RINAが語る、ソロシンガーとして表現した“自分自身の心” 葛藤を和らげ優しく寄り添う歌にたどり着くまで

RINAが表現した自分自身の心

 ソロ1st Digital Single「Insomnia」をリリースしたソロシンガーのRINA。この曲は、おかもとえみ(フレンズ)と作詞を共作し、ケンモチヒデフミの楽曲提供というタッグで、アンニュイなトラックの中で心地良いボーカルを響かせた。早くも7月6日には2nd Digital Single「東京」を配信リリース、7月27日には3rd Digital Single「NANIKA」をリリースし、夏までに3作連続で新曲をリリースをする。バンド 集団行動のボーカルでもある彼女のソロ活動はどのようにして始まったのか。「東京にいる女の子」をテーマにした楽曲作りには、どんな想いが込められているのか。じっくりと話を聞いた。(上野三樹)

ソロシンガーとして歌いたいこと/鳴らしたい音

――今回のソロ活動に向けての想いはどのようなものだったんでしょうか。

RINA:私は2017年に集団行動というバンドでデビューして。これは色んなメディアでも言っていますが、もともとボーカルがやりたくて音楽を始めたわけではなくて、誘われた形だったので最初は受け身だったんです。それがコロナ禍でバンドが活動休止することになり、バンドを離れたときに、私自身がボーカリストとして何かできることがあるんじゃないかと考えるようになりました。今まで曲を作ったこともなければ歌詞も書いたことがなくて、バンドでは歌ってるだけの人に見えていたと思うんですけど。バンドで学んだことや音楽性を広げて、自分の良いところを活かしながら今までできなかったことをやってみたいなと思ったことが、今回のソロ活動のきっかけです。

――曲作りにあたって、まず最初に始めたことは何でしたか。

RINA:自分で歌詞を書いてみたかったので、まずは色んな方の詞を見たりして勉強しました。今の自分が伝えたいのはどういう言葉なんだろうと考えたりして。サウンド的にもバンドサウンドとはまた違うことがしたかったので、私に合う曲ってどういうジャンルなんだろうと探すところから。もちろん楽しさもあるけど、今まで考えたことがないことばかりなので大変でした。バンドで音楽活動をしていく中で培った人間関係から、ミュージシャンの先輩方に話を聞いたりしながら、探り探り進めていきました。

――どんな方に相談されたんですか。

RINA:元SHE IS SUMMERのMICOちゃんや、作詞も一緒にしていただいたフレンズのえみさん、元Awesome City Clubのユキエさんなど、女性ボーカルの方やバンドとソロの両方を経験されている方などを中心にお話を聞きました。

――そうした中で、だんだんイメージを固めていったと。

RINA:先に書きたい歌詞のテーマを決めて「この曲とこの曲をミックスして夜っぽい感じにしてください」みたいな(笑)、すごく抽象的な形で今回作曲していただいたケンモチさんにお願いしたりしました。

RINA「Insomnia」

――6月22日に配信されたデビュー曲「Insomnia」は歌詞がおかもとさんとの共作で、作曲がケンモチさんですね。

RINA:東京の街を歩きながらiPhoneのメモ帳に書いた断片的な歌詞をもとに、曲を依頼しました。ソロをやる上で、「東京にいる女の子」というのがひとつテーマとしてありました。バリバリ働いてはいるけど、満たされていない、ちょっと孤独な女の子。世の中には、表に出てないだけでそんな女の子がたくさんいると思っていて。もちろん男性でもいいんですけど、そういう人たちに寄り添えるような曲と歌詞でありたいというのがありました。

――そういう方に心を寄せることが自分の表現にも繋がると。

RINA:そうですね。私も地元の栃木から離れて、上京して10年が経ちまして。東京に来たら何かが変わるだろうなと思っていたことが、案外そうでもなかったみたいな(笑)。そんなにキラキラしたものじゃないんだなというのは、やっぱりあるので。かといって「頑張ろうよ」ということではなくて、「そういうときもあるよね」みたいな方向で書きたかったんです。

――「Insomnia」は〈やさしい空気の中/眠りたいな〉というフレーズが印象的です。ご自身が優しい空気の中で眠れるようなサウンドにしたいという気持ちもあったのでしょうか。

RINA:まさにそうです。基本インドア派の私は、たまにひとりで気分転換にビジネスホテルに泊まったりするんですけど。「Insomnia」を書いていたときは渋谷駅の近くのホテルに泊まっていて、部屋から高速道路が見えるんですよ。私は眠れないことも多くて、朝の4時くらいにだんだん空が白くなってきているときに、高速道路を走る車が止まらなくて。こんなに静かな朝なのに私の心はざわついているし、高速道路はうるさいし。優しい空気感の中でみんなが安心して寝れないかなと思って書き始めました。

