GRAPEVINE、ライブバンドとして貫く不変のアティテュード どこにも当てはまらない存在であり続ける独自性
GRAPEVINEが2021年4月25日に東京・日比谷野外大音楽堂で行ったライブ『LIVE AT HIBIYA PARK』が、11月24日にBlu-ray&DVDでリリースされる。
そのことが発表されたのはニューアルバム『新しい果実』のリリースツアーの追加公演、恵比寿ザ・ガーデンホール2日目である9月19日のステージ上だった。ちなみに、それより前のツアーで行われた東京でのワンマンライブは、2020年11月7日の中野サンプラザ公演である。
日比谷野音、恵比寿ザ・ガーデンホール、中野サンプラザーーつまり、世界が新型コロナ禍に覆われて以降に東京で行われたGRAPEVINEのライブ3本を生で観て、実感した。この人たちが、最も「コロナ禍でも関係ないライブバンド」のひとつである、ということを。
観ながら一緒に歌う? 歌わない。曲によって口ずさむくらいはするけど、みんなで声を合わせてシンガロングすることはもともとない。
観ながら踊る? 踊らなくはないけど、身体を揺らすとか腕を振り上げるくらいで、暴れたりはしない。
観ながら「ヒュー!」とか叫んだりして、パーティ気分で騒いだりするか? しない。そういうバンドではない、どのポイントをとっても。
では、ライブを観なくてもいいのか、生でなくてもいいのかというと、全くもってそうではない。どこからどう見ても、まごうことなきライブバンドだ。25年近くにわたって生のライブでしか味わえないことを、ファンに提供し続けているバンドである。だからこそ、今もなお鉄壁の動員力を維持している。
つまり、オーディエンスが「声出せない」「だから歌えないし騒げない」「指定の位置から離れられない」「暴れることなどもちろんできない」という、コロナ禍ならではの制約だらけのライブであっても、「コロナ禍以前のライブと変わらない」ことになるのだ。違うのは、お客さんがみんなマスクをしていることくらいである。
自分はコロナ禍以降においては、生でライブを最も多く観ている音楽ライターのひとりではないか、アイドルなどは専門外なので別としても、少なくともバンドのライブにおいてはそうではないか、という自負がある。
で、それだけ多くのライブを観ていても、GRAPEVINEの「コロナ禍前との差のなさ」は、突出している。言うまでもないが「コロナ禍ゆえにそういうライブをやっている」からではない。コロナ禍など誰も予測しえなかった頃から、そういうライブをやり続けてきたからだ。
ただし、アコースティックやアンビエントみたいな音楽ではなくて、ロックバンドにしかなし得ないグルーヴに、オーディエンスが乗っかっていく、そういうライブである上で、コロナ禍前とコロナ禍後で変わらないパフォーマンスをやってのける稀有な存在がGRAPEVINEである、ということだ。