JUJU、“ユーミン愛”に溢れた夢のような夜 松任谷由実もサプライズ登場した『不思議の国のジュジュ苑』最終公演

JUJU、“ユーミン愛”に溢れたツアーファイナル

 JUJUの『不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- JUJUの日スペシャル 演出:松任谷正隆』が10月10日、東京・武蔵野の森 総合スポーツプラザ メインアリーナで行なわれ、アンコールにはサプライズで松任谷由実が登場するなど、ツアーの締めくくりにふさわしい、一夜限りのまさにスペシャルなライブになった。

 JUJUのユーミン愛が溢れ、それが客席に伝わり感動に変わり、その幸せな感情の交感に、会場は終始幸せな空気で包まれた。本公演は「ユーミンは“人生の教科書”」、そう語るJUJUが3月に発売した松任谷正隆・松任谷由実のWプロデュースで作り上げた、まさに前代未聞のカバーアルバム『ユーミンをめぐる物語』をひっさげて、5月からスタートした全国ツアー『JUJU HALL TOUR 2022 不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- 演出:松任谷正隆』(全44公演)のファイナルだ。

 客席のワクワク感がマックスになった時、スクリーンにダンサーが踊る影が映し出され、ショーがスタート。オープニングナンバーはJUJUのデビュー曲「光の中へ」だ。「September Blue Moon」では、途中からダンサーと共にストリングスのメンバーがダンスに加わるという斬新な演出。ステージセットをはじめ、歌、演奏、そして光の演出による、陰影が強調され生まれる独特の“色合い”がひとつになり、観るものを一瞬にして不思議の国に連れていってくれる。「夜、ユーミンを聴いて過ごすのが習慣だった」というJUJUが、『アリス・イン・ワンダーランド』のようにユーミンを聴いているうちにその世界に夢中になり、迷い込んだのが「大人による、大人のためだけの不思議の国」だ。演出の松任谷正隆が作り上げた世界に、JUJUの歌が溶け込み、より深い世界が醸成されていく。楽曲の世界観や季節に沿って変化していく、趣向を凝らした演出の大きなポイントになっていたのが、ダンサーのTAKAYUKIと岩室由美だ。2人はユーミンのバックダンサーでもあり、この物語の強い“差し色”になっていた。

 速いリズムとローズピアノの音色、ストリングス、コーラスが織り重なる「影になって」は、〈なんて不思議な なんて不思議な霧の夜なの〉〈真夜中は全てが媚びることもなく/それでいてやさしい〉という歌詞が、毎夜ユーミンを聴いていたという当時のJUJUの心模様を想像させてくれる。ユーミンの世界だけど、完全にJUJUの色になっている。この曲だけでなく、全曲がそうだ。バーのカウンターのセットで、少しアンニュイな歌を聴かせてくれる「街角のペシミスト」「ダイアモンドの街角」もその伸びやかな歌で、オリジナルの中に存在する切なさやユーミンの“空気”を立てながら、“JUJUの歌”を表現。「真珠のピアス」「リフレインが叫んでる」「DESTINY」などの人気曲はもちろん、カバーアルバムには収録されていない、JUJU偏愛のユーミンナンバーも多数披露した。

 後半、このツアーでは歌っていなかった「ひこうき雲」を初披露。繊細な表現で切々と歌うと、客席に感動が広がっていくのが伝わってくる。切ないメロディの「ダンデライオン~遅咲きのタンポポ」は、JUJUの抑え目の歌がより切なさを膨らませ、胸が締め付けられる。「守ってあげたい」では客席から大きな手拍子が起こり、JUJUは歌い終わると手で「♡」マークを作り、マイクなしで客席に「ありがとう」と感謝の気持ちを贈る。太いベースとギターのフレーズが印象的な「メトロポリスの片隅で」は、オリジナルに近いアレンジで、当時(1985年)の煌びやかなイメージを蘇らせてくれる。美しいストリングスが感情をくすぐってきた「卒業写真」でも、トーンを抑えた歌でスタンダードナンバーが持つ普遍性をしっかり伝えてくれる。

 ここでバンドメンバー紹介があり、素晴らしい演奏で物語を進めていったミュージックディレクター/ギターの石成正人をはじめ、天倉正敬(Dr)、SOKUSAI(Ba)、草間信一(Pf/Key)、Olivia Burrell(Cho)、Mayo Samira(Cho)、そしてストリングスチームというスーパーバンドの一人ひとりに惜しみない拍手が贈られる。本編ラストは「奇跡を望むなら…」を披露。不思議の国の空から射すひと筋の光のようなJUJUの歌が、客席の一人ひとりの心を潤す。

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