『東京ラブストーリー』『ロンバケ』から『花男』シリーズ、『恋つづ』まで 平成~令和の恋愛ドラマ主題歌の共通点
ラブストーリーを思い起こす時、必ず頭の中ではそれを盛り上げたラブソングが流れるはずだ。恋愛ドラマにラブソングは欠かせない。そこで今回は平成から令和にかけて放送された恋愛ドラマの主題歌の中から、特に代表的なものを10曲選んでみた。
『東京ラブストーリー』(1991年)「ラブ・ストーリーは突然に」小田和正
何と言ってもこの曲は欠かせない。恋愛ドラマのみならずドラマ主題歌の概念を変えた曲だと言っても過言ではない。いまでは「トレンディードラマ」の代表作のように言われることも少なくない『東京ラブストーリー』だが、実際には「脱・トレンディードラマ」としてフジテレビ「月9」枠が「純愛」路線に舵を切った記念碑的なドラマだ。それを〈あの日 あの時 あの場所で〉と圧倒的にキャッチーなフレーズで盛り上げた。実は最初に小田が書いてきた曲はこれとは全く違う「シャッフル系のノリのいい曲」だったという。しかし、プロデューサーの大多亮はたとえ相手が大物ミュージシャンでも臆せず、それが流れる場面で視聴者みんなが号泣するイメージのものに作り直すことを要求した(※1)。そしてできたのが「ラブ・ストーリーは突然に」だった。劇中、印象的な場面で繰り返し流す手法は当時としては革新的で「主題歌」=オープニングorエンディング曲という概念を超え、ドラマの盛り上がりとともに空前の大ヒットとなった。
『101回目のプロポーズ』(1991年)「SAY YES」CHAGE and ASKA
改めて『101回目のプロポーズ』が『東京ラブストーリー』と同じ年の「月9」で放送されていたことに驚く。本作でも『東京ラブストーリー』同様の手法が採られ、主題歌であるCHAGE&ASKA(現CHAGE and ASKA)の「SAY YES」は劇中繰り返し使用され、「ラブストーリーは突然に」と合わせてドラマ主題歌=ヒット曲を生むという流れを完全に作った曲だといえるだろう。このときも大多はゆっくりしたテンポに難色を示したという。けれど何度か聴くうちに鈴木保奈美と織田裕二が走り回るシーンに「ラブ・ストーリーは突然に」のテンポは合っていたが、武田鉄矢と浅野温子のテンポには「SAY YES」が合うと考え直した(※2)。いかにドラマ本編とその曲のテンポやムードが合致しているかが重要かを示している曲だといえるだろう。
『高校教師』(1993年)「ぼくたちの失敗」森田童子
フジテレビ(特に「月9」)が比較的明るい恋愛ドラマを作っていたのに対し、TBSでは恋愛ドラマでも社会派やシリアス系のものが多かった。その代表的なものが野島伸司脚本の『高校教師』だろう。高校教師と女子高生という“禁断の愛”を描いた本作は主題歌も独特。1970年代にアングラで活躍しすでに引退していた森田童子の楽曲「ぼくたちの失敗」を起用したのだ。その切なく儚い歌声がドラマの内容とリンクし、リバイバルヒットを果たした。野島作品ではこうした過去の名曲を使用することが多く、ドラマがその曲に新たな魅力を加えることができることを証明している。
『ロングバケーション』(1996年)「LA・LA・LA LOVE SONG」久保田利伸 with ナオミ・キャンベル
木村拓哉が満を持して連ドラの恋愛ドラマ主演を果たした『ロングバケーション』で主題歌に起用されたのは久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」。思えば久保田利伸は「月9」のトレンディードラマ路線のスタートである『君の瞳をタイホする!』の主題歌(「You were mine」)も歌っており、その「月9」の「金字塔」ともいえる本作でも主題歌に選ばれたのは必然といえるのかもしれない。また、主人公である瀬名がピアニストという設定のため劇中では数多くの曲も使われる音楽ドラマで、サウンドトラックも大ヒットした。
『僕の生きる道』(2003年)「世界に一つだけの花」SMAP
SMAPの楽曲は、SMAPのメンバーが主演するドラマ主題歌に使われることが意外と少ない。そんな中でなぜか草彅剛主演ドラマにはSMAPの曲が起用されることが多い。中でも印象的なのが『僕の生きる道』の「世界に一つだけの花」だろう。恋愛要素だけではなく「死」という重いテーマを扱った本作を、アルバム収録曲で「隠れた名曲」だったこの曲が寄り添い、SMAPのみならず日本を代表する曲となった。