SOMETIME’S、ついに実現した渋谷WWWワンマン 良き歌とサウンドで真っ向勝負、ライブだからこそ味わえる魅力も

SOMETIME’S、WWWワンマンレポ

 ハロウィンでにぎわう週末の夜、渋谷WWWで『SOMETIME’S New EP Release Tour 2021』東京公演が開催された。ネクストブレイクの期待値高いアーティストを一目見ようと、客席も関係者席も渋谷の街のようなにぎわいだが、ホーンセクションやパーカッションを含む総勢9名がひしめくステージ上も、実に壮観。1曲目「SUNRISE」から、ライブハウスの壁を震わすほどの音圧と、ラテンやファンクを飲み込んだ強靭なグルーヴが炸裂する。

「お待たせしました。最高の夜にしよう!」

 満面の笑みで叫び、歌いまくるSOTA(Vo)のパワフルな歌声と、ポーカーフェイスで鋭いカッティングを決めるTAKKI(Gt)のプレイは、正反対のように見えて絶妙なコンビネーションで絡み合う。「シンデレラストーリー」「My Love」と、次々繰り出される楽曲は、シティポップ的な洒落た洗練と、ラテンやソウルの粘っこくアーシーなフィーリングが共存する。とにかく明るく、華のあるパフォーマンスが理屈抜きで楽しい。

 コロナ禍で4カ月延期になってようやく実現したこのライブ、最初のMCタイムで「思ってたより3倍くらい楽しい」と口にした、TAKKIの言葉は本音だろう。「It’s OK」「Raindrop」と、曲はメジャー調からマイナー調へと移り変わり、ジャズやハウスの要素も加えながら徐々にディープな方向へ。ベーシストがシンセベースを弾く「Get in me」は、アダルトなクラブジャズのムード漂う中、TAKKIがストイックなカッティングとエモーショナルなギターソロを鮮やかに弾き分ける。一見クールで、しかし熱く決めるところは決める、TAKKIはかっこいいギタリストだ。

 SOTAも負けちゃいない。「HIPHOPMAN」では、70’s/80’sダンスクラシックスを現代的にアップデートしたようなサウンドに乗ってオーディエンスを踊らせ、「Take a chance on yourself」では、ラップスタイルのボーカルを決めて盛り上げる。オーディエンスにクラップをうながしてグルーヴを一つにし、「いい感じだ!」と叫ぶSOTA。絶やさない笑顔と人を巻き込む力、まさにフロントマンにふさわしい男。

 “お洒落な音楽をやっているけど、横浜の泥臭さが抜けないところがいいね”、横浜を中心に活動してきた過去のキャリアを知るスタッフから、最近そう言われたとSOTAがうれしそうに話している。なるほど、SOMETIME’Sをうまく言い表す言葉だ。TAKKIがアコースティックギターを爪弾き、二人だけで奏でる「迎灯」の、「しっとり」を超えて「じっとり」に近いホットな表現力。ピアニストを加えた3名による「KAGERO」の、せつないラブストーリーの域をはみ出すリアリティ。技術や声量だけでは語り切れない、人間力がにじみ出る歌。

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