G-FREAK FACTORY 茂木洋晃、世の中に問う“選択とリスペクトの大切さ” 25周年に生まれた新しいモチベーションとは?

G-FREAK 茂木洋晃、選択とリスペクトの大切さ

手をつなぎ合わない世の中への皮肉と葛藤

ーー「STAY ON YOU」もそこに通ずる曲ですよね。「Dandy Lion」はポンとメッセージを置いてくるような歌ですけど、「STAY ON YOU」は今どうなんだって目の前に突きつけてくるイメージの曲でした。

茂木:ぐちゃぐちゃな葛藤の歌だよね。コロナだけではなく、戦争やAIにも完全に支配されてる俺たちへのもどかしさと悔しさ、不安。今あるものを何かに形容しながら語っていくことは、たぶん俺じゃなくても上手にできる人がいると思うんだけど、俺は今の状況をできるだけノンフィクションな表現に落とし込みながら「あー、わかる」って思えるギリギリのところを擦っていきたい欲があったから。そういう想いでレコーディングに臨んだ曲だね。

ーー歌い始めが〈素晴らしき愉快な世界にありったけの愛を〉ですけどーー。

茂木:ど皮肉でしょ。

ーー本当に、強烈に効いているなと思いました。

茂木:誰もがこんなに絶望してるのに、次に進もうよと言っても、まだ俺たちは手を繋がない。自分だけ良ければいい、みたいな社会がずっと続いてるわけでさ。変わらない美学があるってことも十分わかるんだけど、その変わらないやり方でいつまでも通用してると思ってる人たちは、そろそろ考え直した方がいい世の中なんだよね。ボロが出てしまうから。希望に満ちた曲を書こうと思っても、これだけみんなの苦しみが見え始めると、どうしてもこういう曲になっちゃう。

ーー「Dandy Lion」みたいに未来へ向けた曲を書いたことで、副産物的に生まれてくるのが「STAY ON YOU」ですよね。ある意味、この2曲で両A面と呼んでもいい作品なんじゃないかなと。

茂木:まさにそうだね。いつも画用紙にブワーっと曲のイメージを書くんだけど、そうやって紙面上にベンチ入りさせた言葉たちを、「これはAだな」「これはBだな」って左右に分ていくんだよ。まだ曲名も決まってない段階でいくつかフォルダ分けしていって、その角度が増えれば増えるほど「まだまだ書けるな」って思えるわけだけど。今回は「Dandy Lion」と「STAY ON YOU」がそうだった。

ーー「STAY ON YOU」のサウンドイメージ自体はどこから?

茂木:「とにかく余分なものを削ぎ落としてシンプルなバンドサウンドを作ろう」「2コードで行けるところまで行こう」って言いながらデモをメンバーに送ったんだよね。俺は普段から暗い音楽を聴きがちなんだけど、「STAY ON YOU」を作ってるときは70年代パンクを聴き込んだりしていたから、そうなったのかもしれない。コロナでとことんメンタルは落ちたけど、「Anarchy in the U.K.」(Sex Pistols)のイントロが流れたときみたいな、条件反射で高まる感じに戻りたいっていう想いがちょっとあったんだろうね。だから同じ青でも、せめて紺じゃなくて水色っぽくならないかなって思えたというか。

ーー〈一体お前はどこから来て 一体ここからどこに向かうんだ?/いつからお前は支配されて いつからかそれに慣れてゆくんだ〉という一節はアイデンティティを問い直すものであるとともに、先ほどの“何を選んで信じるか”という話にも通じますね。

茂木:そうだね。例えば震災(東日本大震災)のときを思い出しても、セシウム含有量がどうだのってあれだけ騒いでたのに、いきなり何事もなかったかのように消えていったじゃんか。スーパーで「この野菜にはセシウムがたっぷり含まれてるかもしれない」と信じて買わなかった人と、「いや関係ねえ」と言って知らん顔して食べて何事もなかった人だと、後者の勝ちみたいじゃん? コロナもいずれそういうものになっていくんだろうなって思うと、もうギャンブルだよね。そうやって情報やAIに踊らされて支配される俺たちだけが残っていくというのは、あまりにも切なくて寂しいなと思うんだよ。

