flumpool 山村隆太×緑黄色社会 長屋晴子が語り合う、ボーカリストとしての姿勢 バンドだからこそ経験できた変化とは?

flumpool 山村×緑黄色社会 長屋 対談

 flumpoolがコンセプトアルバム『A Spring Breath』をリリースした。昨年12月に開催されたビルボードライブ東京でのアコースティックライブの流れを汲む本作は、「花になれ」「君に届け」などのリアレンジや、表題曲「A Spring Breath」をはじめとする新曲で構成。タイトル通り、春の息吹を感じさせるような爽やかで奥深い作品に仕上がっている。

 今回、リアルサウンドでは、flumpoolとライブやラジオでの共演歴を持つ緑黄色社会の長屋晴子と、山村隆太による対談を行った。バンドのボーカリストとして意識していること、メンバーとの関係性、さらには今年リリースされた互いのアルバムに対する印象などについて、じっくりと語り合ってもらった。(森朋之)

flumpool「証(A Spring Breath ver.)」『ROOF PLAN 〜Acoustic in Billboard Live〜』 2021.12.31 Billboard Live

バンドメンバーと築いてきた支え合う関係性

ーーflumpool、緑黄色社会の交流が始まったきっかけから教えてもらえますか?

山村隆太(以下、山村):2020年の夏に、自分たちとFM802がホストになって行ったイベント『FM802 Live pool ON LINE!!』ですね。こちらからお声がけして、FM802の番組にも出てもらったんです。とにかくバンドに勢いがあったし、長屋さんが放つエネルギーもすごいなと思っていて。イベントに参加してもらって、刺激を受けたいという気持ちもありましたね。

長屋晴子(以下、長屋):呼んでいただいてすごく嬉しかったです。ありがとうございました。

山村:こちらこそ。お会いする前は“凛としていて芯が強い”という印象だったんですけど、イベントのときにライブを観させてもらって、儚さや可愛らしさも伝わってきて。メンバーの皆さんの関係性も含めて、深い魅力があるバンドなんだなって感じたし、そこにファンの人たちも引き込まれているんだろうなと。

ーーなるほど。長屋さんがflumpoolを知ったのはいつ頃ですか?

山村隆太

長屋:中学生のときにau「LISMO」のCMで「花になれ」を聴いたのが最初です。「めっちゃいい!」と思って、ケータイにダウンロードしました。当時、ちょうどバンドに興味を持ち始めた頃だったんですよね。音楽を好きになったきっかけは大塚愛さんで、「歌手っていいな」と思っていたんですけど、だんだんバンドの存在が気になってきて。「花になれ」はバンドサウンドだし、歌声も素晴らしくて、どストライクでした。

山村:うれしい(笑)。その頃から楽器もやっていたんですか?

長屋:まだやってないです。でも、絶対にバンドを組もうと思っていて。中学生のときは吹奏楽部だったんですが、高校ではバンドをやると決めていました。

山村:シンガーソングライターとして一人でやるというより、仲間と一緒に作り上げたかったとか?

長屋:はい。一人でやる勇気がなかったんですよ。もともと誰かの意見を聞いてから決めるタイプだったので。

山村:そうなんだ。一人でしっかり決められるタイプかと思ってた。

長屋:いえいえ、一人で舵を取るなんて無理です(笑)。アレンジにしてもフレーズにしても、メンバーと一緒にやるほうが楽しそうだなと思っていました。

山村:「一人で音楽をやって評価されるより、仲間と一緒に評価されたほうがもっと楽しい」みたいな感じだったのかな。僕もそうなんですよ。flumpoolのメンバーのうち2人(阪井一生、尼川元気)は幼馴染なんですけど、小学校の発表会や修学旅行とかで漫才を披露するような仲間だったんです。

長屋:漫才ですか?!

