堂村璃羽「自分の曲を聴いて生きたいと思ってくれる人を増やせたら」 1年7カ月ぶりのアルバムで次のステージに

堂村璃羽、新アルバムで大きな舞台へ

「Prima Stella」で描いた夜景の美しさと夜の寂しさ

――ところで、今回アルバムに多めに入っているというラブソングは、堂村さんが曲作りする時の大きなテーマの1つではないかと思うのですが、堂村さんにとってラブソングは、世の中に自身の音楽、考え、感情を発信する上で、どんなアウトプットだと考えていますか?

堂村:ラブソングって言ったら、好きという気持ちを歌っていると思う人が多いじゃないですか。それと、失恋ソングを思い浮かべる人もそれなりにいるのかな。でも、僕のヒットチューンになっている曲って、「FAKE LOVE」「都合いい関係」といった生々しい描写を交えながら、体だけの関係を歌ったものなんです。それは他の人が書いていないラブソングを攻めたいって気持ちが大きかったし、ラブソング=きれいなだけじゃないとも思ったから。そういう生々しいテーマもきれいなビートと歌声とメロディに昇華させることによって、音楽として楽しんでもらえて、共感してもらえるんじゃないかってちょっと攻めたところを開拓していったら、それが多くの人に刺さって、“堂村璃羽”と言えばみたいに今の自分の活動のベースになっていった。今回のアルバムは逆に、そういう曲を1曲も入れないことで、そこ以外の部分で勝負しようとしているんです。もちろん、これからも「FAKE LOVE」や「都合いい関係」みたいな曲は出していくと思うんですけど、今回はそこじゃない部分でリリースを試みました。

「Prima Stella」

――アルバムのリリースに先駆け、1月20日に先行配信した1曲目の「Prima Stella」がまさにそうですね。

堂村:そうですね。けっこう純愛というか、それでもすれ違いがあってバッドエンドなんですけど。

――えっ。

堂村:そうなんですよ(笑)。〈きっと一番星は誰より 僕のそばで笑う君のこと〉と歌っているから、(歌詞の中の)二人とも好き同士じゃん。それなのにバッドエンドなの!? ってなると思うんですけど、実は裏のストーリーがあって。周りから馬鹿にされても、笑われても、誰にも知られていない星を見つけるという夢をまっすぐに追い続けている男の子に女の子は惹かれていたんですけど、男の子が自分にとって、一番星はその女の子だと気づいたとき、女の子は自分が好きだった相手はもういないと気持ちが冷めちゃうんですよ。

――なんと。でも、この曲を聴いて、バッドエンドだと思うリスナーはいないですよね?

堂村:いないと思います。

――なぜバッドエンドにしたんですか? 

堂村:うーん、夢を追いかける中で、人は変わっていくっていうことを自分の経験も含め、書きたかったというか。たぶん他のアーティストさんでも同じような経験をしている人っていっぱいいると思うんですよ。ただ、女の子の気持ちが冷めちゃうってところまで書かずに終わらせるからこそ、曲の中で描いた夜景の美しさが映える……けど、その裏には夜景の怖いところというか、夜の寂しさがあるっていう。

――なるほど。そこはアルバムのタイトルにも繋がっているわけですね。

堂村:これまでは全曲聴いてほしいからリード曲って作ったことがなかったんですけど、今回はあえてリード曲にしました。それぐらい聴いてほしい。「Prima Stella」のストーリーは今までで一番考えました。過去曲にも曲を聴いているだけじゃわからない裏の意味とか、ダブルミーニングとか、いっぱいあるんですけど、ストーリーに裏設定があるっていうのは初めてで。今まで作ってきた曲の中でも「Prima Stella」は一番時間をかけて、試行錯誤を繰り返した分、リード曲にふさわしい曲になったと思っています。

――他の人が攻めていないテーマを攻めたり、純愛をバッドエンドストーリーで描いたり、歌詞を書く上で堂村さんは逆張りをすることが多いような印象がありますが。

堂村:多いですね。

ファンとの距離はできるだけ距離は近くありたい

――それは誰もやっていないことがご自身の個性に繋がるという狙いもさることながら、世の中の主流とされているものには易々と与しないぞという反骨精神や元々、天邪鬼な性分だからというところもあるんでしょうか?

