中島美嘉、秋元康との再タッグで開いた新たなラブソングの扉 「STARS」「WILL」などデビュー期の歩みとともに考察
2001年11月7日『STARS』でのデビューから20周年を迎え、2021年10月27日に新作『SYMPHONIA / 知りたいこと、知りたくないこと』をリリースした中島美嘉。本作は、スマートフォン向けアプリゲーム『takt op. 運命は真紅き旋律の街を』主題歌、MAPPA×MADHOUSE制作TVアニメ『takt op.Destiny』(テレビ東京系)のエンディングテーマである「SYMPHONIA」と、秋元康が企画・原作・脚本を手掛けたドラマ『漂着者』(テレビ朝日系)挿入歌「知りたいこと、知りたくないこと」のダブルA面シングルとなっている。このコラムでは「知りたくないこと、知りたくないこと」で約20年ぶりのタッグを組んだ中島美嘉と秋元康のヒストリーをまず紐解きたい。
前述の1stシングル表題曲「STARS」は、中島がヒロイン役で女優デビューを果たしたドラマ『傷だらけのラブソング』(フジテレビ系)の主題歌だった。彼女が演じる島崎未来は「AMAZING GRACE」(のちに2ndシングル『CRESCENT MOON』と1stアルバム『TRUE』に収録。2005年発売のベストアルバムでは綾戸智絵プロデュースで再録音)を序盤に道端でアカペラ歌唱しており、その歌声を通り過がりの高橋克典演じる元売れっ子音楽プロデューサーに見初められ、それから様々な逆境に翻弄されながらも“人は変われるんだ”と信じて歌手デビューの夢へと邁進していく。そして、最終回のシナリオ同様、現実世界でも彼女は新人アーティストとしてデビューする(中島美嘉として実際に取材を受けているシーンなどもドラマに盛り込まれていた)。今でこそ仮想世界と現実世界をクロスオーバーさせるプロジェクトは少なくないが、20年前の音楽シーンにおいてこの中島のデビュースタイルは実に画期的であった。
そんなドラマの世界から飛び出してきた大型新人のデビュー曲「STARS」の作詞を手掛けたのが、他の誰でもない秋元だった。〈やっぱりあの星は/見つからなかったと/夜空に背を向けた/願いに疲れた自分がいたよ〉から始まり、〈新たな未来/つないだ奇跡の中で/光と闇に抱かれて/心の空に/心の空に/確かな夢を見つける〉で締め括られるその歌詞は、デビュー当時の何をするにしても不安だった彼女にとってはもちろん、激動の20年を歩んできた音楽人生にも幾度となく光を照らしたはず。また、中島の名バラード群の始まりの1曲でもあり、今日まで「CRESCENT MOON」「WILL」「見えない星」「ORION」「流れ星」など幾多の星にまつわる楽曲をリリースしてきた歴史を振り返っても、秋元が作詞した「STARS」の影響は計り知れないものがある。
また、2002年リリースの「STARS」に続く大ヒット曲「WILL」も秋元が作詞を手掛けたシングルナンバーである(作曲:川口大輔、編曲:冨田恵一も「STARS」同様の布陣)。伊藤英明、坂口憲二、オダギリジョー、小雪、田畑智子、小西真奈美、長谷川京子など錚々たるキャスト陣と、BUMP OF CHICKEN「天体観測」から着想を得たことでも当時話題となったドラマ『天体観測』(フジテレビ系)。本作はその主題歌だったのだが、挿入歌もすべてBUMP OF CHICKENの楽曲が彩るドラマの中でありながら、当時まだ10代にして切実に〈あれから 僕はいくつの/夢を見て来たのだろう〉〈あれから 僕はいくつの/自由を生きてきただろう〉と訴えかけてくる歌声は聴く者の心に突き刺さった。同年の大晦日に中島は、この楽曲で『第53回NHK紅白歌合戦』へ初出演することになり、名実ともにトップアーティストへと駆け上がってみせた。