Little Black Dress、シティポップへの深いリスペクト 鈴木明男も登場したブルーノート東京公演
時代を超えたシティポップの共演
「シティポップには欠かせないパートがあります。それはサックスです。レジェンド・シティポップ・サックスプレイヤー」。そう紹介して迎え入れたのは、サックスプレイヤーの鈴木明男。70~80年代の数多くのシティポップのレコーディングに参加して来たほか、MISIAなどのライブサポートでも活躍するシティポップの生き字引だ。そんなレジェンドを迎えて披露したのは、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」。近年のシティポップ再評価の起爆剤となった同曲。鈴木のサックスが加わった実にレアな演奏に、観客は目を輝かせて歓喜した。続いて、印象的なギターカッティングが鳴り響き、山下達郎の「SPARKLE」へとなだれ込む。当時同曲でドラムを叩いていた青山純の息子である青山英樹が、この日ドラマーとして参加していたことも、このライブをより趣深いものにしてくれた。ラテンっぽいリズムで会場を熱くした「midnight cruisin'」、リズムに身を委ねるように歌った「真夜中のドア~stay with me」。粋な選曲、曲順、メンバー。Little Black Dressのシティポップへの深いリスペクトが、隅々まで感じられた。
「(原曲が発売された時は)まだ生まれてなかったでしょ?」と問いかける鈴木に、「まだ(私が)生まれていない時代の曲をやるという趣旨で(笑)」と笑いを誘ったLittle Black Dress。次に演奏したのは、鈴木がオリジナルのレコーディングに参加し、原曲でもサックスがキーポイントになっていた杏里の「悲しみがとまらない」。どこか可愛らしく、しかしサビではパンチを聴かせたLittle Black Dressの歌と、まるで掛け合いをするように奏でられたサックス。シティポップを愛する気持ちが、世代を超えて共鳴した瞬間だ。そして、1986オメガトライブ「君は1000%」、アン・ルイス「恋のブギ・ウギ・トレイン」。Little Black Dressの表現力豊かな歌声はもちろんだが、演奏陣の演奏も熱く聴き応えがあった。前述の青山のドラム、そこに休日課長のベース、Ichika Nitoのギター、Devin Kinoshitaのキーボード、さらにえつこのコーラスが、次々と重なっていくようなジャムセッション的展開も聴かせたほか、ジャズ/フュージョンのエッセンスも感じさせるなど、極上の演奏でも観客を魅了した。
「シティポップには定義がない。どれがシティポップでどれがニューミュージックか、私には分からないけど。言えるのは、どれもいい曲だということ。世代を超えて心に響くのが、シティポップなんじゃないかと。では最後に、令和のシティポップをお届けします」
アンコールで披露されたのは、Little Black Dressのメジャーデビュー曲「夏だらけのグライダー」と、最新シングル表題曲「雨と恋心」。歌謡曲を感じさせる憂いのある歌声とグルーヴ感あふれる演奏に、体を揺らしながら聴き入り、印象的に耳に残るキャッチーなメロディを心で口ずさんだ観客。気づけば会場には、自然と手拍子が沸き起こっていた。そんな観客の想いを受け止めるように、胸に手を当てて歌ったLittle Black Dress。時代を超えたシティポップの共演が、世代を超えて観客の胸を焦がした夜になった。