HOWL BE QUIET 竹縄航太、最後の制作はバンドにとって幸せな時間に ラストアルバム&ツアーで残しておきたかったこと

HOWL BE QUIET、ラストインタビュー

 HOWL BE QUIETがラストフルアルバム『HOWL BE QUIET』をリリースした。

 2022年12月14日に、アルバムリリースと全国ツアーをもって解散することを発表した彼ら。バンド名を冠した最後のアルバム『HOWL BE QUIET』には、「ばかやろう」「ベストフレンド」「染み」などの既存曲のほか、インディーズ1stシングル曲「GOOD BYE」の再録バージョン、ライブだけで披露されたきた「I’M HOME」「味噌汁」、さらに新曲を加えた全18曲を収録。このバンドの特徴である情感豊かなラブソングを中心に、まさにHOWL BE QUIETの集大成と呼ぶべき作品が完成した。

 リアルサウンドでは、竹縄航太(Vo/Gt/Key)にインタビュー。解散を決断した経緯、アルバムの制作、最後のツアーへの意気込み、そして、HOWL BE QUIETに対する思いについて語ってもらった。(森朋之)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

「HOWLという生命体の寿命が来てしまった」

――ラストアルバム『HOWL BE QUIET』、素晴らしいですね。

竹縄:うれしいなぁ。ありがとうございます。

――HOWLらしさがストレートに感じられて、本当にグッときました。こんなアルバムを聴くとますます解散するのが惜しくなってしまいますが。まずは解散を決めた理由から教えていただけますか?

竹縄:解散を発表したときのコメント(※1)にも書かせてもらったんですけど、「やり切った」というのが大きくあって。それとニアリーイコールみたいな形で、燃料切れ、ガス欠みたいな感じもあったんですよね、正直なところ。あと、実は2019年の末に一度「解散しよう」と決めたことがあって。

――え、そうなんですか?

竹縄:はい。2019年の7月に『Andante』というアルバムをリリースして、ツアーを回るなかで、「次、どうしようか?」という話をしたときに、ここでバンドを閉じるのがいいんじゃないかという結論が出て。でも、2020年に「ラブフェチ」(2017年)がTikTokでバズって、いろんな人に自分たちの曲を聴いてもらえる機会が発生したんですよね。天啓というか、「このバンドを辞めちゃダメ」と言われている感じもあったし、そこからもう一度アクセルを踏み込んで。去年も「ばかやろう」というバラードや「Wonderism」というアッパー系の曲をリリースしたんですけど、その2曲のリリースを終えて初めて、バンドとしての未来の予定がなくなったんです。それまではずっと「ここでライブ」「この時期にリリース」と何かしら予定があったんですけど、それがきれいになくなった。そのときに改めて「どうしようか?」という話になって、自然と出てきた答えが、ここでHOWLという看板を畳むということだったんですよね。「このバンドでやれることは全部やったよね」と思ったし、それはメンバー全員、一致していて。

――2019年の末に解散という話になったときとは違った感覚だったんですか?

竹縄:似てる部分もあるんですけど、やっぱり違ってましたね。2019年はメンバー間のモチベーションに差があったし、考え方がズレているところもあったんだけど、今回はみんな揃って「やれることはやったよね」と。中途半端な状態にしておくのも嫌だったんですよ。活動休止にして、「いつか再開するかも」という形にする選択肢もあったけど、自分たちとしてはしっかりケジメをつけたかった。胸を張って次に進むためにも白黒はっきりさせたほうがいいなって。

――なるほど。「やり切った」という言葉についてもう少し聞いていいですか? それはつまり、HOWL BE QUIETというバンドの枠のなかで、やれることは全部やったという意味ですか?

