GRAPEVINE『another sky』再現ライブから見える“25周年迎えたバンドの歩み” 今井智子、imdkm、森朋之が紐解く

GRAPEVINE 25周年をライター3氏が考察

「今なお歩み続けているバンドの在り方そのものを聴いている」(imdkm)

 デビュー25周年の節目を迎えたロックバンドが、20年前のアルバムを再現=再訪する。こう書いてしまうと物々しいけれど、実際に届けられたこのライブの記録は生き生きとして軽やかでさえある。その印象を一言で言語化するのは難しい。

 前半の第1部は、『another sky』 リビジット・パート。収録順をなぞって1曲1曲演奏される楽曲たちは、アルバムに封じ込められた20年前のサウンドと比べればずっと包容力(と、あえて言おう)を増している。MCはほぼなし。飛び抜けたキャッチーさで突き抜ける「BLUE BACK」のような楽曲に否応なく心躍ることもあるけれど、とりわけ印象的なのは、厚いサウンドのレイヤーをバンド全体でうねらせるようなスローな楽曲だ。力強いグルーヴも、「踊らせる」というよりは、より深い没入に誘うレールのように機能しているかのようだ。おそらく前半のハイライトである「アナザーワールド」を経て、「ふたり」へなだれ込み、緩やかなグルーヴに浸りながら一段落。と思いきや、リプライズのように1曲目の「マリーのサウンドトラック」が演奏される。歌メロの際立った曲が並んだ後に、言葉が溶けていくかのようなドリーミーなノイズが会場を包み込む様は、見事な第一部の幕引きだった。

GRAPEVINE - アナザーワールド(in a lifetime presents another sky)

 田中和将(Vo/Gt)の飄々としたMCで幕を開けた後半の第2部では、「盛大なおまけ」と冗談めかして語る、最新アルバム『新しい果実』をはじめとした「現在」のGRAPEVINEを改めて聴かせる。個人的には、とりわけ「ねずみ浄土」や「Gifted」といった楽曲が2021年のリリースのなかでも大きなインパクトを残していたこともあって、複雑に絡み合うリズムや、大胆に隙間をいかしたグルーヴの妙には改めて感服した。アルバムの再現という枷を外した1時間のセットは、第1部よりもぐっとカラフルでバラエティ豊か。バイタリティにあふれた演奏に引き込まれるうちに、アンコールを経て、終演。

 やはり、この印象、魅力を簡潔に言語化するのは難しい。

 「いつまでも若々しい」わけでもなければ、シンプルに「貫禄が出ている」というのでもない。コンスタントに活動を積み重ね、今なお歩み続けているバンドの在り方そのものを聴いているよう……もっともしっくり来るのはそんな表現だろうか。

 その意味で印象的だったのは、本編に入る前、冒頭に少しだけ挿入された田中和将とカメラのやり取りだ。ライブを前にギターを丁寧にメンテナンスする、いわばルーティン的な作業のなかで交わされる何気ないやり取り。会話の端々からは、GRAPEVINEが歩んできた時間の厚みがこぼれ落ちている。この「なんでもなさ」がそのまま、この映像作品に収められたGRAPEVINEが見せる凄みに通じているのではないだろうか。(imdkm)

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