AKB48グループ、坂道シリーズの未来にも影響? 時代と共に変化する、女性アイドルによるSNSとの付き合い方
アメリカの自動車メーカー、テスラのCEOで実業家のイーロン・マスクがTwitterを買収。そのニュースを受けて、「Twitterが有料化されるのでは」との噂が広がった。そういった事実は現在発表されていないが、もし仮にそうなれば、Twitterを情報告知媒体として活用し、メンバーのパーソナリティも発信することでファンを増やしてきたアイドル業界にもさまざまな変化が生じるはずだ。
AKB48グループらも例外ではない。ここまで発展を遂げることができたのは、テレビ、ラジオ、紙媒体、ネットメディアへの露出だけではなく、SNSの影響も多大にあっただろう。特に『AKB48選抜総選挙』のような投票によって順位が決まる企画では、自分の言葉や行動がダイレクトにファンに伝わったり、コミュニケーションがとれるツールはかなり重要視されてきたように思う。
宮脇咲良が自撮りをSNSに載せ続けた理由
アイドルとSNSなどのコミュニケーションツールの関係性を説いたテレビ番組として、筆者が印象に残っているのが『Momm!!』(TBS系)の2015年11月23日放送回である。同回には、当時HKT48に在籍していた指原莉乃、兒玉遥、宮脇咲良らが出演。そのなかで宮脇は「SNSに毎日、自撮りを載せている。そうすると人気が上がるんです。あと、ファンと交流すると人気が上がる。人気を上げて『総選挙』で高い順位を目指す」と活用目的を明確に語っていた。
twitter始めました、宮脇咲良です。
Instagram👉https://t.co/0xHDyOl9zq
よろしくお願いします🐶 pic.twitter.com/DBvmLIfeU1
— 宮脇 咲良 (@39saku_chan) September 1, 2016
宮脇はまさしく、SNSを突破口にしたメンバーのひとりだった。書籍『日経エンタテインメント! HKT48 Special 2019』(2019年/日経BP社)のインタビューでも、「何を頑張るかは、ずっともがき続けていて。チャンスを待っているだけでは絶対ダメなので、SNSと握手会などでファンの方との交流を深めていきました。SNSでは、ラジオ番組みたいな感じで、自分で企画を考えてしゃべったら、ファンの方が喜んでくださいました」というように、かなり重きを置いていたことが分かる。
彼女が広く知られるようになったのは、2019年まで運営されていたSNS「ぐぐたす」ことGoogle+への記事投稿だ。なかでも2012年3月28日に投稿された内容は、多くの読者の心をつかんだ。東日本大震災の被災地を訪問した際、津波で亡くなったAKB48のファンの男性にお線香をあげたこと、その母親が息子の思い出を笑顔で語ってくれたこと。そして津波の被害があった場所へ足を運び、そこで見た意外な光景。そこには宮脇の素直な感情が綴られていた。
宮脇にとってぐぐたすは思い入れが深かったようで、2018年11月14日放送のラジオ番組『今夜、咲良の木の下で』(bayfm)でも、運営終了のニュースを受けて「ぐぐたすには自分の青春が詰まっていた。記事内容を書籍化してほしい」と語っていたほどである。
中井りかが口にしたアイドル史に残る名言
HKT48のメンバーだった田島芽瑠は、ぐぐたすで奮起したという。書籍『HKT48 成長記 腐ったら負け』(2015年/角川春樹事務所)のなかで、研究生時代にセンターを任されたことについて「急にセンターになって、よく思わないファンの方もいるんだろうなって思いましたし、実際、Google+のコメントに、『なんでお前がセンターなんだよ!』って書き込みがありました。でも私は、そういう人たちのことが好きなんですよ。だって、わざわざ書き込んでくれるってことは、結局、私のことを気にしてるってことだから。当時、Google+のコメントが全然少なくて。そういう人の意見でもコメントが埋まるだけでありがたいって思いました」と明かした。批判的な意見を寄せられて、苦しんだこともあったはず。それでも彼女はそれを成長する材料にしていった。
ちなみにSNSの使い方がおもしろいメンバーとして、筆者個人としていつも刺激的に感じているのは、NGT48の中井りかである。“炎上女王”と称されているが、その媚びないスタイルは痛快の一言。2018年年明けのSHOWROOM配信で、アンチなコメントをする視聴者に向けて言い放った「元旦から嫌いな人の配信を見て楽しいですか?」という言葉は、アイドル史名言とも受けとれる。SNSにおけるネガティブな要素を、まったく別の次元へ昇華させるやり方は、“SNS芸の頂点”と言って良いだろう。ファンもアンチもメディアも、ついその発言に目を向けてしまう。これこそが中井のすごさである。
Instagramで人気をさらに上げていったメンバーとして、真っ先に思い浮かぶのは元AKB48の小嶋陽菜だろう。インスタを通してファッションアイコンとしての存在感を高めたことが、ファッション関連の仕事につながる要因になったのではないだろうか。投稿される写真の質感も抜群に良く、まるで映画のワンシーンのようである。
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坂道シリーズに目を向けてみると、Twitterは写真集の情報発信用にアカウントが開設されているのみ。Instagramは一部メンバーに限られ、主なコミュニケーションツールは、ブログやメッセージアプリ、そしてSHOWROOMの配信となっている。ただ、乃木坂46時代の白石麻衣のTwitterアカウントは、写真集の情報発信のなかに遊び心を忍ばせていた。“食べ石さん"というハッシュタグのシリーズが人気をあつめ、メキシコ料理屋で注文したタコスが来るまでナチョスでつなぐ姿(2016年12月21日投稿)などに笑わされた。