 じゃあどうやってそこからディフェンスできるのかと言ったら、俺たちがネットから離れてみることしかないと思う。コロナ禍でものすごいスピードで世の中が進んだ気がするけど、俺はネットから離れることも覚えた。本来はそれで成り立っていたわけだからね。もちろん、コロナ禍ではオンラインとか配信によって助けられた部分もたくさんあるけど、やっぱりライブって対面だし、互いに空気を共有して作っていくものだってずっと信じてきたから、俺はそこで生きていきたい願望があって。最終的には時代に流されることなく、自分で選べる力・信じる力を養いたいし、これからの未来の人にもそういうものを持っていてほしい。そうしないと、ただ生かされてるだけのモルモットみたいになっていくぞっていうのは伝えたいことかな。まあ、もっと上手に伝えたいけど(苦笑)。

ーー25年続いてきたバンドとして、世の中に何かを残しておきたいという使命感もあるんでしょうか。

茂木:あるね。続けるためにバンドをやってるわけじゃないけど、俺が感じることが誰かの役に立てばいいなっていうのは強く思ってる。合ってるか間違ってるかは後になってみないとわからないけど、信じてくれるやつがいるんだったら嬉しいな。

「今の情勢でどうしたら一番カッコいいライブができるか、挑戦したい」

ーーダビーでドープな3曲目「唄種」を聴いていても、やっぱりG-FREAKは負の連鎖を越えてその先へ辿り着こうとするバンドなんだなと思いました。この曲は曲作りそのものについて歌っているような気もして、なかなか面白かったのですが。

茂木:そうそう。曲を書いてるときにストンと落ちて、布団で寝ない日々が続いて……っていうことを書いていて。ゆっくりと悲しくなって、聴き終わった後にすごく疲れる曲がやっぱり好きだから、そういう部分がちょっと出ちゃったんだろうね(笑)。デモだともっと暗かったんだけど、最後にサビを変えたんだよ。

ーーこういう曲をシングルに残したのはどうしてだったんでしょう?

茂木:コロナ前だったら、こういう曲が思い浮かんでも、ライブで振る舞うイメージが湧かなかったらきっとボツになってたと思う。けど今は汗をかかないで、曲を全身で浴びるようなライブだって多いわけだから、そこにはシンプルに“いい曲かそうでないか”しかない。だったら手法なんて何でもいいんじゃないかなって。お客さんの耳も肥えてるだろうから、なおさらこういう好きなテンポの楽曲で勝負してみようっていうモチベーションが生まれた。それってすげえ皮肉なことだけど、そこで折れてしまうか、追い風だと思えるかどうかで、バンドのこれからも変わるだろうなって。

ーーそして10月には日比谷野外大音楽堂での『25th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE』、12月には『山人音楽祭2022』も発表されましたが、昨年を経てライブへの向き合い方に変化はありますか?

茂木:例えば、これ(と言って壁にかかっている、コロナ前のパンパンのライブのポスターを指す)をイメージして、「なんかまだ違うよな」って言うのは簡単だけど、そうじゃなくて、バンドとして今の情勢でどうやったら一番カッコいいライブができるのかっていう挑戦を常々したいなと思う。野音にしても高崎(芸術劇場)にしても座席があるわけで。昔だったら椅子のある会場のライブは全部断ってたけど、今はもうオーディエンスも慣れてきて普通だよね。こうなったらホールでやってきたバンドの方が強いに決まってるわけで、俺たちが今新しくそこに挑戦できるのは嬉しいんだよ。

ーーこれまでもいいライブをすることが何よりの優先事項だったと思いますし、ホールを断ってきたというのは、ライブハウスでこそ真価が発揮されるバンドだと信じて研ぎ澄ませてきたからですよね。でも今は必ずしもそういう場所でなくても、いいライブをしていかなければならない。まさに新たな挑戦ですよね。

茂木:そうだね、していかないといけない。けどバンドがどこに向かうかって言ったら、もちろん満員のライブハウスに帰りたいという気持ちは消さないし、お客さんも戻りたいと思う。その目的ははっきりしてるけど、今はまだ違う。じゃあ、どうやってみんなに納得してもらうか、どうやって示していけるのかって言ったら、今できる場所で最高にいいライブをやらなきゃいけないわけで、それも1つのモチベーションになってるかな。どんなライブでも「ここが前より進化してる」っていうことを見せられなかったら、ただの惰性でしかないから、それはずっと問われてると思ってる。MC1つにしても、コロナを経てちゃんと自分が進化したもの、はっきり心の底から思えることが1個あれば負けないと思うんだ。

