coldrain、ライブハウスから届ける充実作『Nonnegative』の魅力 横浜アリーナ公演に向かい育まれていく新曲群
7月6日に待望のニューアルバム『Nonnegative』をリリースしたばかりのcoldrainが、同作を携えた全国ワンマンツアー『"Nonnegative" ONE MAN TOUR 2022』を7月11日に恵比寿・LIQUIDROOMからスタートさせた。
コロナ禍を経て届けられた約3年ぶりの新作『Nonnegative』を全国津々浦々まで届けるべく設定されたこのツアーは、10月7日のZepp Osaka Baysideまで全20公演を予定。さらに、そのツアーのファイナル的に設定されたのが10月16日の横浜アリーナでのワンマンライブ『15th ANNIVERSARY “15×(5+U)” LIVE AT YOKOHAMA ARENA』だ。これは文字通り、coldrain結成15周年を記念したアニバーサリー的なアリーナ公演で、彼らの大規模ワンマンとしては2018年2月6日の日本武道館公演以来となる。
コロナによる苦しい状況を打破し、『Nonnegative』といういかにも彼ららしい前向きなメッセージが詰められた新作は、結成15周年という節目にふさわしい集大成的な内容であると同時に、ここから先の明るい未来へ向けた躍動感が強く伝わる力作だ。そんな新作リリースから間もなくしてスタートしたこのツアーも、そのアルバムの魅力をわかりやすい形で伝えようとするメンバーの気概が感じられ、新たな挑戦も詰め込まれた非常に画期的な内容となっている。ツアーはまだ始まったばかりなので、ネタバレは極力少なめに抑えておくが、これから各地のライブに足を運ぶ予定で披露される楽曲を知りたくない方は、できることならライブを見終えたあとに本稿に目を通すことを先にお伝えしておく。
まだまだ声出しや合唱などは難しい状況ながらも、ツアー初日のLIQUIDROOMには最新のガイドラインに沿う形で大勢のファンが集結。身動きひとつない状態にもかかわらず、自然と汗がにじむほどの熱気に包まれており、この感覚も随分と久しぶりに味わうものだ。定刻を過ぎた頃、会場が暗転すると場内には不穏なSEが流れ始め、これに合わせるようにオーディエンスはリズミカルにハンドクラップを被せていく。続いて、メンバーが1人、また1人とステージに登場し、最後にMasato(Vo)が姿を現すと、「ツアー初日、準備できていますか?」と叫んでからニューアルバムからの新曲を連発。Katsuma(Dr)の叩き出すヘヴィながらもクリアなビートと、それに絡みつくように独特のグルーヴを生み出していくRxYxO(Ba/Cho)のベース、ヘヴィさとしなやかさが同居したSugi(Gt./Cho)のギターワーク、豪快さと繊細さを併せ持つY.K.C(Gt)のソロプレイはもはや熟練の技と言える頼もしさが伝わってくるものばかりだ。そして、ステージの中央で時に前のめりなスクリームで観る者をノックアウトし、時に優しさに満ちた歌声で観客を柔らかな空気で包み込む。Masatoのボーカルからも唯一無二の存在感が伝わり、スター性の強いオーラと相まってステージから目を離せないというオーディエンスも多かったことだろう。
そんなバンドのアグレッシブなステージングは、とてもツアー初日とは思えないほど、良い意味で肩の力が抜けたもので、ライブ初披露となる新曲が多かったにもかかわらず、すべての楽曲がキラーチューンのごとくライブで生き生きとしたオーラを発していた。そんな中、「MAYDAY」や「ENVY」など近作からの楽曲や、「The Maze」といったレア曲も織り交ぜられ、ひたすら攻めの選曲でフロアは蒸し風呂状態へと化した。モッシュやクラウドサーフ、あるいはシンガロングなどコロナ前の“当たり前”がまったくない状態ながらも、ここまで「ライブハウスでライブを観ている」感の強いライブは本当に久しぶりのような気がした。捉えようによっては地獄のような熱気ながらも、「ああ、生きている……」と強く感じた観客もきっと少なくなかったのではないだろうか。