堂村:たぶん、あると思います。そもそも、世の中があんまり好きじゃないんですよね(笑)。真面目な人が馬鹿を見る世の中だと昔から思っているんですよ。悪い人のほうがずる賢く生きて、お金も稼いでいるように思うし、人思いの優しい真面目な人ほど損をしている世の中だなって。だから世の中を好きになることはないんじゃないかな。だからこそというか、そのお陰もあって、自分と自分の周りの小さなコミュニティの仲間は絶対守ろうと思うし、支えようと思えるから、そういう意味では悪いことではないのかなと思いますけど。

――いろいろな人に刺さるようにラブソングもいろいろなシチュエーションを歌っているとおっしゃっていましたが、いろいろな人に刺さるようにというのは、共感を求めているということですよね?

堂村:そうですね。寄り添える音楽というのがテーマなので、共感性のあるリリックと心地いいメロディは大前提として心がけています。

――精神安定剤のようなアーティストと呼ばれているそうですね。YouTubeにのコメント欄を見ても、「共感しました」という声が多いです。

堂村:ありがたいです。そう言われることは、もうこれ以上ない喜びですね。

――そもそも堂村さんが曲を作る上で、共感してもらうことを意識したのはいつだったんですか?

堂村:最初にリリースした「FAKE LOVE」他4曲入りのEP『Escape』(2019年5月4日)を作った時から、基本的に自分のことを歌うほうが少なくて、誰かのことを歌うことが多かったですね。たとえば、僕は一人っ子じゃないし、両親ともに揃っていますけど、親に恵まれなかった人とか、同性愛者であることが周囲から理解されない人とか、何かしら悩まされている境遇の人達に憑依するようにして。その人達の目線で、自分が経験していると想像して歌詞を書くことが多かったので、それが共感に繋がっているんだと思います。リスナーさんの支えになったりとか、それこそ精神安定剤と言ってくれる人とか、そういう誰かの生きる道標になれば、1日でも多く命を繋げたらいいなという思考になっていきましたね。

――SNSではリスナーのコメントに対するリプライもかなり丁寧にされていますが、理想的なリスナーとの距離はどんなふうに考えていますか?

堂村:ファンの人達が自分の声はちゃんと届くんだってことに常に気づいてくれている距離を維持できるのがベストかな、と意識してSNSはやっていますね。相談も直に来るので、時間がある時に返したりするんですけど、それも含め、できるだけ距離は近くと考えています。

――活動の規模が大きくなってもそれは変わらず続けていきたい?

堂村:もちろん。だって、売れてきてファンがめっちゃ増えてきたので、個人的な連絡は全然できなくなりますって、人を救うための曲が多いのに、いざ個人間になったら返せないのは、うわべだけの人を救う歌になっちゃうじゃないですか。そこは誠意が伝わるようにできる限りやっていこうと思っています。

――「好きです」「ファンです」という単純なコメントではなく、みなさん、踏み込んだコメントが多いじゃないですか。「ありがとう」の一言で返せるものばかりじゃないから大変だと思うんですけど。

堂村:でも、大変だと思ったことはないなぁ。だって幸せじゃないですか。そうなりたくてやってきたんだから。だから、街中で話しかけられても、デート中だろうが何だろうが関係なく写真も撮ります(笑)。自分から「写真撮りましょう」って言いますからね。なりたくてそうなったのに、そうなったとたん鼻が高くなって、いきがってしまう人にはなりたくないと思ってますね。どんな天才でもファンが1人もいなかったら、何もない人だと思います。天才でも何でもない僕みたいな人間がこうやって表舞台に立てているのは、ずっと支えてくれている人のお陰なので、そこは忘れちゃいけないから、鼻はもう一生へし折ってますね(笑)。

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