RAKURA、ジャンルレスな楽曲を乗りこなす変幻自在の歌声 さなりとのコラボが生んだ新たな色合い

RAKURA、変幻自在な歌声

 音楽の色とは、どう付与されるものなのだろう。

 ポジティブネスに溢れたその声の主は、若きシンガー RAKURA。2020年から活動を開始し、今年20歳になる、まさに新星という言葉が相応しいアーティストである、RAKURAは、ポップスを軸にしながらも、サウンドや歌唱の面で多様なジャンルを冒険しているが、何よりも楽曲はカラフルな印象を残す。逆に言えばRAKURAの楽曲にモノクロの画は想像し難く、その色は音楽におけるいくつかの側面において塗られているだろう。そして楽曲によって、その色は塗り替えられる。

 なぜカラフルなのか。それは、RAKURAの楽曲群が、複数のジャンルへの接続や音がもたらす感情の多様さを湛え、単一的な感触に収まらないからだろう。

RAKURA「Shooting Star」Music Video

 基本は和製R&Bの文脈に居るシンガーとしてRAKURAは歌う。例えば、国内のシーンで言うのであればiriなどが先頭を走っている道を、RAKURAも走っていると言えるかもしれない(本人も度々影響を公言している)。一方で、昨年にリリースされた1stアルバム『tint』の、ジャケットの絵にも象徴的な、楽曲群のカラフルさに耳を傾けたい。例えば、「Shooting Star」のジャジーなトラックに乗る彼女の歌唱はとりわけ耳を惹きつける。

RAKURA「We Fallin'」Lyric Video

 RAKURAの歌唱はソウルフルな感覚を強め、トラックが抱えるムードにパワフルな感触を添える。さらに、「We Fallin’」のような、ポップさの中に、夜の雰囲気を醸し正統的なR&Bの手触りを感じさせる曲、または音を削ぎ落とし純粋なアコギと歌のシンプルなメロディを醸す「the song」。その他にもダンスポップやオーセンティックなソウルミュージックの手触りを感じさせる曲まで……。基本は整理されたウェルメイドな音楽的構築を施しながらも、その音楽性の多彩さは、一言では語れない。

RAKURA「Outlook feat.さなり」Music Video

 その中で、1月27日にリリースされたニューシングル「outlook(feat.さなり)」は、RAKURAの上記のような音楽的文脈に則った作品でありながらも、同世代のラッパーであるさなりと共演していること以上に、最もラップミュージックに接近する作品であるように聴こえた。前述のiriやSIRUPなど、R&Bというジャンルの特性上、それぞれラップミュージックとの親和性の高さを感じさせるような特徴を持つが、RAKURAも例外ではないらしい。

 まずは、ある種のフロウを獲得し、ラップに接近するRAKURAの歌唱である。例えば、駆け抜けるような言葉の中で「きっと」と「“ちっぽ”け」など、的確に韻を踏んでいく様にそれは現れる。それは彼女にとって、各楽曲での歌唱のアプローチを変えることと同じように、並列に行われているようにも感じさせ、その器用さと変幻自在な感覚に魅力を感じる。何よりも自由に言葉を区切りながら、スムースにリズムを刻んでいく様で、RAKURAの歌唱は、これまで以上の軽やかさを携える。

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