山村:大阪なんで(笑)。普段は引っ込み思案でシャイなんだけど、何かあると目立ちたがるっていう。それで音楽をやろうと思ったときも、「一緒にやろうぜ」と誘ったんですよね。仲間と一緒だったら失敗しても楽しいし、恥をかいても「一人じゃないしな」って思えるかなと。もちろんバンドで演奏する音楽も好きだったし。

長屋:私もバンドの音圧や、いろんな音が絡み合っている感じが好きでしたね。だからバンドをやりたくなって、「バンドのボーカリストといえばギターだな!」と思ってギターを始めたんですよ。今思うと、選択肢はそれだけじゃないよなってわかるんですけど(笑)。

山村:音源もそうだけど、ライブでの見栄えもバンドの良さだよね。バンドのメンバー同士の関係性や雰囲気って、サポートミュージシャンとは全然違うから。もちろん、どっちがいいっていう話ではないんだけど。

長屋:そうですよね。バンドって、ボーカルだけに視線が集まらないのもいいなと思っていて。

長屋晴子

山村:でも、「自分だけを見て!」とか思ったりしない? 俺、最前列のお客さんが他のメンバーを見てると嫉妬しちゃうんだよね(笑)。

長屋:私、できれば目立ちたくないんですよ。めちゃくちゃ緊張してるし、むしろ「こっちを見ないで」って思っちゃいます。

山村:本当に緊張してる? そう言ってるだけじゃなくて?

長屋:緊張してます(笑)。それが嫌すぎて、よく楽屋で「帰りたい」と言ってるんですよ。

山村:意外だね。それは何が理由なの? あんなに歌が上手いのに。

長屋:ライブだといろいろなことが気になって、“楽しい”だけにならないんですよ。「次のMCでこれを話さなきゃ」とか「お客さん、飽きていないかな」とか「次の曲、歌詞が飛んだらどうしよう」とか。

山村:真面目さゆえだし、責任を背負っているんだろうね。俺はそこまでできた人間ではないので(笑)、「ちょっとくらい失敗してもいい」と思っているし、あまり思い詰めないかも。長屋さんが緊張してるとき、他のメンバーはどうしてるの?

長屋:以前は「大丈夫?」と心配してくれたんですけど、最近は慣れてきて「じゃあもう帰る?」って言われます(笑)。

山村:それを言うメンバーは?

長屋:ベースの(穴見)真吾かな。彼は私と違って、まったく緊張しないんですよ。MCは緊張するみたいだけど、演奏してると平気らしくて。

山村:ちょっと飄々としている感じだよね。それもバンドの良さだと思う。それぞれにキャラクターがあって、お互いに支え合っていて。

長屋:そうですね。メンバーとの関係性はすごく大事だなと感じます。

山村:flumpoolの場合は“そのまま”なんですよ。ステージに行く直前も私語が止まらない。

長屋:(笑)。緊張した空気になったりしないんですか?

山村:ツアーの初日とかはフレーズを確認したり、多少はピリッとするけどね。でも、普段の楽屋は中学校の休み時間みたいです。

長屋:その雰囲気、ライブにも出ていますよね。皆さんリラックスしているし、それが心地いいので。4人のバランスがいいんだろうなって思います。

山村:そのことで助けられている部分もあるんだよね。俺は「ボーカリストとして、締めるところはしっかり締めないと」と思っているんだけど、一生はウケを狙っているところもあって。段取りを壊すというか、一生が喋りすぎて、「この後に真面目な曲やるのに、この空気どうすんねん」って思うこともあるけど、それによって力が抜けたりもするから。

長屋:私もメンバーにめっちゃ助けられています。ボーカリストは基本、前を向いて歌うじゃないですか。だから間奏のときに横を見て、メンバーが笑っていると「よかった!」って思うんですよ。

山村:わかる。それだけで緊張が解けるよね。最近はステージに映ったメンバーの影を見るだけで安心するから。

長屋:それ、やってみます(笑)。特に今は(コロナ禍の歓声禁止で)お客さんの反応がわかりづらいから、MCで戸惑ったり空回りすることもあって……。

山村:コロナ禍のライブ、そういうところが難しいよね。

長屋:だからこそメンバーの支えが大事なんですよね。

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