0.1gの誤算 緑川裕宇に聞く、TwitterやTikTokで“バズる動画”のコツ V系シーンに見えた希望も
0.1gの誤算・緑川裕宇がSNSにアップする“ヘドバン動画”や“ライブあるある動画”が好調だ。TwitterとTikTokを巧みに使い分け、バンド活動と並行して動画を更新し続ける緑川に、動画掲載を始めた経緯、アイデアをどのように思いついているか、さらに本当は教えたくないというバズるコツを聞いた。昨年5月のインタビューでは「いよいよV系シーンが滅びる可能性があるんじゃないか」と発言していた緑川の心境の変化も明らかになった。(編集部)
心がけているのは、ホールライブにしか行ったことがない人もわかるような動画
――まず、緑川さんが動画をSNSに上げるようになった経緯を教えてください。
緑川裕宇:0.1gの誤算をもっと色々な人に知ってもらいたかったからですね。ファン以外の人も見てくれる動画や共感してくれる動画を発信しようと思って、最初はTwitterに上げていました。
――現在はTikTokにも約90本(取材時点)もの動画が上がっていますね。TikTokを始めたのは何がきっかけだったのでしょうか?
緑川裕宇:Twitterに動画を上げ始めて半年後くらいに、マネージャーから「裕宇さんの動画はTikTokの方が向いてるよ」と言われたのがきっかけです。最初は半信半疑だったんですが、「本命から取ったステージドリンクの使い道」っていう動画をTikTokに投稿してみたら、いきなり100万再生いったんです。そこからTikTokに力を入れるようになりました。
――TwitterとTikTokで動画の反響は変わりましたか?
緑川裕宇:大体同じ動画を上げていますが、TwitterではバズったのにTikTokではバズらなかったり、その逆もあります。だからこれはTikTokでしかウケないなと思ったのはTikTokにしか上げないです。TikTokを見ている人は、俺が0.1gの誤算のメンバーだって知らないことの方が多いので、誰がやっていても面白い動画がバズるんですよ。あとは、普通の人が知らない情報が載っている動画。たとえば「ステージドリンクの使い道」って言われても、普通の人は絶対わからないじゃないですか。だから最初に上げた動画もいきなりバズったんだと思うんですよね。
@0153_you
コメントの内容もTwitterとTikTokで全然違います。Twitterは主にファンの子が見てくれているので、あまり悪目立ちしないように気を使ってくれている感じがありますね。でもTikTokは全然知らない人も見てるので、コメント欄で論争が起きることもあって、その結果、コメントが1000件以上になることもあったりして。同じSNSでも全然違って面白いです。
――ヴィジュアル系シーンの中では、TikTokを使っている方は現状少ないですよね。
緑川裕宇:世界観をつくっているバンドであればあるほど、TikTokって始めづらいみたいですね。対バンのときに他のバンドの方から動画すごいねって言われることもあるんですけど、「自分もTikTokやってみたいけど、ファンが嫌がりそうでできない」っていう人が多いです。やっぱりTikTokをやっているとチャラい、若者ぶってるみたいな偏見があるみたいですね。俺たちのファンにも「TikTokは好きじゃないから見ない」っていう子もいますよ。
――「バンドマンやバンギャのあるある」、「撮影会でのポーズ●選」など、色々な動画がアップされていますが、どうやってアイデアを出しているのでしょうか。
緑川裕宇:自分が“ギャ男”だったときに見たことや初めてライブに行って感じたことを思い出したり、今のバンド活動でライブやイベントをやっているときに思いついたりですね。
動画をバズらせるためには、いくつかコツがあるんです。たとえば“あるある動画”でも、ライブハウスでの出来事じゃなくて、ホールクラスのライブでの出来事を動画にするとバズるんですよ。ライブハウスの常識とホールの常識って全然違うし、ライブハウスでのあるあるを出しても、そもそも来る人数が少ないから共感数が少ないんです。でも日本武道館や東京ドームには、数万人が来ているじゃないですか。だから、なるべくホールライブにしか行ったことがない人もわかるような動画を作るように心がけています。あと、ライブハウスのディープなあるあるって、地方の人にはわからないことが多いんですよね。たとえば最前争いを動画にしたとして、東京、大阪、名古屋あたりに住んでいてライブに通いまくっている人にはわかると思いますが、地方で中々ライブに行けない人にはわからないことが多い。だから、そういう人にもわかるような動画を作ろうと思っています。
――バンド活動と並行しながら、そこまで考えて動画を上げるのはかなり大変そうですね。
緑川裕宇:動画のネタを考えて、編集して、ライブをやって、曲を作って……という感じなので、まぁ大変ですね。俺は全部スマホの無料アプリで作っていて、字幕も入れてるので喋りが多い動画だと編集に3時間くらいかかります。でもライブ会場でのお客さんのヘドバンを映した動画とかは、編集も15分くらいで楽だし、バズるし、正直おいしいんですよね(笑)。
――緑川さんのTikTokに載っているヘドバンの動画は、全て再生回数が100万回を超えていますね。
緑川裕宇:一般の人ってヘドバンに遭遇する場面がないから、動画で見ると衝撃的なんでしょうね。しかも暴れてるのが女の子だし。やっぱりヴィジュアル系の世界って、普通とは何か違うからTikTokでもウケるんだと思います。
あとライブ動画を上げるのにも、実はコツがあります。本当はあんまり知られたくないんですけど(笑)、一番重要なのは、第三者が投稿したように見せることなんですよ。普通なら、「僕がやってるバンドのライブです! 見てください!」みたいなノリで上げると思うんですが、それだと宣伝に見えちゃうんですよね。そうじゃなくて、「何このライブ……怖い……」みたいに、むしろちょっと貶した感じで上げるのがコツです。これは、4年前くらいに初めて0.1gの誤算のライブ動画がTwitterでバズったときに気づいたことです。俺たちが外でライブをやっているのをたまたま見た一般の人が上げたんですけど、「ヴィジュアル系怖かった……」って感じで呟いたら、一気にバズって10万リツイートまでいったんです。それを参考にして載せたら同じようにバズったので、ライブ動画は「見てください!」って感じで載せちゃだめなんだって気づきました。
――実際にバズったときはどんな気持ちですか?
緑川裕宇:当日はめっちゃ嬉しくて、家ではしゃいでます。「今日は美味しいもの食べて、スーパー銭湯行って、マッサージしてもらっちゃおうかな~」って。でも翌日になると、次の動画はコケるんじゃないかっていうプレッシャーで怖くなって……だから今すごいメンヘラみたいになってます(笑)。たまにファンの子にも心配されるんですよ。「裕宇さん、バズに憑りつかれてない?」って。でも今はやっぱりライブが少ないので、SNSを駆使しないと忘れられちゃうと思うんですよ。コロナ禍になって、戦場がライブハウスのステージからインターネット上に変わった気がしています。だから、今はどうやってネット上で目立てるかをすごく考えてますね。