竹縄:そうですね。いろんなタイプの曲を書いてきたし、ライブもいっぱいやって。ときには時代性を意識しながら制作したり、自分以外の人と歌詞を共作して、そこに自分の歌心を乗せることを試したり。メジャーデビューシングル『MONSTER WORLD』のときは、“アイドルに負けないバンド”を掲げていたんですよ。当時、SHINeeにハマっていて、彼らの楽曲に関わっていたJeff Miyaharaさんにプロデュースをお願いして。僕らとしてはすべてポジティブに、一つひとつトライ&エラーを続けてきた感覚なんです。上手くいかなかったこともあるけど、すべてプラスに捉えていて。ただ去年の秋くらいから、次にやりたいこと、新しいことが浮かばなかったんです。それはつまり、HOWLという生命体の寿命が来てしまったのかなって。

――なるほど。

竹縄:それはメンバーも同じで。もちろん細かい差異はあったと思うけど、「次のビジョンが浮かばない」という認識は一緒だったんです。争点になったのは、バンドを続けるか、しっかり辞めるかということだけかな。この先、仮に売れることがなくても、お客さんが減っても続けていくのか。それとも潔く解散するのか。いろいろ話したんですけど、そもそも俺たちは「売れたい」「大きいところでやりたい」「たくさんの人に聴いてほしい」という志のもとにバンドを始めたんだし、それと違うモチベーションで続けるのは違うよねという結論になって。そういう話を繰り返すなかで、最後にアルバムを出して、ツアーを回って終わるのがいちばんいいだろうなと。

「最後だから」が合言葉、魔法の言葉になった楽曲制作

――ラストアルバム『HOWL BE QUIET』は、解散を決めてから制作に入ったんですね。

竹縄:はい。「俺たち、また出していないいい曲がいっぱいあるよね」というところから始まったんですよね。(「ばかやろう」「染み」「ベストフレンド」などの)既存曲、「GOOD BYE」「逢いたい」の再録、あとはアルバムの制作を決めてから作った新曲も含めて、いろいろ集めたら全部で18曲になって。

――すごいボリュームですよね。新曲を書くモチベーションもあった、と。

竹縄:うん、すごくありました。解散を決めて、アルバムを作ることになって。「自分がHOWLに対して曲を書くのはこれが最後なんだな」「この4人で音を作ることはもうないんだな」と思ったら、どんどん意欲が沸いてきたんです。「メアリー」「煙に巻かれて」「かさぶた」「ぼくらはつづくよどこまでも」「Bad Morning」が新曲ですね。大半の曲がメンバー主体のセルフプロデュースなんですけど、とにかく雰囲気がよくて。ずっと楽しいムードのなかで制作できたり、めちゃくちゃハッピーな空間でした。

――いい空気で制作できたのは、どうしてだと思います?

竹縄:皮肉なもんだなと思いますけど、やっぱり最後だからでしょうね。これまでのアルバムは「売れたい」「たくさんの人に聴いてほしい」という共通の目標はあったものの、それぞれが思い描いている景色がちょっとズレていることもあって。今回は「これが最後だ」というゴールが完全に一致していたし、みんなでそこに向かって進めたんだと思います。「好きなことをやろうよ、だって最後だもん」っていう(笑)。「最後だから」がテーマであり、合言葉、魔法の言葉になっていたというか。それがなかったら、こんなアルバムはできていなかったと思います。

――もしかしたら、本当の意味で初めて好きなことをやれたのかも。

竹縄:そうですね。今まではどうしても「この曲を出すのは、HOWLとしてどうかな?」とか「今リリースするのは違うかもね」みたいな話もあって。いろんな考え方や思惑があったし、HOWLに対する愛情ゆえのぶつかり合いもけっこうあったんですよ。今回はそうじゃなくて、メンバー、スタッフを含めて、初めてと言っていいくらい一致団結できた。18曲収録というのも、僕らのわがままで許してもらって。たくさんの人に協力してもらったアルバムだし、本当に幸せな時間でした。

別れの歌をたくさん歌ってきたからこそ最後に残したかった“とびきり幸せな歌”

