MISIAとAIの歌にある強大な説得力 多くの人の心を鷲掴みにする名演を残した2組

 大晦日の風物詩『NHK紅白歌合戦』。2021年も例に漏れず、日本を代表するアーティストたちのステージが続々と披露されたが、中でも筆者の心を鷲掴みにしたのはMISIAとAI、二人の女性が見せた熱唱だった。番組のトリとして満を持して登場し、「明日へ」「Higher Love」の二曲を圧巻のスケールでパフォームしたMISIA。そして最新曲のバラード「アルデバラン」をエモーショナルな節回しで届けてくれたAI。実力派シンガーの座を確立して久しい両者をことさらに賞賛するのは少々野暮かもしれないが、20年以上にわたるキャリアに裏打ちされた清々しい名演だったと思うし、あらためて彼女たちの歌には強大な説得力が備わっているのだと自ずから実感させられることになった。

 5オクターブの歌姫とも称されるMISIAはその名の通り広い音域が持ち味で、普通の人が困難とする高音のロングトーンをも軽やかに歌いこなす神々しさに、筆者はこれまで幾度となく胸を打たれてきた。が、思うに彼女の真髄は高音以外の表現にある。とりわけ中低音における抑揚豊かな発声は、楽曲のストーリーテラーとして情景を上品に立ち上らせ、聴き手の感覚をたちまちセンシティブなモードへ変えるだけの凄みを感じさせる。

 この“パワフルなボーカルを主体にしながらも様々な技巧でフレキシブルに見せ場を作れる”という特性はAIにも同様に当てはめられるだろう。野太いハスキーボイスだけでも申し分ない存在感があるところを、AIはさらに自身から湧き出る喜怒哀楽をダイレクトなまでにメロディへ乗せ、それぞれのドラマを硬軟自在に描き出していく。MISIA「Everything」やAI「Story」が時代を超えて支持され続けているのは、楽曲の魅力もさることながら、聴き手が安心して作品に没入できる環境を彼女たちが本能さながらの衒いのないセンスで提供しているからに他ならない。

MISIA – Everything
AI – Story

 もっとも、MISIAとAIが有する”歌の力”は、世間的な認知が強いバラード以外の楽曲にも親しんでこそ、よりダイナミックに体感できるはずだ。ともにゴスペルを通じて歌の楽しさに開眼したという共通点があるだけに、特にR&Bやソウルミュージックを基調とした作品においては、今に続く絶唱の源泉をしかと確かめられるかと思う。

 後発デビューの宇多田ヒカルらとかつて和製R&Bブームの礎を築いたMISIAは、記念すべき初作「つつみ込むように…」や「BELIEVE」といった甘美なミディアムを得意とし、最近ではボーカルの円熟味の増加やソウルジャズへの接近によって、いっそうの繊細さと艶っぽさを体得した印象。対照的にアップリフティングなテイストも颯爽と乗りこなし、ハウスミュージックをベースにした「INTO THE LIGHT」や「CATCH THE RAINBOW」、近年でも地元・博多弁をモチーフにした「好いとっと」などを通じて、バラードを歌う姿とはまるで異なるチャーミング&アグレッシブな表情をコンスタントにアピールしている。

「つつみ込むように…」
「BELIEVE」
「INTO THE LIGHT」や「CATCH THE RAINBOW」
「CATCH THE RAINBOW」
「好いとっと」

 クラブシーンから登場した出自を持つAIもやはり、2000年のデビュー当時からブラックミュージック路線と向き合う意識が極めて高く、さらに言えば今なおそのスタイルを練磨し続けていることが彼女のアイデンティティを強化してさえいる。とりわけ活動初期から中期にかけてリリースされた「E.O.」「I Wanna Know」などのヒップホップ精神あふれるナンバーの数々は、問題提起を恐れずマイクを握る現在のAIとも共鳴する骨太な作品ばかりなので、今からでもぜひ押さえておきたい。

AI – E.O.
AI – I Wanna Know



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