男女に留まらない愛の描写が新たな選択肢に 平成から令和、ラブソングのMVに見る変化

平成から令和、ラブソングのMVに見る変化

 春の訪れに、どこか浮き足立つ自分がいる。2月のバレンタインにはドキドキするようなラブソングが街を彩り、それが過ぎると今度は卒業や入学、環境の変化による別れと出会いを扱った曲が街に溢れるようになるのだ。こうして私たちは、季節のうつろいを音楽でも感じることができる。とりわけ、この時期には恋や愛に思い馳せるイベントが続くもの。

 いつの時代もラブソングは我々の心を優しく包み込んでくれる。片思いで不安な日々に寄り添い、両思いに浮かれた気持ちを後押しし、時には手痛い失恋を慰めてくれる。時代によって表現に差はあれど、「愛」や「恋」を歌ったラブソングはミュージックシーンにおいて取り上げずにはいられないテーマだろう。同時に、こうした楽曲のMVが我々を癒してきてくれたことにも注目したい。MVは楽曲という目に見えないものに映像を乗せ、物語を描き、より深く作品を味わうための道しるべとなってくれるのだ。

 平成時代を代表するラブソングとそのMVといえば、 花びら舞う中でギターを奏でるYUIの「CHE.R.RY」や、教会でウェディングドレスのような衣装に身を包む浜崎あゆみの「M」、若かりし日の鈴木えみと萩原聖人が出演するケツメイシの「さくら」などが挙げられる。曲の世界観をファンタジックに表したり、時には映画さながらの色濃い物語が描かれることも。

YUI 『CHE.R.RY-short ver.-』
浜崎あゆみ / M
ケツメイシ「さくら」

 では昨今のラブソングをはじめとするMVはどうだろうか。令和になり、価値観はより多様化。IT技術は日々進化し、ファッションやメイクも大きく変化した。その中で特に大きな一歩と言えるのが、ラブソングを描くMVが「男女」の物語だけにフォーカスしなくなったことだろう。

 もちろん過去にも同性同士の恋愛を思わせる演出や、そうしたテーマのMVは作られていた。しかし令和になり、「男女」に留まらない愛の描写は、より自然と「愛」の中に取り入れられていったように思う。例えばマカロニえんぴつの「キスをしよう」やOfficial髭男dismの「I LOVE...」のMVには、幅広い愛が描かれている。同性愛、異性愛に留まらない様々な愛の形が、ただそこに存在する尊い気持ちとして表された。

マカロニえんぴつ「キスをしよう」MV
Official髭男dism - I LOVE...[Official Video]

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