――そこから、おかもとさんと歌詞を仕上げていく作業はどういうものだったんですか。

RINA:書きたいサビが先にあったんですけど、「このサビをAメロとBメロにどう繋げていったら良いかわからないんですよね」といった相談から始まって、「良かったら共作しませんか?」って。普段からご飯に行ったりさせていただいてるので、そのノリでお願いして、家に来てもらって。「まずは部屋から見えるものから書いてみよう」と。もともとはホテルの部屋の風景だったものを、もうちょっと日常的にしていきながら全体の流れを一緒に書いていきました。女の子が夜に聴いて、何も考えなくても曲がスッと入ってくるような歌詞が良いなと思っていたんですけど、思ったよりメッセージ性が強くなりました。でも、押しが強すぎないものにはなったかなと思います。

――優しい歌い方も曲の内容を意識されたものかと思いますが、その辺はいかがですか。

RINA:バンドと違って地声に近い、もともとの自分の声の波長に合った音域で曲も作ってもらって歌いました。その方が聴き馴染みのあるものになると思うし、夜に聴いて心地良いローな部分の声、角が丸い声を意識して歌いました。

「東京の街を少しだけ好きになれたら、自分のことも好きになれる」

――そして7月6日には第2弾の「東京」が配信リリースされました。こちらもイントロのピアノの音色が印象的な、素敵な曲ですね。

RINA:実はこの曲が「Insomnia」より先に、ソロとして最初にできた曲で。実際にひとりで渋谷を歩きながら歌詞を書いた曲です。夕方から夜にかけて歩いて、その足の感覚や、歩いている女の子を見たりしながら。センター街を過ぎたあたりで〈履きなれた靴でも 擦れちゃう〉という歌詞がふと思い浮かんだりしました。毎日同じことをしたり、毎日同じ鞄や靴を使っていても、どこかで壊れたり、今日は何か痛いなと感じることもある。毎日全てのことがピタッとハマるように生きてる人っていないんじゃないかなと。でも、そのズレや違和感って周りの人がわかることじゃないから、そんな自分も抱えて愛して生きていけたら良いのになって。だから、自分に向けて歌ってるところもあるのかもしれないですね。

――東京の街を歌うというテーマを持ったときに、そうしたご自身の内面が出てきたんですね。

RINA:そうですね。まつきりなさんが出演されている短編映画『触れた、だけだった。』にインスパイアされたところもあります。その作品自体は恋愛の話ですけど、私も東京という街にただ触れただけだったかもしれないって。触れてみたら世界が変わるんじゃないかという思いでみんな東京に来るけど、中身は意外と空っぽだったなと感じることもあるし。憧れをずっと引きずりながら、寂しさや悲しさや腹立たしさを感じながら、それでも諦めきれずに期待しちゃう東京という街を、この曲で表現できたらと思いました。

――RINAさんが10年前に栃木から上京したときの気持ちってどういうものでしたか。

RINA:私は進学で上京したんです。第一志望だった地元の大学に落ちちゃって、その2週間後くらいにバタバタと上京することが決まったので、寂しいと思うような余裕もなくて。地元の人からしたら「東京に行くんだ、すごいね」みたいな感じなんですけど、私はただ行かなきゃいけない状況だったので。上京したときの、親が東京まで車で来てくれて、帰る瞬間の感覚は今も忘れられないですね。急にひとりになった寂しさとプレッシャーが押し寄せてきて。そこから大学4年間、多摩市に住んでいたので大都会ではなかったんですけど、お休みに栃木に帰って東京に戻る電車の中でお母さんが持たせてくれたおにぎりを一口かじって号泣したりとか。両親に期待されているのに、頑張れているのかわからない、その葛藤は20歳くらいのときにもありましたね。

――それでも東京に期待していたというのは、大学に行きながらも、いつか芸能のお仕事をやりたいなとか、そういうことも含めてだったんですか。

RINA:そういう気持ちはなかったんです。私、20歳までバレーボールを11年半やっていたんですよ。それをやめて暇になって、「これから何しよう?」と思ったときにそういえば小さい頃、お母さんが私にオーディションを受けさせたりしてたなと思い出して。今からできるかもしれないとか、21歳になって思った自分が怖いんですけど(笑)。「東京といったら芸能界でしょ」みたいなノリで、飛び込んじゃいました。

――急にスイッチが入ったんですね(笑)。

RINA:急にです。大学で救命士の勉強をして、中学高校の先生の免許を取ろうと思って上京してきたのに、急に夢が変わっちゃって。でもそれも東京の面白いところだと思います。地元にいたら絶対に踏み入れなかったでしょうし、東京って色んなことができちゃう街だなと実感しています。同じような思いを抱えた人たちに、「この東京の街を少しだけ好きになれたら、自分のこともちょっとだけ好きになれるんじゃない?」っていう提案を添えて、この曲を作りました。

RINA「東京」

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