coldrain、攻めの信念を貫き続けた15周年の集大成 “ラウドロックの新たな始まり”も告げた圧巻の横浜アリーナ公演

coldrain、集大成と始まりの横浜アリ公演

 以降もハイライトになり得る瞬間が幾度となく訪れる。強靭なブレイクダウンで新たな地平を切り拓いた代表曲「The Revelation」や、1分で駆け抜ける超ハードコアな「Vena」、『Nonnegative』の中でもメタルコア色が強い「Rabbit Hole」などアグレッシブなパートで攻めたかと思えば、「ENVY」「Fire In The Sky」「Counterfeits & lies」「F.T.T.T」ではメロディアスなイントロが鳴り響いた途端にオーディエンスの拳が一斉に上がる。とりわけ「F.T.T.T」ではY.K.C(Gt)のヒロイックなギターソロが最高だ。「Heart Of The Young」や「THE SIDE EFFECTS」では静と動の緩急を見せ、「Boys And Girls」「Miss you」「Don’t Speak」といったバラードでは、世界的なメタルシーンを見渡しても、屈指の美しさと芯の強さを誇るMasatoのボーカル力が光るなど、coldrainが積み上げてきた音楽的な振り幅が遺憾なく発揮されていく。

 また、Katsuma(Dr)の大胆なドラムさばきが牽引する「Bloody Power Fame」や、Y.K.CとSugi(Gt)とRxYxO(Ba)のグルーヴが少しずつスケールを拡大し、猪突猛進な間奏パートで巨大な景色を生み出していく「Here With You」などはカタルシスが凄まじく、すでに新たなキラーチューンとして存在感を発揮している。2ndアルバム『The Enemy Inside』(2011年)の冒頭4曲を1コーラスずつメドレーで披露するという斬新なチャレンジからも、格段に爆発力を増した彼らの演奏力を感じることができた。先述したようにcoldrainはハードコアやスクリーモからメタルコアやヒップホップまで多岐にわたって吸収し、独自のラウドロックに昇華してきたバンドだが、海外も含めあらゆる経験を積んだ今の5人が鳴らすことで、15年分の楽曲を1本の線で結ぶことができるーーそういう確信があったのだろう。Masatoがライブ冒頭で語った「coldrainが立てばアリーナもライブハウスになる」という発言も、きっと同様にcoldrainが重ねてきた15年間への自信と誇りから来ていたはずだ。

Katsuma

 さらに、同じく『The Enemy Inside』収録の「The Maze」では、音源でもボーカルを担当しているSiMのMAHがサプライズ登場。何度もステージで共演しているMasatoとの相性もバッチリで、MAH特有のリズミカルなシャウトがステージを彩った。シーンを並走してきたCrossfaithやCrystal Lakeがライブ活動を休止している現在、フェスを主催しながら日本のラウドロックを牽引し続けているSiMとcoldrainのスタンスは、今一度見過ごせないものになってきている。この日のコラボを見たことで、もう一度ラウドロックに希望を託したくなったオーディエンスも多いことだろう。

 これもMasatoがMCで語っていた通りだが、coldrainは一度も日本語詞を歌うことなく、「売れる気があるのか?」と問われても自分たちのスタンスを貫き続けてきたバンドだ。それまでと違って邦楽の影響を受けたバンドが乱立した2010年代において、英詞で歌うcoldrainのストイックさはある種の“洋楽性”を帯びすぎたため、ラウドロック自体がキャッチーな音楽として認識される機会が少なくなっていたのは事実だと思う。しかし、2010年代後半のサブスクリプションサービスの浸透で、音楽試聴における“洋邦”の垣根が取り払われていったのと同時期に、coldrainもそうした分類にとらわれない音楽を生み出せるようになり、時代にフィットしながら、独創性溢れるロックバンドとしての矜持を提示できていたのは素晴らしいことだった。その意味で今回の横浜アリーナ公演は、オリジナリティと信念を曲げず、時代の中で役割を見失わなければ、アリーナを揺らすロックバンドになれるんだという証明でもあったのだ。と同時に、ラウドロックの先頭に立ってさらなる高みを目指し、後続にもデカい背中を見せる決意を掲げ、コロナ禍以降に停滞したライブシーンに爆音で“喝”を叩き込むライブでもあった。そうした想いの全てが、本編ラストの「From Today」には凝縮されていたように感じられた。

 アンコールは「SEE YOU」「Before I Go」を経て、「Final destination」で終幕。媚びることなく、自然体で時に愉快な人柄も垣間見せながら、どこまでもcoldrainのままやり切った最高の横浜アリーナ公演となった。それは決して15年間の終着点ではなく、coldrainと日本のラウドロックにとっての新たな始まりを刻んだ日である。より巨大な会場でライブし、日本のロックそのものを覆す存在になるまで、coldrainは自分たちらしく〈keep moving forward〉(「Final destination」)し続けることだろう。そして、この日たくさんのオーディエンスが目撃したように、それが実現する日は決して遠くはないはずだ。

coldrain 公式サイト

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