SOMETIME'S、YAJICO GIRL迎えた『2man Live Series “League”』 音楽性も世代も異なる2組のリンク

SOMETIME'S、YAJICO GIRL迎えた2マンレポ

 Life Goes On。YAJICO GIRLもSOMETIME'Sも、奇しくも本編最後の1曲でこの言葉を歌っていた。音楽性も世代も異なる2つのバンドが、予期せぬところでふっとリンクする。こうした偶然も2マンライブの面白いところだろう。前者はゴスペルからの影響を反映した、ゆったりとしたグルーヴに乗せて。後者はチアフルなブラスと軽快なピアノが映えるポップソングに乗せて、「人生は続いていく」と歌っている。

 YAJICO GIRLのそれが内省的な歌詞であるように、もちろんその言葉の文脈には違いがあるだろう。だが、朗らかな演奏に乗ったその言葉には間違いなく前向きな希望が宿っていたはずだ。暗い影を落とすような社会にあって、今聴きたいのはこんな歌である。

 SOMETIME'Sが『SOMETIME’S Presents 2022 2man Live Series “League”』を主催した。4月、6月、8月と、2月おきに計3本の対バンライブを行う企画で、その第1回目が今回のライブである。自身らのMCで、SOTAはこのライブについてこんな風に語っていた。

 「リーグには“同盟”という意味もある。やめていく人が年々増えていき、33歳になった今、10代の頃からライブハウスに出入りしている仲間は片手で数えるくらい。だったら見つければいいじゃないかと思い、このツーマンを企画した」。10代の頃からライブハウスで腕を磨いてきた彼らにとって、何よりも情熱を共有できる場所がここなのだろう。その一発目のゲストとして招かれたのが、YAJICO GIRLである。

 先行のYAJICO GIRLがステージに立つ。SEはHi'Specの「Main」。映画『きみの鳥はうたえる』でお馴染み、抒情的でありながら、どこかひんやりとした質感が印象的なトラックだ。ハウスからの影響が窺える1曲目、「どことなく君は誰かに似ている」への導入としてムードを作っている。懐かしさを感じる音色で聴かせる「VIDEO BOY」、チャーミングなトラックが印象的な「雑談」と、ライブの冒頭は新作『Retrospective EP』から。『アウトドア』収録の「WAV」まで、ダンスミュージックからの影響を感じる楽曲群が、フロアを心地良い空気に変えていく。

 「Better」を終えたところで挨拶を含んだMC。メンバーたちの表情は朗らかだ。「街の中で」と「NIGHTS」は歌詞の粒が頭に浮かんでくるような歌唱と、歌を引き立てるゆるりとした演奏、内に秘めた情熱を感じる四方颯人の声がカッコいい。ネオンで灯る、彼らのアイデンティティを謳った「Indoor Newtown Collective」も、良い空気を醸し出している。演奏越しに夜の街の風景が浮かんでくるような、そんなステージである。

YAJICO GIRL(写真=りゅーじ)
YAJICO GIRL(写真=りゅーじ)
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 本人たちも語っていたように、本当にあっという間の時間である。BPMを落とした『インドア』以降のアレンジで聴かせる「いえろう」。パーカッシブな打ち込みと、あたたかくノスタルジックな音色が魅力的な「FIVE」。そしてコーラスとハンズクラップで一体感を作った「Life Goes On」と、穏やかなバイブスを投げかけるようなサウンドが印象的である。そこで歌われる四方の声はエモーショナルで、心のひだに触れるような音楽が奏でられた。

YAJICO GIRL(写真=りゅーじ)

 ホストのSOMETIME'Sは、鍵盤、サックス、トランペットを含む8人編成で登場。第一声はSOTAのファルセット。しっとりとしたイントロから、徐々に熱を帯びたアンサンブルへと変わっていく「I Still」である。錦鯉の「こんにちわー」を模したと思われる、「こんばんはー!」という挨拶も、彼のショーマンシップの表れだろう。

 それにしても晴れ晴れしいサウンドショーだ。続く「Stand by me」や「Honeys」では全身で音楽を楽しむような、SOTAの野生的で快活なボーカルと、TAKKIの痛快なギターソロ。藤田道哉(Manipulator)、佐々木恵太郎(Ba)、冨田洋之進(Dr/Omoinotake)、清野雄翔(Key)、大泊久栄(Tp)、永田こーせー(Sax)といったサポートミュージシャンたちによる華のある演奏が耳を惹きつける。腰を刺激するリズムが気持ち良い「Get in me」、映像を喚起するようなドラマティックなメロを聴かせる「Never let me」と、冒頭から爽快な気持ちにさせられる。ユーモアを交えたMCも魅力的で、「(ライブハウスに来た人には)音楽を楽しむ権利があるので、最大限行使して楽しんで」という言葉が印象的である。その言葉の背後には、彼自身のライブハウスでの経験と美学があるように思う。

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