――収録曲についても聞かせてください。「つよがりの唄」「ケシゴムライフ」は、かなり前から存在していたそうですね。

竹縄:はい。「つよがりの唄」は、『BIRDCAGE.EP』(2014年)の頃に制作していた曲で。気に入っていたんですけど、リリースするタイミングがなかったんですよね。「ケシゴムライフ」はさらに前で、2012年くらいに書いた曲なんです。当時のディレクターが講談社の編集者を紹介してくれて。その方が担当していた羽賀翔一さんのマンガ『ケシゴムライフ』に向けて作ったんですよ。アルバムに入っている音源は、オチサビの前半が10年前の自分の声で、後半が今の声になっていて。自己満みたいなところもあるけど、時間の経過が感じられる構成になっています。付き合いが古い、いつか出したいと思っていた曲をようやく出せたのもうれしくて。メンバーも「いい曲すぎるな」って自画自賛しながら感動してました(笑)。

――「I’M HOME」「味噌汁」はシンプルなバンドサウンドを押し出した楽曲。以前からライブで披露されていて、ファンの間では「リリースしてほしい」という声があった楽曲です。

竹縄:2017年、2018年くらいに作った曲なんですけど、なかなかリリースのタイミングがなくて。ライブでやっていたのでお客さんが覚えてくれていて、「たけきゃす」(弾き語りの配信ライブ)でもリクエストしてもらえることが多かったんですよ。どちらもいい曲だし、ぜひ最後のアルバムに入れたいなと。ちゃんとレコーディングしないと、もう聴けなくなっちゃいますからね。応援してくれたファンのみんなへの「ありがとう」の気持ちもありました。

――解散を発表したときのファンの反応については、どう感じてますか?

竹縄:わりと突然の発表だったので、驚かせてしまったかなと思ってますね。ただ、自分たちとしては「やり切った」という達成感が大きかったし、「申し訳ないけど、俺たちのわがままを受け入れてほしい」と思いながら、リプやコメントに目を通してました。「HOWLを好きになったのは中学生のときで、今年から社会人になりました」みたいな時間の経過を感じるコメントもあって。それだけ年を重ねてきたんだなと(笑)。「声優になるためにがんばっています」「調理師を目指して学校に通ってます」とか、「バンドを始めました」という人もいて。長い人で10年、多くはメジャーデビューの頃から5〜6年、一緒に時を刻んできたんだなと改めて実感しましたね。もしかしたら(HOWLの曲を)聴かなかった時期もあったかもしれないけど、「終わりにするね」と発表したことで、たくさんの人が振り向いてくれたのもうれしかったです。

――アルバムに収録された新曲も素晴らしくて。まずは1曲目の「メアリー」。ここまでピュアなプロボーズソングは、これまでなかったのでは?

竹縄:これまでいろんな曲を書いてきたんですけど、特に恋愛の曲、もっと言えば、失恋気味の曲が多かったんです。それは「そうなりたくない」という自分の気持ちも関係していたと思っていて。恋愛に限らず、友人や仕事で関わっている人に対しても、お別れするのがすごく嫌なんです。それは自分のよくないところの一つでもあるし、だからこそ別れの曲を「こうなりたくない」と思いながら書いてきたところがあるんじゃないかなって。「サネカズラ」のように100%実体験の曲もあれば、そうじゃない曲もあるんですけど、いろんな恋愛を描いてきたなかで、最後のアルバムに書き下ろすことになって、「とびきり幸せな歌を書きたい」と思ったんです。最後に真っ直ぐで明るく、愛に溢れた曲を作るのがHOWL BE QUIET、竹縄航太の使命じゃないかなと。いちばん幸せなラブソングは結婚だろうと思って、先に「メアリー」というタイトルを決めてから制作しました。

HOWL BE QUIET 竹縄航太(写真=大城為喜)

――メンバーのみなさんの反応はどうでした?

竹縄:「言い切ったね」「ここまで来たか、竹縄」と言ってくれました(笑)。〈君のわがままを聞きたい/君にもっと怒られたい/下手に歯向かって尻に敷かれたとして〉〈ああ 今日も今日とて/君が好きだな〉という歌詞には、自分のすべてが詰まってる感じがして。ここには竹縄航太という人間がいるし、特に好きな一節ですね。

――そこまで自分自身を素直に出せたのは、やっぱり“最後”だから?

竹縄:あまり意識してなかったんですけど、出来上がった曲を聴いたときに、「ああ、俺だな」と思って(笑)。そういう曲を残せたことはすごくうれしいですね。

HOWL BE QUIET - メアリー

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