THE BACK HORN 山田将司、住野よるとの刺激的なコラボレーションを語る 「生きていると“線を越える”ことが必要になる」

THE BACK HORN 山田将司、住野よるとの刺激的なコラボレーションを語る 「生きていると“線を越える”ことが必要になる」

 小説家・住野よるとのコラボレーションから生まれたTHE BACK HORNの新作デジタルEP『この気持ちもいつか忘れる』がリリースされた。

 大ベストセラー小説『君の膵臓をたべたい』で知られる住野よるは、学生時代からTHE BACK HORNの大ファン。“一緒に作品を作りたい”という純粋な思いから発したこのプロジェクトは、住野が手がける小説、THE BACK HORNが制作する楽曲をやり取りしながら進行したという。制作のプロセスを共有し、お互いに影響を与え合いながら生み出された最初の作品が、9月に発売された『この気持ちもいつか忘れる CD 付・先行限定版』。そして10月19日に本文のみの書籍と、THE BACK HORNの配信EP『この気持ちもいつか忘れる』がリリースされたというわけだ。

 小説、音楽の境界を越えた、刺激的で奥深いクリエイティブが貫かれた本作について、THE BACK HORNの山田将司に語ってもらった。(森朋之)

住野よる×THE BACK HORN – 『この気持ちもいつか忘れる』(OFFICIAL TEASER Part.2)

「主人公の雰囲気や考えていることが、自分の若い頃と重なる」

ーー新作デジタルEP『この気持ちもいつか忘れる』がリリースされました。小説家の住野よるさんとのコラボレーションによって生まれた作品ですが、制作はどんなふうに進められたんですか?

山田将司(以下、山田):住野さんから「小説と音楽の境界線を越えた作品を作りたい」という話をいただいたのが最初のきっかけですね。まず、住野さんが小説のあらすじを書いてくれて、それを読んで「ハナレバナレ」という楽曲を作って。

ーー小説のテーマ曲のような楽曲ですよね。

山田:そうですね。「ハナレバナレ」は物語の渦中にいる感じと、全体を俯瞰で見ている目線もあって。この曲を聴いた上で住野さんが小説を書き進めて、それをもとに他の曲を作っていったんですけど、そういうやり方は初めてで、自分たちにとってもすごく刺激的でしたね。

ーー小説『この気持ちもいつか忘れる』の主人公は、高校生のカヤ。退屈を感じ、周囲の人間を見下しつつ、自分のつまらなさも自覚していた彼が、爪と目だけしか見えない謎の少女と出会う……というあらすじです。このストーリーに対しては、どんな印象を持っていますか?

山田:これは個人的な感想なんですけど、主人公のカヤの雰囲気や考えていることが、自分の若い頃と重なるところがあって。すべてがくだらなく感じて、斜めから人のことを見て、いろんなことが信じられないっていう。いま振り返ってみると、何も知らなかっただけなんですけどね。全部を知った気になって、それが虚無感につながって。この小説の主人公にも似たようなところがあるし、感情移入しやすかったですね。

ーーEP『この気持ちもいつか忘れる』の2曲目に収録されている「突風」(作詞:松田晋二、作曲:菅波栄純・岡峰光舟)には、カヤの心情がダイレクトに表れていると思いました。特に〈どうやらこの人生は突風が過ぎ去れば/全ては死ぬまでの余剰〉というフレーズは象徴的だなと。

山田:“突風”は小説のなかでもキーワードになっていて、大事な言葉なんですよね。突風が突き抜けるような疾走感のある曲になっていて、その雰囲気を歌詞に落とし込んだマツ(松田)のセンスがすごくいいなと思いました。〈どうやらこの人生は〜〉に関して言えば、小説のなかにも同じようなフレーズが出てくるんですけど、それも自分が若いときに感じていたことと重なるんですよね。“どうせ死ぬんだから”という極端な答えを見つけてしまって、すべてがくだらなく感じてしまって。

ーーなるほど。エッジの効いたサウンドも、楽曲の世界観、カヤの心情とリンクしていて。

山田:グランジ的な曲調ですよね。こういう雰囲気の曲はときどき出てくるんですけど、自分たちのなかできちんと落としどころを見つけないと、「前にもやったよね」ということになって、採用しないことも多いんですよ。「突風」の原曲も実はだいぶ前からあったんですけど、作曲した栄純と光舟が保留していて。マツが「あの曲の疾走感と『突風』というイメージはつながるんじないか?」と言って合体させたことで、曲として成立したんですよね。EPのバランスとしても、こういう激しい曲があったほうがいいと思いました。

「プロデューサーとの化学変化を楽しめるようになってきた」

ーー3曲目の「君を隠してあげよう」(作詞・作曲:菅波栄純)では、〈君が生きる意味をくれたんだ〉という歌詞が印象的でした。

山田:「ハナレバナレ」の次にできたのがこの曲なんです。栄純は「小説のスピンオフみたいな感じで作った」と言っていて。THE BACK HORNの「キズナソング」(2005年)という曲があるんですけど、それに匹敵するような曲を目指したみたいですけど、すごくいい曲になったと思いますね。〈君を隠してあげたい/この残酷な現実から〉という歌詞がすごく優しいなと思ったし、それに合うようなコード進行、メロディになっていて。その上で、やるせなさみたいな雰囲気も歌で表現したかったんですよね。

ーー森俊之さん(Mr.Children、小沢健二、いきものがかりなどの編曲・ライブに関わるキーボーディスト、プロデューサー)のストリングスのアレンジも、楽曲の優しさを増幅させていて。

山田:素晴しかったですね。森さんとは2009年に「この手広げて」(山田が主演を務めたドラマ『東京タクシー』主題歌)のプロデュースをしてもらって。THE BACK HORNの楽曲に関わってもらったのは初めてだったんですけど、スタッフからの推薦もあって、俺も「この曲には絶対合うだろうな」と思っていました。2番のBメロのストリングスアレンジなんて、本当に絶妙ですね。

ーーTHE BACK HORNは、外部のアレンジャーとの作業も意外と多いですよね。宇多田ヒカルさんとの共同プロデュースによる「あなたが待ってる」(2017年)もそうだし。

山田:特にこの10年くらいは、プロデューサーと一緒にやることが増えてる気がしますね。良くも悪くもバンドとして確立されてきて、“らしさ”みたいなものができ上がって。外のプロデューサーが入ってくれることで、「どんなスパイスが混ざるんだろう?」「どう調理してくれるんだろう?」という期待感もあって。そういう化学変化を楽しめるようになってきたんでしょうね。

ーーそういう姿勢は、4曲目の「輪郭 〜interlude〜」(作詞:松田晋二、作曲:山田将司、編曲:菅波栄純)にも表れていると思います。この曲のボーカルは、世武裕子さん。

山田:小説のなかに少女が歌う場面があるんですけど、住野さんと話しているときに「世武さんの声がイメージに近い」という話が出てきて。オファーしたら、快く引き受けていただきました。最初は「どうしてピアノじゃなくて歌なんですか?」って言ってましたけど(笑)。

ーー劇伴作家、作曲家のイメージが強いですからね、世武さんは。

山田:そうなんですよね。改めてシンガーソングライターとしての世武さんの音楽を聴かせてもらって、本当にすごいなと思って。この曲のボーカルの表現力も素晴らしかったし、鳥肌が立ちました。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる