香取慎吾、ワンマンライブ『Black Rabbit』有明アリーナ公演完全レポ 1人のスターが作った新たな伝説のステージ
気持ちよく青空が広がるも、寒波が近づいているせいか時折冷たい風が吹いた1月の東京・有明アリーナ。最寄り駅から会場へと続く道は、たくさんの人で列をなしていた。1人のスターを求めて。その人の数は2日間で2万人、兵庫・神戸ワールド記念ホールの2日間と合わせるとそれ以上である。
香取慎吾、ソロアーティストとしては初となるアリーナクラスでのワンマンライブ『Black Rabbit』。筆者が観覧した1月22日、東京公演2日目の余韻は今でも残っている。それほど、香取のステージは華々しく、そして心に響くものだった。
伝説を予感させた、闇も飲み込むオープニング
開演時間になると、観客席から自然と手拍子が沸き起こる。まだまだ大きな歓声を上げるのは慎重にならざるを得ない状況を踏まえたNAKAMA(ファン)の心遣いだろう。長い年月、香取と共にステージを盛り上げてきたことが窺えるシーンでもあった。
その手拍子の音が徐々に大きくなると「WELCOME!」のアナウンスが流れ、会場は暗転。聞こえてきたのは、どこかザワザワとした気持ちになる電子音。サーチライトが客席を照らすと、スクリーンに香取のシルエットが浮かび上がる。ビジューがきらめく衣装を身にまとい、そのままステージに向かうのかと思いきやバタンと倒れ込んでしまう。そこに近づいてくるのは、香取の描いてきた“くろうさぎ”――。
そんな考察し甲斐のある映像に釘付けになっていると、メインステージにはいつの間にか白いスモークが立ち込め、いよいよ幕が上がる。後ろから照らされるライトがまぶしく、逆光で影でしか確認することはできないが、その見覚えのある背格好からすぐに香取であることがわかる。ゆっくりと、一歩ずつ。前進する動きもまるでダンスのようだ。
やがて、ピンスポットのもとに立ち、会場をぐるりと見渡す香取。その堂々とした立ち姿は、マイケル・ジャクソンが登場後に約2分間静止していた伝説のステージを彷彿とさせた。良いステージとは、幕開けから観客の視線を掴んで離さない。この公演もまた、ひとつの伝説になるのだと予感させるオープニングだった。
スターのスタミナを見せつけた、ノンストップの前半戦
顔の下半分を隠すきらびやかなマスクを外すと、ようやく見えてきた香取の顔。そして流れたのは「Metropolis」だ。今回のライブは、1stアルバム『20200101(ニワニワワイワイ)』と2ndアルバム『東京SNG』の楽曲がミックスされたセットリスト。ここまでのソロアーティスト活動の総集編といった濃厚な時間となった。
「Metropolis」の印象的な重低音に合わせて揺れ始める観客席のペンライト。鋭い顔つきで息をつく暇もないラップを口ずさみ、ダンサーたちと共にロング丈の衣装を翻しながらステップを踏んでいく。何よりも本人が気持ちよさそうに歌い上げる姿が清々しい。
そして、私たちのよく知るあの口角がキュッと上がった笑顔を見せると、ステージの照明もパッと明るく切り替わる。太陽のような香取の微笑みに合わせてか、背景のビジョンはモノクロの空模様に。そして客席に視線を送りながら続けて歌われたのは、TeddyLoid&たなかとのコラボ曲「Prologue」だ。香取がYouTubeのコメンタリー動画で「(自分の内面の)ド真ん中こられてるからこんなに好きだってことだ」とシビレた歌詞〈誰かの書いた×なんて知らないし 赤く塗り潰す〉のパートも力強く歌い上げられた。
次に、メインビジョンに映し出されたのは火花の映像。すると香取は、フード付きのカジュアルなネイビースーツにステージ上で早着替えをしてみせる。紫のライティングに彩られて歌われたのは「Trap」だ。火花のモチーフはMVでも取り入れられており、連動するようなステージが実に粋。まるで、香取のつま先からも火花が飛び散りそうなキレのあるステップにもまた惚れ惚れする。
続けて、スタンドマイクで熱唱したのは「I'm so tired」。女性ダンサーたちに翻弄されてヘロヘロになって見せるパフォーマンスや、サングラスを装着して花道を駆け抜ける姿に、思わず頬がゆるむ。そのままセンターステージでハンドマイクに持ち替えて「Catharsis」へ。ノンストップで歌い続けているにも関わらず、軽やかな連続ターンを披露していく。
さらに、ピンクとイエローのカラフルな照明に包まれて「10%」を歌うと、客席を指差してスマイルを見せる余裕も。これが数々のステージをこなしてきたスターのスタミナかと感服するばかり。同時にステージのライティングに合わせて、瞬時に色を切り替える客席のペンライトにも感動した。数々のステージを作り上げてきた香取と、それを共に盛り上げてきた絆が感じられる瞬間だった。