETが2023年3月22日、ラストツアー『Evergreen』の最終公演――つまり、彼らにとって最後のライブーーを東京・恵比寿LIQUIDROOMで開催した。

 2010年結成、都内のライブハウスで活動をスタートさせたHOWL BE QUIET。竹縄航太(Vo/Pf/Gt)、黒木健志(Gt)、岩野亨(Dr)、そして2018年に加入した松本拓郎(Ba)の4人からなるピアノロックバンドだ。

 2016年にシングル『MONSTER WORLD』でメジャーデビュー。その後もメンバーの音楽的欲求に従いながら作風を広げ、鋭利なダンスチューンから切ないラブソングまで、色彩豊かなポップミュージックを体現してきた。今年3月に発表されたばかりの最新アルバム『HOWL BE QUIET』を携えて行われたラストツアーで4人は、まさに集大成と呼ぶべきステージを繰り広げた。

HOWL BE QUIET(写真=山川哲矢)

 ニューアルバムに収められたインスト曲「Abyss」とともにメンバーがステージに登場。超満員のフロアから大きな拍手が巻き起こり、ついに最後のライブがはじまった。オープニングはインディーズ時代の代表曲の一つ「From Birdcage」。きらびやかで切ないメロディと“今いる場所から飛び出し自由を探しにいくんだ”という意思を込めたリリックが広がり、いきなり大きな感動へとつながっていく。「HOWL BE QUIET、ラストツアー『Evergreen』ファイナル、東京・恵比寿LIQUIDROOM。はじめます!」(竹縄)という挨拶とともに、アルバム『HOWL BE QUIET』収録曲「つよがりの唄」、そして「染み」(アニメ『迷宮ブラックカンパニー』OP主題歌)とアッパー系のナンバーを続け、観客は手を上げて応える。

 「亨!」「竹縄!」とメンバーの名前を叫ぶオーディエンスに対し、「いいんじゃない? すごく気持ちがいいんじゃない?」と笑顔で返す竹縄。「今日がラストになるわけだけど、楽しい1日にしたい気持ちでいっぱいで。この先、思い返したときに“マジで楽しかったな。最高だな”というライブにしたいので、思い切り、悔いのないよう、楽しんでほしいと思います!」。

 ライブ前半、セットリストの軸になっていたのは、アルバム『HOWL BE QUIET』の楽曲だった。片想い中の男子の切なさ、愛らしさを描いた「ベストフレンド」、別れてしまった彼女に対する(ちょっとヤバいくらいの)思いをテーマにした「解体君書」といった恋愛ソングのあとは、以前からライブで演奏されていた「味噌汁」へ。しなやかなグルーヴ、洗練されたアンサンブルからは、このバンドの音楽的資質の高さがまっすぐに伝わってきた。“最後のライブなのに、新作の曲が中心”という構成はきわめて異例だと思うが、常に新しい表現にトライし、変化を続けてきた軌跡を思い返すと、これもHOWLらしいのかなと納得できる。

 ライブの最初のハイライトは、「ラブフェチ」だった。「13年間活動してきて、紆余曲折、浮き沈みがあったわけだけど。きついなと思うこともあったけど、そんなときに俺らを救ってくれた曲があったんだよ。そのおかげでここまでバンドを続けられたと思っています」(竹縄)と紹介されたこの曲は、メジャー1stアルバム『Mr. HOLIC』(2017年)の収録曲。2020年にTikTokでこの曲がバズったことに対して竹縄は「天啓というか、『このバンドを辞めちゃダメ』と言われている感じもあったし、そこからもう一度アクセルを踏み込んで」とコメントしていた(※1)。愛らしさ、切なさが滲む歌詞、そして、解放的なポップネスをたたえたサウンドが結びついた「ラブフェチ」は、バンドが解散した後も多くのリスナーを魅了し続けることになるだろう。

 ニューアルバムの収録曲のなかで最後に制作されたという「ぼくらはつづくよどこまでも」も強く心に残った。バンドメンバー、近しいスタッフとの強い結びつき、10年以上に及ぶ活動のなかで起きた出来事や生まれてきた感情。それらを背景にした歌詞を抒情的なメロディに乗せたこの曲は言うまでもなく、“解散”がなければ生まれなかったはず。一つひとつの言葉を丁寧に紡ぎ出す竹縄、音数を抑えた演奏で歌を際立たせる黒木、松本、岩野の思いのこもった演奏も本当に素晴らしかった。

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