Ado、「新時代」と共に遂げた2022年の快進撃 世界を虜にした圧倒的な“個の力”

 七色の声を駆使する歌い手、Ado。今年の日本の音楽シーンで最も飛躍を遂げた歌手の一人と言っても過言ではないだろう。何しろAdoにとって2022年は初めて尽くしの年だった。

 1月には自身初のアルバム『狂言』を発売。CDというフォーマットでのリリースも初だった。4月には初のライブ『喜劇』をZepp DiverCity(TOKYO)にて開催し、初めて人前で生歌を披露。6月になるとアニメ映画『ONE PIECE FILM RED』のウタの歌唱キャストを務めることがアナウンスされた。8月には2度目の単独ライブを開催。会場は本人曰く夢だったというさいたまスーパーアリーナで、約2万人にAdoの歌を届けた。もちろんこの規模の会場を埋めることも自身初である。現在は全6会場を巡る初の全国ツアー中。まさに初めてのことばかりでありながら、同時に怒涛の快進撃の年であった。

 この“Ado旋風”の凄まじさを端的に表しているのがチャートだろう。複数のデータをもとに楽曲チャートを作成しているBillboard JAPANによれば、Adoは今年の年間「JAPAN HOT 100」にのべ10曲を送り込み、年間トップ・アーティスト・チャート「Artist 100」で総合首位に輝いている。Adoがすごいのは、ストリーミングやダウンロード、動画再生数といったデジタル指標のみならず、カラオケやラジオ、CDセールスといった様々な指標でも高いポイントを示しているところだ。つまり、Adoの曲は今年たくさん聴かれ、歌われ、流され、そして買われていた。何の誇張でもなく2022年はAdoの年だったのだ。

 なぜAdoはこれほどまでに大きな熱狂を生んでいるのだろうか。タイアップ先の作品が強いから、提供してもらえる楽曲が良いから、ボカロシーンに追い風が吹いているから……などなど、そういった要素はたしかにあるかもしれない。しかし何より大きいのは、誰にも真似できないあのボーカル表現、唯一無二のあの歌声が最大の理由なのではないか。Adoの歌で得られるものは、Adoの歌でしか得られない。世に存在する数あるAdo作品の「歌ってみた」の物足りなさを感じさせるほどの強烈な個性とスキル。その圧倒的な“個の力”が、世の中を虜にしているのだと思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる