ディカペラ、ディズニーの名曲とともに日本中を駆け巡る 綿密なアレンジで伝える楽曲本来のメッセージ

ディカペラ、来日ツアーレポ

 8月5日からディカペラのジャパンツアーがスタートした。3年ぶりの来日は、6人編成になって初めての公演。彼ら自身は、デビュー以来一番いい状態にあるという。ステージ後方には今回も巨大モニターが3台設置され、歌に合わせてディズニー映画のシーンが映し出されることから、心のワクワク感が何倍にも膨らむ。

 コンサートはオーケストラのチューニングのような「チューン・アップ」から始まる。6人の声が完璧に重なり合い、大きなうねりとなって会場に響く音は、ここから始まるライブの期待感を否応なく高める。そして、オープニングを飾るのは映画『リメンバー・ミー』からの「音楽がぼくの家族」。デビューアルバム『ディカペラ』の1曲目に収録されたこの曲は、歌詞に意味がある。歌う歓び、音楽こそが僕の言葉であり、世界は家族と歌う。そこに彼らの思いを受け取ることが出来る。歌詞は、ディカペラの選曲において重要な要素のひとつ。6人には、歌のメッセージを伝えたいという思いが強くあるのだ。

 前半は、彼らが得意とする“マッシュアップ”が聴きどころだ。有名なところでは映画『アナと雪の女王』からの「レット・イット・ゴー」と「雪だるまつくろう」がある。劇中の姉妹の関係そのままに、姉エルサの「レット・イット・ゴー」をメゾソプラノのケイレン・ケリーが歌い、そんな姉を追うように妹アナの「雪だるまつくろう」をソプラノのモーガン・キーンが歌って、最後に手を取り合って一緒に歌う。このマッシュアップは、何度聴いても胸が熱くなる。

 「ディズニーランドメドレー」では『小さな世界』、『カリブの海賊』、『ホーンテッドマンション』、『魅惑のチキルーム』と4つのアトラクションのテーマ曲を6人それぞれが歌い、メロディとボイスパーカッションが複雑に絡み合う。途中どの曲なのか見失う感覚もありつつ、最後にひとつの歌となる。あまりに緻密なアレンジを乱れることなく歌うテクニックは圧巻だ。

 また2つの新曲、映画『インクレディブル・ファミリー』と、映画『ポカホンタス』のマッシュアップでは、軽快なテンポ感に合わせて踊りながら、サックスなど管楽器の音も声だけで奏でられる。この2曲のうち後者は、プロデューサーのディーク・シャロンではなく、メンバーのRJ・ウェスナーが初めてアレンジしたもの。ケイレンとモーガンが熱唱するアレンジが新鮮で、メンバーだからこそ知る2人の生かし方のようなものが感じられた。

モーガン・キーン(ソプラノ)
ジョー・サントーニ(ベース)
オーランド・ディクソン(バリトン)
RJ・ウェスナー(テナー)
ケイレン・ケリー(メゾソプラノ)
アントニオ・フェルナンデス(ボイスパーカッション)
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モーガン・キーン(ソプラノ)
ジョー・サントーニ(ベース)
オーランド・ディクソン(バリトン)
RJ・ウェスナー(テナー)
ケイレン・ケリー(メゾソプラノ)
アントニオ・フェルナンデス(ボイスパーカッション)
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 そして、前半終盤、アントニオ・フェルナンデスのボイスパーカッションのソロパフォーマンスでは、目の前で展開されてもドラムのキックやスネアなど全てのリズムを本当にひとりで奏でているのか、信じ難いほど次々に多彩な音が発せられる。さらに続く曲「ハワイアン・ローラーコースター・ライド」(映画『リロ&ステッチ』より)ではバリトンのオーランド・ディクソンが声でエレキギターを再現。しかも甲高い音を奏でるのだ。ディカペラの進化ぶりがここにも表れている。

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