中島美嘉、ラブソングに表れる生き方 「雪の華」「STARS」などへの解釈や、恋愛観の変化についても明かす

中島美嘉、ラブソングに表れる生き方

 2001年、自身も出演したドラマ『傷だらけのラブソング』(フジテレビ系)の主題歌「STARS」でデビューした中島美嘉。その後も「愛してる」「雪の華」「ORION」など珠玉のラブソングを数多く世に送り出してきた彼女だが、“愁いを帯びた、切ないラブバラード”こそ、歌手・中島美嘉の真骨頂であることは間違いないだろう。

 今回リアルサウンドでは特集「ラブソングが映す時代の変化」として、中島美嘉にインタビュー。デビュー20周年を経て、初のセルフプロデュースアルバム『I』のリリースも決定している中島に、“あなたにとってラブソングとは?”というテーマで話を聞いた。(森朋之)

中島美嘉の人生に響いたラブソング

ーーまず、中島さんが好きなラブソングを教えてもらえますか?

中島美嘉(以下、中島):普段、歌の入った音楽はあまり聴かないんですけど、最近やたらと頭のなかで回っているラブソングがあって。広瀬香美さんの「愛はバラード」という曲で、〈忙しい毎日に 追い越されてしまいそう/あなたがいてくれるからね なんとか大丈夫〉という歌い出しなんですけど、もしかしたら私が忙しかったから響いたのかな(笑)。もともとは姉が好きな曲で、私もデビュー前からよく聴いていて、カラオケでも歌っていました。

ーー1995年リリースの曲ですね。どういうところが好きなんですか?

中島:サビで〈二人の愛は バラードがいい/すごくゆっくり 進むのがいい〉と歌っているんですけど、以前はよくわからなかったんですよ。でも、この年齢になるとすごくわかるんですよね。以前は他の部分に共感していたんですけど、今は「そうだよね、穏やかにゆっくり過ごしたいよね」と思うから、ずっと長く聴いているんだと思います。あと、友達の加藤ミリヤちゃんの曲もしょっちゅう聴いてますね。生々しいラブソングが多くて、「さすがだな」って気分がよくなるんです。恐れずに表現する人だし、カッコいいなと思います。

ーーDREAMS COME TRUE「やさしいキスをして」をカバーしたこともありましたね。

中島:ドリカムもずっと好きなアーティストですね。意外と暗いラブソングが多くて、私はそっちの方が好きなんです。「やさしいキスをして」は冒頭からグッと掴まれるんですよ。

中島美嘉 『雪の華』

ーー中島さんにも素晴らしいラブソングがたくさんあって、特に「雪の華」はいまやスタンダードとして親しまれていますが、どう感じていますか。

中島:ありがたいですね。「雪の華」は大人っぽいラブソングというか、ここで描かれている関係性ってはっきりしないんですよ。レコーディングしたのは20歳くらいのときなんですけど、その頃は意味がよくわかっていなかったんです。「この2人はどんな関係なんだろう。会えたの? 会えていないの?」って(笑)。でも、ずっと歌っているうちに自分のなかで解釈が決まってきたというか。正解はないから、聴いてくれる方には好きなように受け取ってほしいんですけどね。

ーー中島さんが手がけた歌詞についても聞かせてください。まず「aroma」(2003年)は〈最後にあいつが愛した香り達〉というフレーズもそうですが、どこか官能的な匂いを持った楽曲ですね。

中島:まず〈あいつ〉という表現がすごいですよね。当時は若かったせいか、言葉が強めなんですよ。何で〈あいつ〉という言葉を選んだのかはわからないんですけど……もしかしたらイライラしていたのかも(笑)。「aroma」の歌詞はほぼ空想なんですけど、“香りで人のことを思い出す”という感じを表現したかったんです。今聴いてもいいなと思うし、大好きな曲の1つですね。

ーー「Love Addict」(2003年)の〈愛に狂う女は美しい〉というラインもすごいインパクトですけど、どういうイメージで書いていったんですか。

中島:カッコつけているわけじゃないんですけど、「こういうことを書こう」と思って書くことは少ないんですよ。音を聴いているうちに、頭のなかにイメージが浮かんで、それを文字として書き起こしている感覚というか。絵を描くことに似ているのかもしれないですね。あと、基本的には頭から書かないと気が済まない。「これはいいな」と思えるラインが浮かぶと、そこから一気に書くことが多いです。

中島美嘉『Love Addict』 Music Video

「気持ちを抉るようなラブソングを歌うことが多い」

ーー「ヘムロック」(2005年)の〈重ねてる 罪を 重ねてる/あまりに恋しすぎて〉という歌い出しも印象的です。この曲では、どうしても自分の価値観を相手に押しつけてしまう苦しみが歌われていますね。

中島:「ヘムロック」はどちらかというと、童話の世界と現実の世界を結びつけて妄想を膨らませながら、言葉遊びみたいな感覚で書いたんですよ。いきなり現実的なことが入ってきたら聴いてる人がビクッとするかなと思って、〈価値観〉みたいな言葉を使ったのかな。自分の経験をそのまま書くこともあるんですけど、妄想やイメージを膨らませて書く方が多いと思います。

ーー「innocent」(2020年)の〈君を 見つけてしまった あの時から〉はどうですか?

中島:「innocent」は、ドラマ(Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』)の劇中歌だったんですけど、若い頃に書いた曲という設定だったので、10代の恋愛を思い起こしながら書いたんですよ。でも私は学生時代の思い出が全然ないから(笑)、こんな風なのかなという妄想で書いた部分もあって難しかったですね。脚本のような感覚で、キャラクターを頭のなかで動かしながら書きました。

ーー「Shadows of you」(2005年)には〈叶わないならば せめて眠らせて〉、「ピアス」(2013年)には〈ごめん、ひとりぼっちにして/あなたを置いて逃げた〉という歌詞がありますが、必ずしも恋愛の幸せではない側面にもフォーカスを当てた歌詞が多いのはどうしてでしょう?

中島:なぜかはわからないですけど、そっちに向いちゃうんですよ。切なさ、悲しさを美しいと感じてしまうというか、ハッピーなラブソングもたまに書いているはずなんだけど、埋もれちゃってるのかな(笑)。ただ、ハッピーな曲を書こうとするときは、恋愛ソングよりも、「みんなで楽しい時間を過ごしたい」というテイストが多い気がしていて、その方が自分の性格にも合っているんだと思います。ラブソングは、どちらかというと気持ちを抉るようなものが多いですね。ライブでも、切ない曲や抉られるような曲を歌うと、お客さんも「来た!」という雰囲気になるので。

ーーそういう曲を歌っている方が、ご自分でもしっくり来るんですか。

中島:そうですね。余力を残さない感じが好きです(笑)。そういう曲って歌うとすごくパワーを使うんですよ。特に『Premium Live Tour』(メッセージ性の強い曲を中心としたアコースティックスタイルのライブ)は体力も気力もほぼなくなって、終わった後は立ち上がれないこともあるので、回復するのも時間がかかるんですけど。

ーーどうやって回復させるんですか?

中島:まず、歌っているときの感情をリセットするしかなくて。メディテーション(瞑想)したり、他のことに集中して一旦忘れるようにしていますね。

ーーそこまで体力を削ってもライブを続けるというのは、歌手としてそういう役割を引き受けているからなんでしょうか。

中島:そう思いますし、もちろん好きでやってますからね。大変ですけど、私にとっても(『Premium Live』は)必要なんです。それが自分のコアになっているし、なくなってしまうと、私が存在している意味がわからなくなりそうなので。

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