ーー今のバンドの状態についてはどう感じていますか。

茂木:悪くないよ。コロナを経て、メンバー個々のバンドへの捉え方が少し違ってきたかなとは思うけど。いっぱい予定が入ると「よし、行くぞ!」ってなるんだけど、予定がなくなるとすぐお休みしてしまう。要はみんな、休む癖を覚えたのよ(笑)。まあ人間っぽいんだけど、みんなもっと色々やってみればいいのになとも思う。そしたらもっとG-FREAKがよくなると思うし。だって今しかないぞ、広げられる時間。

ーーそうですよね(笑)。

茂木:俺はソロでアコースティックライブとかやってて、すごく難しいけど楽しいよ。そこからバンドに戻ればギターも持たずに歌わせてもらえるし、やっぱりメンバーみんな演奏が上手いなって思う。1人で外に出てみることで、そういうリスペクトも改めて持てるから。

ーーかと言って26年目以降の展望があるわけではないですもんね。

茂木:それは別にない(笑)。ただ散らかりすぎない程度に、もっと柔軟に色々できることを増やしたいなとは思う。簡単にできないことをやっていくことが一番楽しいからね。ずっとチャレンジ、ずっと修行だなって思う。

2022.09.14 release New Single G-FREAK FACTORY「Dandy Lion」初回特典DVD Teaser
G-FREAK FACTORY『Dandy Lion』

■リリース情報
G-FREAK FACTORY『Dandy Lion』
2022年9月14日(水)発売
・初回限定盤(CD+DVD):¥1,760(税込)
・通常盤(CD):¥1,100(税込)

<CD収録曲>
1. Dandy Lion
2. STAY ON YOU
3. 唄種
<初回限定盤DVD収録映像>
・2021年6月26日Zepp DiverCity(Tokyo)にて開催された『“VINTAGE” TOUR 2021~Final~』より
1. BE ALL AROUND」
2. SO LONG
3. 乞え~KOE~
4. 呉々も日の暮れと
・2022年7月3日『京都大作戦2022〜今年こそ全フェス開祭!〜』より
1. アンテナラスト feat.TAKUMA(from 10-FEET)
2. Fire
3. Too oLD To KNoW
4. ダディ・ダーリン

■ツアー情報
G-FREAK FACTORY『“Dandy Lion”TOUR 2022』
全会場チケット料金 前売り¥3,800(税込)※ドリンク代別
10月1日(土)岩手・KLUB COUNTER ACTION宮古
10月2日(日)岩手・大船渡KESEN ROCK FREAKS
10月8日(土)愛知・名古屋DIAMOND HALL
10月9日(日)福井・福井CHOP
10月14日(金)長野・長野CLUB JUNK BOX
10月30日(日)北海道・苫小牧ELLCUBE
11月4日(金)福岡・福岡BEAT STATION
11月5日(土)広島・広島SIX ONE Live STAR
11月19日(土)京都・京都MUSE
11月20日(日)大阪・大阪umeda TRAD
11月23日(水・祝)石川・金沢AZ
11月26日(土)新潟・新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11月27日(日)宮城・仙台Rensa

■ライブ情報1
『G-FREAK FACTORY 25th ANNIVERSARY ONE MAN LIVE』
10月23日(日)日比谷野外大音楽堂
開場17:15 / 開演18:00
指定席 前売り¥4,300(税込)全席指定

■ライブ情報2
『山人音楽祭2022』
開催日程:2022年12月3日(土)
会場:高崎芸術劇場(群馬県高崎市栄町9−1)
出演者:G-FREAK FACTORY/どんぐりず/BRAHMAN/NAIKA MC……and more
主催:DISK GARAGE/BADASS/上毛新聞社
企画・制作:DISK GARAGE/BADASS

G-FREAK FACTORY オフィシャルサイト
『山人音楽祭』公式サイト

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