2022.07.08 18:00

RINAが語る、ソロシンガーとして表現した“自分自身の心”　葛藤を和らげ優しく寄り添う歌にたどり着くまで

文・取材＝上野三樹、写真＝梁瀬玉実

役者を経たからこその“肌で感じるような歌い方”

――さらに今回は第3弾配信リリースの「NANIKA」も聴かせていただきました。この曲がご自身の核となる部分にぐっと踏み込んだ表現になっているように感じました。

RINA：「NANIKA」は実は私が書いた歌詞ではなくて、集団行動の真部（脩一）さんにソロのために歌詞も曲も書いていただきました。今の自分がひとつのテーマで何曲も書いていくと似通った作品になってしまうのが嫌だなと思って、1曲は誰か別の方にお願いしようと思っていたんです。バンドのメンバーとはプライベートの話をよくするんですけど、コロナ禍で私が心と体の調子を崩していた時期があって、そんな時に「こんな世の中でどうやって生きていく？」みたいな深い話をして。私は本当に何かになりたいんだけど、何になったら良いのかも、何になれるのかもわからない。でもやっぱり何かになりたいんだよねって話を何時間もして。その結論が、解決できないねってことだったので、「歌詞でも解決できなくて良いんじゃない？」って。そんな話をもとに書いてもらったのが「NANIKA」です。

――だから、シリアスに自分と向き合っている曲に仕上がったんですね。

RINA：そうです。私のプライベートな部分を真部さんが代筆してくれました。

――ソロの曲を真部さんが書くという、それも面白い展開ですよね。

RINA：そうですね。今まではバンドの曲が上がってきて、それを私がどう歌うかってことしか考えてこなかったので。今回は「こういう歌詞で、こういう曲が歌いたいんですけど作ってくれますか」という逆パターンだったので新鮮で。「こういうやり方もできるんだ！」と思いました。そうなると真部さんからも、今までの作風とは違う曲が出てきて。

――確かに。この3曲のトーンには統一感がありますもんね。「NANIKA」も、やはりバンドで歌うときの感覚とは違いますか。

RINA：全然違いますね。バンドの曲は架空の主人公がいて、そこに私が入り込む感覚なんですけど。ソロだと“自分”を歌っている、自分を演じているような感覚はあります。感情の入れ方も自分の感性を信じてやっています。

――「NANIKA」は特に、“私”を歌う、ということをされましたね。

RINA：そうですね。自分がコロナ禍で見たことや感じたことを、心で思い出したり触れたりしながら、それを肌で感じ取るように歌えた曲です。肌で歌うというのは、すごく感覚的なもので、これも役者の仕事を始めたからだと思うんですけど、歌っているという感覚より、曲の中で自分のことを触っているような感じです。役者をしているときも、相手の心に触れたり、相手との思い出を思い起こしながら話すんですけど、その感覚に近いです。そのときの自分に触れている感覚。だから歌っているときに、辛かったことを思い出して泣きそうになったりするんです。コロナ禍で毎日ニュースを見ても疲れてしまうし、これはいつまで続くんだろうっていうモヤモヤや謎の焦りを繊細に思い起こしながら歌った曲になりました。

――でも最終的には、こんな時代だけど音楽で優しい居場所を作ろうとされたのかなと、心地良い歌声を聴きながら思いました。

RINA：そうですね。苦しかった日々のことも曲や歌詞にしてこの3曲を作れたことで、昔の自分が許される感覚がありました。だから、やっぱりやって良かったなと思います。作っている最中はそれどころじゃなかったですけど、作ってみて、やっぱり自分のためでもあったんだと。音楽から流れてくる空気感で、この世界に生きていて感じる角をとにかく丸くしたかったんです。

――役者やモデルのお仕事もされていますけど、音楽で、しかもパーソナルな表現を今のRINAさんは求めていたんでしょうね。

RINA：はい、すごく必要だったんだと思います。役者をやるようになって、音楽とは違う世界を学んだし、それを今度は音楽にどう活かすかというのは常に考えていることなので。今回のソロにおいても、歌い方やパーソナルな部分の出し方などは、この2年で役者の勉強をしてこなければできなかったと思います。今回こうして自分を出せる場を持てたことはとてもありがたいことでした。なので集団行動のファンでない方にも、先入観なしに聴いてもらえたら。私の名前も顔も知らなくても、何気なく耳にした曲を「あ、良いかも！」と思ってもらえたら一番嬉しいです。